追悼 ミシェル・ルグラン-美しい旋律に彩られた“恋する映画”たち

  • 2019年03月26日更新


今年1月、フランスのピアニストで作曲家のミシェル・ルグランの訃報が届いた。フランス映画から、ハリウッド映画、日本映画まで数々の映画音楽を手掛け、その作品は長い間多くのファンを虜にしてきた。今回はルグランの名曲に彩られた作品の中から、『ロシュフォールの恋人たち』『おもいでの夏』『華麗なる賭け』のDVD&Blu-rayをご紹介。時に甘く時に切ないメロディは、映画とともにいつまでも私たちの心の中に生き続けるだろう。


『ロシュフォールの恋人たち』-色彩の魔術師が仕掛けたフレンチミュージカルの最高峰

ロシュフォールの恋人たち
(1966年/フランス・アメリカ/127分
監督:ジャック・ドゥミ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワーズ・ドルレアック、ジーン・ケリー、ジョージ・チャキリス

『ローラ』『シェルブールの雨傘』『ロバと王女』など多くの作品でタッグを組んだジャック・ドゥミ監督とルグラン。その中でも特に人気が高い本作は、ポップな色彩に溢れる楽しいミュージカルだ。カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワーズ・ドルレアック、ジーン・ケリー、ジョージ・チャキリス、ダニエル・ダリューなどの豪華なスターたちが出演。『シェルブールの雨傘』とともに、『ラ・ラ・ランド』に影響を与えたといわれている。

フランスの港町ロシュフォールに、エチエンヌとビルたちの旅芸人のキャラバン隊が到着。2日後に開かれる年に1度の祭に出演するためだ。浮足立つ町では、美しいソランジュとデルフィーヌの双子姉妹、水兵のマクサンヌ、姉妹の母イヴォンヌ、彼女の昔の恋人シモン・ダム、ダムの旧友でアメリカから来た作曲家のアンディたちが、恋の予感に包まれている。そして待ちに待った祭の日がやってくる。

冒頭から車のCMにも使われた曲「キャラバンの到着」が流れ、ダンサーたちの軽やかなダンスにくぎ付けに。「水夫、友達、恋人、または夫」「マクサンスの歌」など、他のナンバーも名曲ぞろい。まるで絵本の中から抜け出てきたようなドヌ-ヴとドルレアック姉妹演じる双子のキュートなファッションにも注目したい。このうえない至福感に浸ることができる、まさに“恋の映画”だ。

ロシュフォールの恋人たち [Blu-ray]

『おもいでの夏』-魅惑的な人妻に恋した少年の青春ノスタルジー

『おもいでの夏』
(1971年/アメリカ/104分
監督:ロバート・マリガン
出演:ジェニファー・オニール、ゲイリー・グライムズ、ジェリー・ハウザー、オリヴァー・コナント

年上の女性に憧れる10代の少年が、ほろ苦い思い出とともに大人の階段を上っていく姿を回想形式で描く。脚本を手掛けたハーマン・ローチャーの自伝的ストーリー。

1942年の夏、家族とともにニューイングランドの沖合の島を訪れた15歳のハーミー。友人のオシーとベンジーとの話題はもっぱら女の子のことばかり。そんな中、ハーミーが恋したのは、丘の上の家にすむ美しい人妻ドロシーだった。ドロシーの夫の出征後、何とか彼女に近づくことに成功したハーミーは、夢のような時間を過ごす。だが、やがてその夏は終わりを迎えることになる……。

ハーミーにとって、ドロシーは同年代の少女たちとは違う崇拝すべき女神のような存在。彼女に合わせようと背伸びするハーミーが微笑ましい。

他愛ない思春期の少年の物語を多くの人々の心に刻まれる作品にまで昇華させたのは、郷愁を誘う映像、ジェニファー・オニールの類まれな美貌、そしてルグランのテーマ曲といえるだろう。抒情的なメロディは、ハーミーとドロシーがいたあの海辺に私たちをいざなってくれる。

おもいでの夏 [DVD]

『華麗なる賭け』-大人の駆け引きに酔うスタイリッシュなクライムラブストーリー

『華麗なる賭け』
(1968年/アメリカ/103分
監督:ノーマン・ジュイソン
出演:スティーブ・マックィーン、フェイ・ダナウェイ、ポール・バーク、ジャック・ウェストン

オープニングに流れるのは、ノエル・ハリソンの歌う名曲「風のささやき」。主役は颯爽とスーツを着こなすセレブな青年実業家と、洗練された60年代ファッションに身を包む女性調査員。実業家が陰で糸を引く銀行強盗の鮮やかな手口は、後年テレビドラマ『24』でも使われた分割画面で魅せる。どこまでも粋で洒落た作品だ。スティーブ・マックィーン、フェイ・ダナウェイの2大スターが共演。

大富豪の青年実業家トーマス・クラウンは、自らの冒険心を満たすために雇った男たちに銀行強盗を命じて見事成功。保険会社調査員ビッキーは、トーマスの仕業だとにらみ彼に近づくが、次第に彼に惹かれていく。一方トーマスは、再び銀行を襲って南米に逃亡する計画をビッキーに告白する。果たして2人の恋の行方はどうなるのか?

最大の見どころは2人の官能的な駆け引きが描かれるチェスシーン。マックィーンの吸い込まれそうな青い瞳、ダナウェイの艶めかしく形の良い唇。彼女の色仕掛けに思わず負けそうになる彼の仕草や表情が何ともチャーミングだ。マックィーンとダナウェイに恋するために作られた作品なのかもしれない。

本作は1999年に『トーマス・クラウン・アフェアー』(ピアース・ブロスナン主演)のタイトルでリメイクされ、スティングが主題歌をカバーした。

華麗なる賭け [DVD]

(文:吉永くま)

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