『鳥を見て!』―青春Hシリーズの第22弾は、「体から始まる関係」しか知らなかった肉食女子のピュア・ストーリー。

  • 2012年04月14日更新

「セックスから始めること」でしか男と関係を作れなかった女の子が、段階を踏んで恋をする方法を知る。

「青春」をテーマに、「エロティックなシーンがあること」 ― この条件のもと、多くの監督がそれぞれの個性をきらめかせた内容で作品を発表してきた青春Hシリーズの第22弾『鳥を見て!』が完成した。監督は、『ちょちょぎれ』に続く長編2作目となる佐々木友紀氏。2012年4月14日(土)より、東京のポレポレ東中野にて、1週間のレイトショーである。

 一見、清楚だが、「男好きする体」を持っている、大学生のかおり(七咲楓花)。合コンで負け知らずの彼女は、いつだって、「お持ち帰り」をされたりしたり。そんな常勝肉食女子のかおりをもってしても、落ちない男が現れた。彼女にまったく興味を示そうとしないその男 ― 弦太(片山享)に対して意地になったかおりは、「共通の趣味を持てば、気を惹けるかもしれない」と考えて、弦太が好きなバード・ウォッチングを一緒にしようと思いたつが……。

このキー・パーソンは、「本当は」誰なのか。

 男に不自由していないかおりだが、「体から始まる関係」に「真実の愛」を求めてしまっているのが、彼女の不器用でかわいそうなところ。当然ながら、「簡単にやらせてくれる女」のかおりを本命扱いしようとする男はいない。段階を踏んで恋をすることを知らなかったかおりは、弦太に照準を合わせたのをきっかけに、恋愛のスタンダードなセオリーを知っていく。

 ただ、かおりが「本当の恋を知る過程」には、一風変わった手法が施されている。

「弦太を振り向かせる!」と意気込むかおりの前に、広澤草が演じる咲子という女が現れる。咲子には具体的な設定とパーソナリティーがあって、彼女はごく自然にかおりのいる風景に溶けこんでいく。かおりと咲子が仲よくなっていくのを、観る側もまたごく自然に、「当然のこと」と見なしていく。

 しかし、ある時点で、唐突に疑問をいだくだろう。「この咲子という女は、『本当は』誰なのだ?」と。彼女の具体的な設定とパーソナリティーが劇中で明示されているにもかかわらず、だ。

あらゆる種類の「笑顔」で魅せてくれる広澤草。

 咲子という人物の正体をどのように定義するかによって、この恋愛映画の「ジャンル」が変わる。リアルで生々しい恋愛のドラマになるかもしれないし、ポップなファンタジック・ラヴ・ストーリーになるかもしれない。咲子をどう捉えるか ― その選択肢の数だけ物語の表情ががらりと異なってくる点が、本作の最たる魅力のひとつである。

 誰の日常にいても不思議ではないナチュラルさと、うしろを歩いていたはずなのに振り向いたら姿を消していそうな幻想性 ― 対照的なその二面性を、広澤草は咲子の中に共存させた。ユニセックスの衣装に身を包んで、ときにキュートに、ときにコケティッシュに、あらゆる種類の「笑顔」を咲かせてくれている広澤草に会うためだけでも、本作を観る価値がある。

 ところで、「エンドクレジットが始まったと同時に観るのをやめたら、大きな損をする映画」があるが、本作もそうである。スタッフロールが流れたからといって、早まってお席を立たれることはないように。

▼『鳥を見て!』作品・公開情報
2012年/日本/カラー/100分/ビスタサイズ/ステレオ/HDV(一部劇場を除く)
監督・脚本:佐々木友紀
出演:七咲楓花 広澤 草 片山 享
永峰絵里加 清瀬やえこ 永井 努 黒田耕平
吹上タツヒロ 広江美奈 塚原大助 
製作:松下順一
企画:高﨑正年
プロデューサー:小貫英樹 奥野邦洋
アシスタントプロデューサー:松下達郎 廣田将人
音楽:まついえつこ
原案:岩佐陽一
撮影:佐々木友紀
録音:荒井るり子
助監督:河村匡哉
制作プロダクション:東京レイダース
製作:アートポート
配給・宣伝:アートポート
コピーライト:(C)2012アートポート
青春H『鳥を見て!』公式サイト
※2012年4月14日(土)よりポレポレ東中野にてロードショー。

文:香ん乃

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