『恋の罪』— 禁断の話題作が解禁! 世界の園子温が描く、女たちの愛の地獄

  • 2011年11月11日更新

昼と夜、2つの顔を使い分ける女たちの愛と性

園子温監督の勢いが止まらない。2009年の『愛のむきだし』、2010年の『冷たい熱帯魚』、そして2011年は『恋の罪』『ヒミズ』と、立て続けにその作品がヴェネチア、ベルリン、カンヌをはじめとする世界の名だたる映画祭で喝采を浴び、いまや国内外の映画ファンから最も熱い視線を受ける存在として、ますます異彩を放ち続けている。そんな中、遂に公開となる『恋の罪』は、1990年代に起きた「東電OL殺人事件」に触発されて監督自身が描いたというオリジナル・ストーリー。昼と夜、2つの顔を使い分ける女たちの愛と性、決して満たされない心の渇きを鮮烈に描き切る、究極のエンターテインメント作品だ。


どしゃぶりの雨が降りしきる中、渋谷区円山町のラブホテル街にある廃墟のようなアパートで女の死体が発見される。女刑事・和子(水野美紀)は謎の猟奇殺人事件を追ううちに、大学のエリート助教授・美津子(冨樫真)と人気小説家を夫に持つ清楚で献身的な主婦・いずみ(神楽坂恵)の驚くべき秘密に触れ引きこまれていく……。事件の裏に浮かび上がる真実とは? 3人の女たちの行き着く果て、誰も観たことのない愛の地獄がはじまる。

スクリーンから濁流のように押し寄せる「女の業」

心の渇きを抱えて性の暗闇をのぞき込んだ女たちは、永遠に辿りつけない「城」の入り口を探してぐるぐると廻り続ける……。極彩色の映像美、荘厳な音楽、目を覆いたくなるような猟奇的殺人、園子温節ともいえる狂気のエンターテインメントに引き込まれながら、スクリーンから濁流のように押し寄せる女の業に窒息してしまいそうになる。狂気と現実の境界線を軽々と越えていく女、その女に導かれ墜ちていく女、そしてギリギリのラインで踏みとどまる女。一見、現実離れしたストーリーだが、そこに描かれているのは、きっとどんな女性の中にもある普遍的な欲望と虚無感、女であることへの執念ではないだろうか。

壮絶過ぎる女優魂。3人の主演女優の火花散る演技バトル

いずみは世間的には誰もが羨むセレブ妻でありながら、生きている実感を見出せずに日々苦悩している。そんなある日、暇つぶしでパートに出たスーパーでモデルにスカウトされ、流されるままにAVに出演させられる。戸惑いながらも、他者から自分の存在が求められる快感に目覚めはじめ、更なる刺激を求めて渋谷・円山町をさまよううちに、美津子という立ちんぼの女と出会う——。この2人の出会いがやがて悲劇へと向かう。貞淑な妻がどん底へ墜ちていく姿を演じたいずみ役の神楽坂恵と、知的な助教授と娼婦を見事に演じわけた美津子役の冨樫真の全身全霊の演技は凄まじいの一言。全裸シーンの多さや、大胆なセックス描写の衝撃度はもちろんのこと、2人が激しくぶつかり合い、叫び、泣き、その感情を剥き出しにする姿は、あまりの緊迫感に息をすることすら忘れて見入ってしまう。その2人を追う女刑事・和子を演じる水野美紀も、幸せな家庭がありながら不倫相手を断ち切れない女の性を、抑えた演技の中でリアルに演じている。主演女優3人の鬼気迫る演技に圧倒されつつも、美津子の母・志津を演じた大方斐紗子、いずみの夫役の津田寛治、和子の不倫相手を演じたアンジャッシュの児嶋一哉、飄々とした若者・カオル役の小林竜樹など、脇を固める俳優陣の個性的な演技からも目が離せない。

この映画、覚悟して観るべし

これはけっしてデート向きの映画ではない。よほど気心の知れたカップル以外は相手の感想がその先の付き合いに影響するかもしれないので注意が必要だ。オススメは同性同士(特に女性同士)、または一人で行くことだが、それでもうっかり観るには衝撃度が高過ぎる。特に女性は心の奥で眠っていた複雑な感情をぶるんぶるんと揺さぶられる可能性があるので、少なからず覚悟をして行っていただきたい。

 

 

▼『恋の罪』作品・上映情報
(2011/日本/144分/R-18)
監督・脚本:園子温
英題:Guilty of Romance
出演:水野美紀、冨樫真、神楽坂恵、児嶋一哉(アンジャッシュ)、二階堂智、小林竜樹、五辻真吾、深水元基、内田慈、町田マリー、岩松了(友情出演)、大方斐紗子、津田寛治ほか
製作:「恋の罪」製作委員会
配給・宣伝:日活

『恋の罪』公式ホームページ
©2011「恋の罪」製作委員会

※2011年11月12日(土)よりテアトル新宿ほか全国公開

文・min

  • 2011年11月11日更新

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