菊池亜希子さんの手は、読書と相性ぴったり!―『森崎書店の日々』 初日舞台挨拶
- 2010年11月04日更新
古書の町・神田は神保町で撮影された、『森崎書店の日々』。ロケに使用された古書店のほど近くに建つ神保町シアターにて、2010年10月23日(土)、公開初日の舞台挨拶がおこなわれました。
上映の終了後、満員のお客さまの前に登場したのは、日向朝子監督、主人公・貴子を演じた菊池亜希子さん、貴子の叔父・サトルを演じた内藤剛志さんの3名。↑の写真、左から、日向監督、菊池さん、内藤さんです。
古本屋さんで借り暮らしをする貴子役に菊池さんをキャスティングした決め手のひとつが、「菊池さんの手」と、日向監督は語りました。いったい、どういう意味なのでしょう? この記事をお読みいただければ、監督のお言葉に、「なるほど~」とうなずけること、間違いなし。好奇心をそそられる舞台挨拶の模様を、ほぼノー・カットでお届けします!
《セレブの靴チェック!》 | |||
菊池さん | 菊池さん(横) | 内藤さん | 日向監督 |
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登壇者のみなさまのお話に耳を傾ける前に、当サイト恒例、《セレブの靴チェック!》。素敵な足元ばかりですので、ぜひ、画像をクリックして、お楽しみくださいね。
菊池さんのシューズは、ちょっとサボにも似た個性的なデザイン。菊池さんのようなお洒落上級者でなければ、コーディネイトが難しそうです。キュートなスタッズ使いがよく見える横からのショットも、どうぞ、じっくりご覧ください。
― 公開初日を迎えた、今の気持ちは?
「神保町で撮った作品を、この町でみなさまに観ていただけるのは、幸せなことです」(菊池さん)
菊池亜希子さん(以下、菊池) 今朝、起きたらお天気がとてもよかったので、撮影したルートをちょっとだけ歩きました。(初日を迎える)ひと月くらい前から、なんとも言えない気持ちがいっぱいで、そわそわしていたのですが、空を見ながら、撮影のことなどを思い出したら、その気持ちがすがすがしいものに変わった気がします。
神保町で撮った作品を、この町でみなさまに観ていただけるのは、本当に嬉しいし、幸せなことです。映画館を出たあとは、みなさまも神保町を歩いてみてくださったらいいな、と思っています。
「映画は、エンド・マークが出てから育っていくような気がします」(内藤さん)
内藤剛志さん(以下、内藤) 初日に来てくださるお客さまは、本当に特別だと思っております。
映画というものは、エンド・マークが出てから育っていくような気がします。みなさまにこの映画を(心の中で)持ち帰っていただいて、それぞれの『森崎書店の日々』が育っていけば嬉しいです。また、この映画をご覧になったことが、(みなさまにとって)なにかのきっかけになるとしたら、僕たちは一番嬉しく思います。
日向朝子監督(以下、日向) この作品を始めてから1年半が経つんですが、無事に完成して、こうして初日を迎えて、本当に嬉しいです。今はとても、ほっとしています。
― 撮影現場の雰囲気は、いかがでしたか?
「『神保町らしくない』という理由で、NGになったことがありました(笑)」(内藤さん)
内藤 撮影期間中は、毎日、神保町にかよって、この町に実際に住んでいるつもりになりました。「神保町に溶けこんで、ここで生きよう」と思っていましたので、楽しい日々でした。撮影期間は短かったのですが、感覚的には、神保町に長くいた気がして、(その気持ちは)まだ続いているくらいです。
演技が終わったときに、日向監督から、「内藤さん、今のは神保町らしくない。(神保町の)空気を感じない」と言われて、NGになったこともありました(笑)。
― 「神保町らしさ」の判断基準は?
日向 そのときのフィーリングに近いものがあるんですけど……、撮っているとき、神保町には撮影とは関係のない音がいっぱいしているのですが、(ロケ場所の)書店の中にいる役者さんと町の音が、離れてしまうときがあるんですね。役者さんが演技に集中しすぎているときなどに、そういうことが起こるので、「神保町と噛みあっていないな」と感じた場合は、もう一度やっていただくこともありました。
内藤 わかりました(笑)。すごく新鮮なNGでした。神保町という町そのものが、とても大きい共演者ですから、そことうまく噛みあっていなかったら、当然、NGですよね(笑)。
― 神保町の魅力は?
