『アイドル・イズ・デッドーノンちゃんのプロパガンダ大戦争ー』加藤行宏監督 インタビュー

  • 2014年01月31日更新

音楽×映画のコラボレーション作品を集めた映画祭『MOOSIC LAB 2012』に出品され、同映画祭の観客賞ほか数々の賞を受賞した『アイドル・イズ・デッド』。その続編である、『アイドル・イズ・デッドーノンちゃんのプロパガンダ大戦争ー』では、生き残りをかけたアイドルたちの戦いやライブシーンがさらにパワーアップ! 主演女優・ノンちゃんの魅力とは? 迫力のライブシーンの撮影にはどれだけの時間がかかったのか? エンタテイメント満載のアイドル映画を撮りあげた加藤行宏監督にお話を伺ってきました。




「『ニューシネマ・ワークショップ』の同期と張り合っているうちに、当初の夢を忘れていました。」
―ミニシアで加藤監督の取材を行うのは初めてです。まず、映画を撮り始めたきっかけをお聞かせください。
加藤行宏監督(以下加藤):もともと、劇作家や演出家になりたくて、大学時代に演劇をやっていました。大学卒業後に仲間たちと劇団を組んで、舞台を上演して……というような流れを思い描いていたところ、同期の人が、僕のやりたいことをすべてやってしまったんです。自分も同じことをやりたいと言い出せずに、指をくわえて見ていました。大学卒業後、アルバイトをしていた時に、「ニューシネマ・ワークショップ」のチラシを偶然見ました。「今の時代、デジカメを使って10万円でショートムービーを撮って、映画祭で賞をとれば映画監督になれちゃうよ!」というような宣伝文句が書いてあって、「本当か!」と(笑)。演劇ができない期間に映画監督のスキルを学んでもいいのではないかと考えて、入学しました。「ニューシネマ・ワークショップ」では、同期だった脚本家の仁志原了さん(『麦子さんと』)や、今泉力哉監督(『こっぴどい猫』)と接していくうちに、ライバル心が芽生えていきましたね。彼らに負けじと映画監督を続けていたら、演劇への夢を忘れていました(笑)。


「本気で映画を志している人たちに鼻で笑われるようなジャンルを、あえて狙った」
―これまで、ブラックコメディや人間の醜い部分に焦点を当てるような作品が多かった加藤監督が、「アイドル」をテーマに選ばれたのは意外でした。
加藤:(1作目の『アイドル・イズ・デッド』を出品した)『MOOSIC LAB 2012』は、13人の監督が競うというコンペ形式の企画でしたので、他の監督を出し抜きたいと思っていました。アイドル映画は、商業主義的なイメージがあるので、みんな撮ろうとしません。本気で映画を志している人たちに鼻で笑われるようなジャンルを、あえてやることで、彼らを出し抜きたいという狙いがありました。アイドルをテーマに据えて、BiSさん主演で映画を撮ろうという話になり、結果的にうまくいきましたね。


「ふだん映画を観ない人も楽しめるように、サービス精神を意識して映画を作りました」
―『アイドル・イズ・デッド―ノンちゃんのプロパガンダ大戦争―』のプロットはどのように生まれたのでしょうか。
加藤:僕は、これまで、人の上に立って偉そうにしている人間のあげ足をとるような映画ばかり作っていました。『アイドル・イズ・デッド』の後、「またアイドル映画を撮ろう」とBiSサイドから言われた際に、僕がこれまで撮っていた映画とアイドル映画を組み合わせたものを作れないかと思ったんですね。安全神話が壊れて悪の象徴にまで一気に転げ落ちた原発と、人びとの偶像であるアイドル。その2つを組み合わせたお話を作れないかという考えが、プロットの発端でした。



