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『ブリグズビー・ベア』-外界から閉ざされた場所で育った青年の唯一の友人は、一匹のクマだった
- 2018年06月22日更新
とある理由から外の世界を知らずに育った純粋な青年の熱い想いに、家族や友人、さらに彼を保護した警官が心を動かされ、ひとつの目的に向かい力を合わせるハートウォーミングストーリー。
「サタデー・ナイト・ライブ」やYouTubeチャンネルで活躍するコメディユニット、“GOOD NEIGHBOR”のメンバーたちが監督・脚本・主演を務めた。マーク・ハミルやクレア・デインズ、グレッグ・キニアなど俳優陣も豪華。サンダンス映画祭やカンヌ国際映画祭などでも話題になったという。
突然地下シェルターから放り出された青年の行く末は?
砂漠の小さなシェルターで両親と暮らす、青年ジェームス。外界から閉ざされた地下での生活しか知らない彼だが、子どもの頃から定期的に届く教育ビデオ「ブリグズビー・ベア」の研究に勤しみ、チャット「仲間」と語り合う平和な日々を送っていた。しかしある日警察が彼を連れ去り、両親は25年前に彼を誘拐した罪で逮捕されてしまう。
“ニセ”の両親以外と話したことのなかった彼は、地上の世界に困惑する。また、2人の逮捕で、ジェームスの教育のためだけに作られたVHSビデオ「ブリグズビー・ベア」の新作が見られなくなったことに落胆。しかし、“妹”のオーブリーや映画好きのスペンサーたちの理解と協力を得て、映画版を制作しシリーズを完結させることを決意する。彼の変人ぶりに戸惑っていた周囲も、その純真さや素直さ、映画にかける情熱にやがて惹かれていく。
社会への順応・再生にも一役買う万能ベア
物語の前半で、“子どもを誘拐し25年間隔離する”という重大な犯罪が露呈する。だが、被害者であるジェームスがその後、“トラウマに苛まれる” “道を踏み外す” “ニセの両親を恨み続ける”などの重い要素はここにはなく、代わりに、彼が大好きな「ブリグズビー・ベア」の新作を自ら作るために情熱を燃やす、というポジティブな展開が用意されている。
ジェームスに勉強やルール、常識、ときに困難へ立ち向かう大切さを教えてくれたブリグズビー・ベア。新しい世界で、彼が自分の居場所を見つけてどう再生していくかという過程でも重要な役割を果たす。ユーモラスだが少し切ない表情、どこか懐かしい雰囲気を持つ唯一無二のクマは、人とは違う彼の生きてきた証であり、真のヒーローなのだ。
マーク・ハミルの職人技が見られる!?
ジェームスを誘拐した夫婦は犯罪に手を染めたが、彼に愛情を与え続けた。ニセの父親役を演じるのは『スター・ウォーズ』シリーズのマーク・ハミル。ルーク・スカイウォーカー役があまりにも有名な彼だが、本国では声優としても大活躍している。なかでも『バットマン』シリーズのジョーカーが当たり役。本作でそのプロフェッショナルな技が見られるかどうかは、ぜひ劇場で確認を。
純粋な心と情熱は周囲に伝播する
当然ながら、解放されたばかりのジェームスには社会性も感情も欠如している。本当の家族に対する感慨や長年一緒にいたニセの両親への思慕、あるいは恨みさえもほとんど表に出さない。だが、「ブリグズビー・ベア」の制作という夢の実現に向けて周囲の人々と関わっていくうちに、だんだんと表情が豊かになり、その変化に胸を打たれる。
それにしても、なぜ皆ジェームスに惹かれるのだろう。社会に揉まれことなく、また他人に拒絶されることなく育ったからか? 処世術を知らず純粋さを持ち合わせているからか? 誘拐という悲劇が原因であるとはいえ、そうしたことが人々の懐に彼が入り込める理由なのかもしれない。
普通でない環境で育ってきたジェームスを“変わり者”と切り捨てず、受け入れ協力していく周囲の人々。そんな構図に制作側の温かさもにじみ出る。世界は善意でできている、そう信じたくなる作品だ。
>>『ブリグズビー・ベア』予告編映像<<
▼『ブリグズビー・ベア』作品・公開情報
原題:Brigsby Bear
(2017/アメリカ/カラー/97分/PG12)
監督:デイヴ・マッカリー
脚本:ケヴィン・コステロ、カイル・ムーニー
出演:カイル・ムーニー、マーク・ハミル、グレッグ・キニア、マット・ウォルシュ、クレア・デインズ 他
提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
配給:カルチャヴィル
© 2017 Sony Pictures Classics. All Rights Reserved.
※2018年6月23日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか公開
文:吉永くま
- 2018年06月22日更新
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