「神保町は、何回も訪れれば訪れるほど、いろいろな魅力が増します」(菊池さん)
菊池 いろいろあると思いますが、まるでお天気がころころ変わるみたいに、さまざまな表情を持っている町です。たとえば、本日のような晴れの日に神保町を見ると、たくさんの本屋さんから広がる世界がふくれあがってるようなイメージが湧いてきます。また、雨の日に見ると、この場所で本と向きあって、その中で世界ができあがっているような、晴れの日とは全然違うイメージの町に感じます。
神保町を何回も訪れれば訪れるほど、いろいろな魅力が増してくるので、私がまだまだ知らないところがいっぱいあるのだろうな、と思っています。
― 菊池さんにとっては、初の主演映画ですね。
菊池 この映画は貴子の成長記録ではありますが、神保町という町や、そこに生きる人々、町の空気、そういったいろいろな人やものが主役だと思っていたので、自分が主演というよりは、それらの中に飛びこんだひとりの女性として、自然に存在していられることが一番だろう、と考えていました。
― 日向監督から見た、菊池さんの魅力は?
「『菊池さんの手は、どういうふうに本をめくったり持ったりするのだろう』と、気になりました」(日向監督)
日向 初めてお会いしたときに、いろいろお話をしたんですけど、彼女の話すペースや、まとっている空気が、(よい意味で)とても気になって、しかたなかったんです。
また、お話をしているとき、菊池さんの「手」(←写真)が、特に気になりました。大きくて、長くて、とても綺麗なのですが、変わった手をしているんですよ。「この手は、どういうふうに本をめくったり持ったりするのだろう」という気持ちが芽生えて、「この人に貴子を演じてもらおう」と思いました。
また、撮影中は、「カメラの前で、こんなにも無防備に、自分の時間を過ごせる人はいないな」と思いました。そこが役者さんとしての魅力です。
― 思い出深いシーンは?
菊池 内藤さん演じる叔父さんとの、あるシーンです。実は、脚本を読んだ段階では、あのシーンを演じたくなくて(笑)。私が思い描いていた貴子像からすると、とても抵抗があって、いったいどう演じたらいいのか、全然わからなかったんです。
このシーンについて、一度、監督とお話をしたことがあったのですが、「どうしようもないなら、どうしようもないままでいいよ」というふうに言われて(笑)。
内藤 このシーンは、もちろん、台本はあるんですけど、「あなたの言葉で、しゃべってください」と監督に言われました。撮影は「順撮り」という頭から撮る方法でやってきて、このシーンにくるまでに、物語も(登場人物の)気持ちもできあがっているから、菊池さんは貴子として、僕は叔父として、アドリブとは、ちょっと違うんですけど(自分の言葉で台詞を言いました)。
「逸脱してでもなんでも、気持ちが撮れればよい」という感じでした。監督の作戦というと語弊がありますが、演出だったのだと思います。カメラが長くまわったまま、全然カットがかかりませんでした。あのシーンを撮ったときのことは、とてもよく憶えています。
日向 あのシーンを撮影しているときは、一種、異様な空気が流れていました。その空気をカットするべきかしないべきか、一瞬、迷ったんですけど、カットしないほうを選択しました。あのシーンは、演じていた菊池さんと内藤さんも難しかったと思いますが、スタッフも相当、難しかったでしょうし、私にも難しかったです。なので、思い出深いシーンですね。
*ネタバレになるので、くだんのシーンの詳細は割愛しました。本作をご覧になれば、「あのシーンのことだ!」と、必ずや、わかっていただけて、この映画が更に感慨深い1本になることと思います。
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▼『森崎書店の日々』
作品・公開情報
日本/2010年/109分
監督:日向朝子
原作:八木沢里志『森崎書店の日々』 (小学館文庫)
出演:菊池亜希子 内藤剛志
田中麗奈 他
配給:ファントム・フィルム
コピーライト:(C)2010 千代田区/『森崎書店の日々』製作委員会
●『森崎書店の日々』公式サイト
※2010年10月23日(土)より、神保町シアター、シネセゾン渋谷他にて全国順次公開!
《原作はこちら》
第3回ちよだ文学賞大賞受賞作品 小学館文庫『森崎書店の日々』 著/八木沢里志 定価500円(税込) 好評発売中 小学館 |
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●『森崎書店の日々』 作品紹介
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取材・編集・文:香ん乃 スチール撮影:みどり
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