―エンタテイメントの要素がふんだんに盛り込まれていて、アイドルに興味がない人でも楽しめる映画に仕上がっていると思います。
加藤: 日本映画を観ていて、テンポの遅さや、リアルに傾倒しすぎるゆえに映画として温度が低い部分が気になっていました。『アイドル・イズ・デッド』は、「こうすれば日本映画がもっと面白くなるんじゃないか」という、僕なりの解釈をぶつけた映画です。その解釈が正しいかどうかはわかりませんが、今の日本映画に必要だと思うエンタテイメントを盛り込みました。また、BiSファンの方たちのなかには、アイドルのライブには行くけれど、映画は全然観ないという方も多いです。年に映画を2~3回しか観ない方にも楽しんでいただきたいので、サービス精神を意識して映画を作りました。


「目が離せない子猫のような存在感が、ノンちゃんの魅力です」
―本作では、主演のヒラノノゾミさん(ノンちゃん)がとても印象的です。
加藤:ノンちゃんを主演にしたのは、僕の判断です。1作目の『アイドル・イズ・デッド』を観た方から、「ノンちゃんがいい」という声がたくさんありましたし、BiSを知らない人からも、「ノンちゃんかわいいね」と言われました。放っておいたら、どこかへ出かけていって、道路でひかれてしまうんじゃないか……というような危うさが、彼女の魅力ではないかと思います。映画で光る逸材だと思ったので、今回はノンちゃんを主演にしました。


「ライブシーンは、エキストラの皆さんのクオリティーが非常に高くて、撮影がとても楽でした」
―次第に熱気を増していくライブシーンが圧巻でした。撮影時のエピソードなどあればお聞かせください。
加藤:エキストラとして出演していただいたBiSファンの皆さんには、ライブシーンの撮影の前に、「BiSのメンバーがステージから降りてきて、ホールの中央辺りで『nerve』の続きを歌って、だんだん盛り上がって、最後は皆さんで踊り狂うようなイメージでお願いします」という指示を出しました。その後、リハーサルを行いましたが、1回目ですでに完成されていましたね。「BiSのライブの時にやっていることを、ちょっと形を変えてやればいいんでしょう」という風にうまく解釈して、演技してくれました。エキストラに指示を出していた助監督が、「仕事がない」とつぶやいていましたよ(笑) ファンの人も、BiSというグループの一部なんだな、と感じました。

―監督の今後の活動予定を教えてください。
加藤:今後は、日本映画で弱い印象があるSFのジャンルを盛り上げていけるような作品を作りたいですね。今は、その企画を書いています。

―楽しみにしています! ありがとうございました。



▼加藤行宏監督 プロフィール
ニューシネマ・ワークショップで映画制作を学ぶ。NCW制作部で作った長編『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』(2010)が、第4回田辺・弁慶映画祭で特別審査委員賞を受賞し、2011年に劇場公開。『MOOSIC LAB 2012』に出品された『アイドル・イズ・デッド』(2012)は、同映画祭の観客賞ほか数々の賞を受賞、BiSのメジャー第1弾アルバムにも特典として収録された。ほかの主な作品は、『痩せる薬』(2006)、『機械人間、11号』(2008)、『ラジオデイズ』(2013)など。

 

 

▼『アイドル・イズ・デッドーノンちゃんのプロパガンダ大戦争ー』
監督・脚本:加藤行宏
劇中歌・主題歌:BiS(avex trax)
出演:BiS(プー・ルイ、ヒラノノゾミ、テラシマユフ、ミチバヤシリオ)、三浦透子、柳英里紗、金子沙織、水澤紳吾、國武 綾、大島葉子、三輪ひとみ
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
コピーライト:© 2014『IID2』製作委員会
●『アイドル・イズ・デッドーノンちゃんのプロパガンダ大戦争ー』公式サイト
テアトル新宿最終日 2014年1月31日(金)のみ、テアトル新宿にて、コール&レスポンス上映(出演者登壇予定あり)
全国順次公開中

『アイドル・イズ・デッド(PART1)』キングレコードよりDVD/BD発売!

(文・編集:南天 撮影:hal)

  • 2014年01月31日更新
カテゴリ:インタビュー

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