オールNYロケで描くピュアで異色なラブ・コメディ『ブルックリンでZ級監督と恋に落ちた私』宇賀那健一監督インタビュー
- 2026年02月13日更新
![]() |
![]() |
![]() |
2026年も宇賀那健一監督の勢いが止まらない。1月に日本・台湾の合作ホラー『ザ・カース』とR18のハードコア・スラッシャー『インコンプリート・チェアーズ』が立て続けに劇場公開されたばかりだが、2月13日(金)からはオールニューヨークロケで繰り広げる『ブルックリンでZ級監督と恋に落ちた私』が公開を迎える。
ホラー、スラッシャーに続きスクリーンに放たれる今作は、まさかのラブ・コメディ。だが、ただのラブコメ枠に収まらないのが宇賀那作品。キュートなロマンスとともに宇賀那監督らしいパンクでシュールな視点から「創作への情熱」や「言語をこえた心の触れ合い」といった揺るぎないテーマが描かれる。
▼【インタビュー】『ザ・カース』―鬼才・宇賀那健一が『呪詛』チームと放つ、日台合作ホラーの新境地
純度の高い注目の表現者たちで描くロマンス
主人公は、人気女優シイナ(三原羽衣)。注目を浴びながらも忙しい日々に消耗し、いつしか演技への情熱も失い、失言やわがままな言動が目立つようになっていた。そんなある日、ひょんなことで炎上したシイナは、すべてを放り出してボーイフレンドのレン(中川勝就)と気晴らしにニューヨークに遊びにいく。だが、現地でもエゴイスティックにレンを振り回し、喧嘩の果てに路上に置き去りにされてしまう。言葉も通じない土地で絶望に暮れていたとき、お金はないが映画制作に異常なまでの愛と情熱を捧げる“Z級”監督のジャック(エステバン・ムニョス)に出会う――。
主演の三原はABEMA TV『オオカミちゃんとオオカミくんには騙されない』出演でブレイクし、SNSの総フォロワー200万人超えのインフルエンサーとしても活躍する今もっとも旬な女優の一人。レンを演じる中川は話題のボーイズグループOWVのメンバーとして活躍中の注目株。そんな初々しくキラキラした二人と、個性的な魅力を爆発させる現地キャストのコントラストがユニークで新鮮だ。そんな異色のラブコメのキャスティングは、どんなことを重要視したのか。
宇賀那健一監督(以下、宇賀那監督):『みーんな、宇宙人。』にも出演していただいた三原さんは、いい意味で俯瞰ができて、求められていることの咀嚼度が高い。ラブコメは特にそこが必要だと思います。また、全編ニューヨークで撮るにあたって、現地の体制も見えていない部分もあったので、人としてちゃんといい人でないと破綻すると思ったんです。中川くんも同じで、彼は信じられないぐらい素直で純粋で真面目。ラブコメに挑戦するにあたって、その純度の高さがすごく重要だと思いました。
映画への情熱がつないでいく、国境をこえた出会い
ジャックが監督する低予算映画に、主演女優の代打として巻き込まれていくシイナ。チープなメイクに衣装、最小限の機材とスタッフで即興的に撮影していくラン・アンド・ガンスタイルは、日本では有名女優のシイナには考えられないような環境だ。けれど、ジャックや撮影クルーたちの不器用な情熱に触れていくうちに、シイナの中で消えかけていた感情が少しずつよみがえっていく……。
ジャックが映画を語るときのイキイキした瞳、即興的な撮影スタイル、低予算の中で培ったDIY精神、生みの苦しみを熟知しながらもそれに勝る情熱……それらはまるで、取材のたびに垣間見た宇賀那監督の姿にそっくりではないか。
宇賀那監督:僕の要素も少しはあるけど、プロデューサーのロコの要素が大きいですね。2022年に僕の作品がトロマダンス・フィルム・フェスティバルとニューヨーク・アジアン映画祭で上映されるとき、ブルックリンの彼の家に居候させてもらっていたんです。その時にロコたちの撮影スタンスなどを聞いていた影響が大きいと思います。
プロデューサーのロコ・ゼベンバーゲンは、アメリカのカルト映画界で監督、脚本家、俳優としても活躍中だ。宇賀那監督の『ザ・ゲスイドウズ』ではメインキャラクターの一人を演じ、昨年2月には長編監督デビュー作の『I Need You Dead!』が日本でも劇場公開された。二人は本作にも出演するトロマ・エンターテインメントの創始者、ロイド・カウフマンを通じて出会い、以来、国境をこえて互いの創作に協力しあっている。
![]() |
![]() |
| アメリカのインディーズホラー&カルト映画界を代表する監督たち、ロイド・カウフマン(左)とラリー・フェセンデン(右)が出演。この二人の貴重な共演は必見! | |
宇賀那監督:ロコの家に滞在している時に街を散策して、いつかここで映画を撮りたいと思ったんです。それがこの企画のスタート地点になりました。
さまざまな音楽やアートの歴史、インダストリアルな風景、独特の反骨精神を内包した街のエネルギー。それらが渾然一体となったニューヨークのロケーションが、映画の魅力を何倍にも膨らませている。本作を観てそう感じる人は少なくないだろう。
“創作”という共通言語と心の触れ合いで加速するコミュニケーション
翻訳アプリを通して気持ちを伝え合うシイナとジャック。もどかしいコミュニケーションだが、“創作”という共通言語と惹かれ合う心が芽生えると、二人の距離は加速度的に縮まっていく。しかし、カメラの外にいるときの演者たちは、どんなコミュニケーションをとっていたのだろう。
宇賀那監督:実際に、三原さんとジャック役のエステバンは撮影直前の衣装合わせが初対面で、映画とほぼシンクロする感じで距離を縮めていました。翻訳アプリを使いながら、最終的に二人はめちゃめちゃ仲良しになっていました。
