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『ブラインドスポッティング』 プレミア試写会レポート— 窪塚洋介が語る“コミュニケーション”と“アイデンティティとの向き合い方”
- 2019年08月14日更新
昨年のサンダンス映画祭のオープニングを飾り、SXSW映画祭ほか世界の映画祭で絶賛された映画『ブラインドスポッティング』のトークショー付きプレミア試写会が2019年8月10日(土)に都内で行われ、俳優として国内外で活躍するほか、レゲエDJ“卍LINE”名義での音楽活動、モデル、映像監督、カメラマンなど多彩な才能を発揮する窪塚洋介がゲストとして登壇し、映画の魅力や自身の生き方を語った。
オバマ元大統領やギレルモ・デル・トロ監督も大絶賛!
映画『ブラインドスポッティング』とは?
元アメリカ合衆国大統領のバラク・
脚本・主演を務めるのは、トニー賞やグラミー賞の受賞歴もある俳優兼黒人ラッパーのダヴィード・ディグスと、スポークン・ワード・アーティスト、教育者、舞台脚本家として活躍するヒスパニック系白人のラファエル・カザル。劇中で無二の親友を演じる2人は実生活でも長年の友人だが、「BLINDSPOTTING=盲点」というタイトルには、われわれがが互いを見つめたときに、いかに全体像が見えずにさまざまなものを見落としているかという問いかけが込められている。
Photo by: Robby Baumgartner.
幸せになりたいと思う気持ちは、国や宗教が違っても同じはず
役者の演技やカメラワーク、脚本も、良い意味で荒削りなところがあって、不器用だからこそ伝わってくるというか。真っ直ぐな純粋さが胸を打ってくる。ピュアな作品に出会えて嬉しかったです。
— 本作に描かれるテーマに、“偏見”や“マイノリティ”があります。2001年にご出演された映画『GO』のテーマにも通じているのではないでしょうか。
『GO』に出演した当時は、在日韓国人ではない自分がその役を演じることにプレッシャーを感じました。役と同様の境遇の人に話を聞いたり、本を読んだりしたけど、一番必要だったのは、自分自身と向き合って「自分とはなんぞや?」と深く掘り下げることだったんです。そうすることで、胸を張って作品を世の中に送り出すことができました。
「ピンチはチャンス」じゃないけど、“マイノリティ”としての境遇を逆手にとって力やチャンスにすることができれば、世の中を恨まずに自分自身のまま生きていけるのかなと思います。
— 『GO』の当時と現在では世の中の状況も変わってきていて、今はSNSなどでいろいろな人の感情が可視化できるようになりました。今、窪塚さんが感じられている“差別”や“偏見”とはどういうものですか?
宇宙から見たら、僕ら地球人は無限に広がる宇宙の小さな惑星に乗ってる、同じ宇宙船「地球号」の乗組員みたいなもの。幸せになりたいと思う気持ちは、国や宗教が違っても同じはずだし、「皆、仲間じゃん!」と思う気持ちがどんどん強くなっています。皆もそう思ったらいいのになとは思います。
— 役者やミュージシャンなど多岐にわたる活動をされることで見えてきた自分の“盲点”はありましたか?
役者として自分自身を掘り下げる作業は大事でしたが、職業に関係なく、自分と向き合って、自分の人生に責任を持つ覚悟をしたときに、世の中の見え方が変わると思います。世の中に答えを求めても、それは“答えのようなもの”で、本当の答えは自分の中に見つけるしかないと思っています。
それを確かめる修行の場が世の中だと思っているし、どんなことにも“陰陽マーク(大極図)”のように、良い面も悪い面もある。さまざまな活動を通して、それを腹に落とす作業をしてきたのかな。人にいろいろなことを言われますが、自分で確信を持って、これは自分だということを固めて、広げているのがこの20年くらいですね。
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向かい合わなくていいことも多々あるから、「バーカウンターの法則」で意見を融合させる
— 役者やアーティストとして、どのようなジャッジで出演作を決めているんですか?
直感です。脚本を読んだときや、監督に会ったとき、ほかの出演者を聞いたときにワクワクするかどうか。このイベントもそう。夜中に1人で酒を飲みながら作品を観ていたら、どんどん物語に引き込まれて、最後はホロリと涙して。この映画を少しでも多くの方に観てもらえるための手伝いができたらいいなと思ってオファーを受けました。
— 劇中では親友や家族、職場の人間などさまざまな関係から生まれるコミュニケーションやディスコミュニケー ションが描かれています。窪塚さんはこれまでに、誰かの言葉で視野が広がったことや、誰かとの出会いをきっかけに、これまでにないコミュニケーションが生まれた経験などはありますか?
日々ありますよ。パっと思い出したのは、とある前の嫁からの言葉ですね。出会った当時は他人や世の中の批判をする気持ちが今以上に強かったし、口開くと誰かの文句ばかり言っていたんですが、ある日、「私は皆の良いところを、1つは言えるで!」と怒られて。自分の心は貧しかったのかもと、グサッと心に刺さりました。
人の悪いところを見るんじゃなくて、温かい目で良いところを見つけたら、悪いところが気にならなくなったりするじゃないですか。そういう風に人と接していけるようになったとは思います。
それと、前の嫁との9年間で学んだのは、向かい合わなくていいことは多々あるということ。自分で「バーカウンターの法則」と呼んでいるんですが、真正面に向き合いすぎるとぶつかるので、バーカウンターに横並びに座ってる感覚で人と接するようにしています。そうすると「そういう意見もあるよね。でも僕はこう思う」と、お互いの意見が融合しやすくなるんです。
— 窪塚さんの生き方に憧れている方も多いと思います。ご自分では、アイデンティティや自分らしさについて、どんな風に感じていますか?
うーん。よくわからないですけど(笑)、さっきも言ったように自分自身に正直であること。そのうえで、人や世の中のためになることを少しでも意識できて、自分も周りも良くなる仕事を見つけられればハッピーだと思います。
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この秋には出演映画の公開が、冬にはイギリスのBBCとNetflix が製作した出演ドラマの配信も待機しているそうで、 ボーダーレスな活躍ぶりから、ますます目が離せません!
▼『ブラインドスポッティング』作品・公開情報
(2018年/アメリカ/95分) 原題:BLINDSPOTTING
監督:カルロス・ロペス・エストラーダ
脚本:ダヴィード・ディグス、ラファエル・カザル
出演:ダヴィード・ディグス、ラファエル・カザル、ジャニナ・ガヴァンカー、ジャスミン・シーファス・ジョーンズ、ウトカルシュ・アンブドゥカル
配給:REGENTS
©2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED
>>予告編映像<<
【STORY】ある事件で逮捕され、保護観察期間中の黒人コリン(ダヴィード・ディグス)は、幼なじみで問題児の白人マイルズ(ラファエル・カザル)と引越し業者で働いている。ある日、帰宅中のコリンは黒人男性が白人警官に追われて、背後から撃たれるのを目撃。そのことをきっかけに、コリンとマイルズは互いのアイデンティティや、人種差別などの現実を目の当たりにする。コリンは保護観察の残り3日間をやり過ごせば自由の身として人生をやり直せすことができるのだが、マイルズの予期できぬ行動がそのチャンスを脅かす。 地元オークランドで一緒に育った親友の2人。しかし、互いの間にある見えない壁が、次第に正体を現していく……。
※2019年8月30日(金)より 新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国順次公開
取材・編集:min イベント撮影:鈴木友里
- 2019年08月14日更新
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