第14回東京フィルメックスクロージングセレモニー-最優秀作品賞はグルジア映画『花咲くころ』に決定
- 2013年12月01日更新
11月30日(土)、第14回 東京フィルメックスのクロージングセレモニーがおこなわれ、各賞が発表された。コンペティション作品10本の中から最優秀作品に輝いたのはグルジアの10代の少女たちを描いたナナ・エクチミシヴィリ監督、ジーモン・グロス監督の「花咲くころ」。各賞の喜びの声をリポートします。
観客賞 『ILO ILO(英題)』
アンソニー・チェン監督受賞コメント
東京フィルメックスは私にとって重要な映画祭です。三年前にネクストマスターズトーキョーに参加しなければこの映画は完成しなかったはずです。この映画は各地で賞をいただきましたが、観客の賞をいただくのは初めてです。一般の観客に良い映画だとお墨付きだといただいということで大変うれしく思います。今後、日本で配給されていって多くの人の目に触れていくことを望みます。ありがとうございました。
『ILO ILO(英題)』
監督:アンソニー・チェン
1997年、アジア通貨危機の影響下にあるシンガポール。フィリピン人のテレサが住み込みのメイドとしてある家庭に雇われる。夫婦が共働きでほとんど家にいない中、テレサは学校で問題ばかり起こしている一人息子のジャールーと多くの時間を過ごす。最初はなつかなかったジャールーも次第にテレサに心を開き、二人の間に家族にも似た関係が築かれる。カンヌ映画祭でカメラ・ドール(最優秀新人監督賞)を受賞作。
学生審査員賞 『トランジット』
ポール・ソリアーノプロデューサーによるハンナ・エスピア監督コメント代読
タレント・キャンパス・トーキョーと東京フィルメックスがくれたこのような機会に、私は一生感謝し続けると思います。また、学生審査員賞の審査員団にも大いに感謝します。映画を学ぶ学生こそが映画の未来であると信じていますし、才能豊かな若い人たちからこうした賞を受けるのはとても光栄であり、また同時に非常に謙虚な気持ちにもさせられます。私たちがいつまでも映画の学生であり続けられますように。いつまでも学ぶ気持ちを持ち続けられますように。
『トランジット』
監督:ハンナ・エスピア
イスラエルのヘルツリヤで働くフィリピン人労働者モイゼスが息子の4歳の誕生日を祝うためにテルアビブのアパートに戻ってくる。その日、モイゼスと隣人のフィリピン人女性ジャネットは、イスラエル政府の移民政策の変更により、外国人労働者の子供たちが強制送還されることになったことを知る。モイゼスとジャネットはそれぞれの子供たちの存在を隠そうと画策するが……。
スペシャル・メンション『カラオケ・ガール』、『トーキョービッチ,アイラブユー』
ウィッサラー・ウィチットワータカーンは帰国されて欠席
『カラオケ・ガール』
監督:ウィッサラー・ウィチットワータカーン
ナイトクラブでホステスとして実際に働いていた女性を主役に起用し、彼女の日常生活をフィクションとドキュメンタリーを交えて描いた作品である。田舎の村で育ち、15歳の年に都会に出稼ぎにやって来たサー。3年間工場で働いた後、彼女は田舎の家族を養う唯一の手段として、夜の世界に身を投じた。ロッテルダム映画祭コンペティションで上映。
吉田光希監督受賞コメント
大好きな映画祭でスペシャル・メンションという評価をいただけたことは励みになります。これから先も自分の映画を探し続けてまた皆さんの前に戻ってきたいと思っています。本日はありがとうございました。
『トーキョービッチ,アイラブユー』
監督:吉田光希
風俗嬢の初江は、客として知り合った義徳と不倫の関係を続けている。妻との生活に息苦しさを感じていた義徳は、初江との密会に安らぎを感じていた。一方、他者と深く関わろうとしない初江も、義徳と過ごす時間だけは女性らしくいられるのだった。ある日、義徳は会社の同僚に頼まれて、借金の連帯保証を引き受けるが、それが発端となり、初江との関係は妻の知るところとなる……。近松門左衛門の「曽根崎心中」を現代の東京に翻案した同名舞台(「オーストラ・マコンドー」によって上演)の映画化。
審査員特別賞 『ハーモニー・レッスン』
エミール・バイガジン監督は帰国のため、カザフスタン大使館Almas DISSYUKOV参事官がコメント
本日はカザフスタンの映画が特別賞をいただいたということで、大変うれしく思います。これを機会にカザフスタンに興味を持っていただければと思います。
『ハーモニー・レッスン』
監督:エミール・バイガジン
カザフスタンの村に暮らす13歳の少年アスランは、学校の身体測定の最中に多くの生徒たちの前で侮辱を受ける。それ以来、アスランは自分の周囲を完璧にコントロールすべきという潔癖性にとらわれるようになる。一方、学校では犯罪組織とつながりのある生徒による脅しやいじめが横行していた。アスランはそのような行為に反発するが、それは彼を更なる窮地に陥れることになる……。ベルリン映画祭芸術貢献賞を受賞作。
最優秀作品賞 『花咲くころ』
林加奈子東京フィルメックスディレクターによるナナ・エクチミシヴィリ監督、ジーモン・グロス監督のコメント代読
今この瞬間、皆様と一緒にいられたらと思います。しかし、私たちの間には物理的に遠すぎる距離があり。簡単にそちらに立ち寄ることはできません。正直いって、今日の始まりはひどものでした。外は雨降りで、11月の寒さの厳しい一日の始まりでした。しかし東京フィルメックスでの最優秀作品賞の知らせを読んだ時私たちの一日は一瞬にして変わりました。
世界の全く別の場所にいる人々の心に自分たちの作品が届くというのは、素晴らしく最高の気分です。この美しい賞をいただいたことに対し、審査員の皆様と映画祭に感謝します。
『花咲くころ』
監督:ナナ・エクチミシヴィリ、ジーモン・グロス
1990年代初頭。ソ連の解体後、独立を達成したものの、内戦による不安定な空気に包まれていたグルジアのトビリシ。主人公は14歳になったばかりのナティアとエカ。父親の不在のうちに育ったエカは、母親と姉の干渉に反発を感じている。一方、ナティアの家庭はアル中の父親のために険悪な状態に追い込まれている。ある日、ナティアは一人の少年から銃弾が入ったピストルを渡される。それは家庭からも学校からも疎外された二人の少女たちの運命を変える事件の発端であった……。ベルリン映画祭フォーラム部門で上映、国際アートシアター連盟賞(CICAE賞)受賞作。
モフセン・マフマルバフ監督総評
親愛なる日本の皆様ありがとうございました。親愛なるフィルメックス、アジア映画の支援をありがとうございます。現在アジアの映画は二つの検閲の圧力を受けています。一つには中国やイランのような国における思想的な検閲です。もう一つは世界中あらゆるところにある経済的な検閲です。毎日、毎日、芸術的な映画が存在できる場所が小さく小さくなってまいりました。親愛なる映画製作者の皆様、配給会社の皆様、いつもあなた方は経済危機だおっしゃいますが、その経済危機のルーツは文化的な危機に根付いていると思われませんか。親愛なる観客の皆様、皆様方の支援がこのような映画を生きながらえさせているということを忘れないでください。親愛なる映画作家の皆様、私よりもよくご存知だとは思いますが、映画製作は、商売ではなく、仕事でもなく、ましてや虚栄でもありません。映画というのは想像、創り出すことの愛であり、この社会への責任です。ありがとうございました。
撮影・編集・文:白玉
- 2013年12月01日更新
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