言語の壁をこえたコミュニケーションを必要とするのは、スタッフも同じはず。日米の撮影スタイルの違いなどで摩擦や苦労はなかったのだろうか。
宇賀那監督:ありました。そもそもは、僕が現場のシステムの違いについて知識不足のまま挑んでしまったのが要因です。12時間縛りの労働時間が、撮影開始から終わりまでだと思っていたら、準備開始から終わりまでだったり、香盤表の作り方から違っていたり。日本からスタッフ4人と行ったんですけど、日本人スタッフは言われる前に察知してやることが多いけど、そこにも差があって。もちろん悪意とかでなく、単純な文化の違いです。自分の英語がニュアンス的に伝わりきれてない部分もあったし、向こうも大変だったと思います。逆の立場で考えれば、いつもと全然違うやり方の中で、彼らもすごく頑張って、全力を尽くしてくれたんですよね。
そんな文化的齟齬や複雑な感情を経験して、スタッフやキャスト、そして宇賀那監督自身にはどんな変化があったのか。
宇賀那監督:お互いに「いい映画にしよう!」という共通認識があったので、最終的にはめちゃめちゃ強い繋がりができました。打ち上げも、みんな酔っ払いまくってカオスでしたね(笑)。昨年7月に開催されたファンタジア国際映画祭では、三原さんが最優秀演技賞を受賞して、それもすごくうれしかった。ホラー系とはまた違った反応で新鮮でした。
映画の中に描いた「言葉をこえた純粋なつながり」を誰よりも体感したのは、宇賀那監督はじめ本作に関わった現場の人々だったようだ。
思えば、宇賀那作品にはジャンルを問わず常に純度の高い「愛」が根底に描かれている。ホラー作品では「愛と狂気に満ちたファンタジー」と称されることが多い宇賀那監督だが、そんな宇賀那節は本作でも健在。およそラブコメには登場しないであろう、映画史上もっとも血飛沫(血のり)にまみれた告白シーンにはどんな想いが込められたのか。
宇賀那監督:映画を創作することへの愛情をたっぷり込めました。特にホラー映画への。あのシーンは映画への告白シーンでもあります。
――魂の共鳴とは?
――自分にとっての本当の幸せはなに?
――心から一緒にいたい人はだれ?
シンプルかつ究極の問いを、まさかのラブコメを通して描いた宇賀那健一監督。その奇才ぶりは今後もますます飛躍していきそうだ。ぜひとも映画館の大きなスクリーンで本作を楽しみながら、自身の心の奥底にある熱い思いに踏み込んでみてほしい。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
1984年生まれ、東京都出身。2016年ガングロギャルを題材にした『黒い暴動♥』で長編映画監督デビュー。その後『サラバ静寂』『魔法少年☆ワイルドバージン』『転がるビー玉』などさまざまなジャンルの作品を手がけ、2020年には監督作『異物』シリーズが20 ヵ国85以上の映画祭に入選し、11 のグランプリを受賞。以降、『Love Will Tear Us Apart』『悪魔がはらわたでいけにえで私』『みーんな、宇宙人。』『ザ・ゲスイドウズ』など精力的に映画を撮り続け、トロント国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭、シッチェス映画祭、モントリオール・ヌーヴォー・シネマ、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭、ポルト国際映画祭、スラムダンス映画祭、ファンタジア映画祭、ファンタスティックフェスト、トリノ映画祭、高雄映画祭など数々の映画祭で注目される。2026年は『ザ・カース』『インコンプリート・チェアーズ』に続き、本作が早くも3作目の劇場公開作品となる。
(取材:富田旻)
予告編&作品概要
『ブルックリンでZ級監督と恋に落ちた私』
(2025年/86分)
出演:三原羽衣、エステバン・ムニョス、中川勝就、ロイド・カウフマン、ラリー・フェセンデンほか
監督・脚本:宇賀那健一
プロデューサー:Rocko Zevenbergen アソシエイトプロデューサー:Martin Murray
撮影:手嶋悠貴 助監督:平波亘 照明:Chris Lind 録音:James Boylan
Key grip:Nolan Slay Production Designer:Mad Kruse Art Director:Veronika Orlovska
ヘアメイク:くつみ綾音 衣装:Katryna Ohryn 衣装アシスタント:Gunner Manley
特殊メイク・特殊造型:RJ Young 特殊メイク協力:Aerin Chaklai
スチール撮影:Ingrid Viruel、Erik Simkins
制作担当:Perrin Mercer 制作助手:Eli Simmonds
通訳:Emmanuel Sitinas
オープニング曲:OWV
劇伴:今村怜央
エンディング曲:MAY J.
制作・宣伝:株式会社Vandalism
製作:『ブルックリンでZ級監督と恋に落ちた私』製作委員会
配給:エクストリーム・フィルムズ
©️『ブルックリンでZ級監督と恋に落ちた私』製作委員会
※2026年2月13日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿ほか全国順次公開
- 2026年02月13日更新
トラックバックURL:https://mini-theater.com/2026/02/13/63375/trackback/










