映画の達人-東京学生映画祭番外編(林家しん平監督/大森立嗣監督/田口トモロヲ監督)学生映画人に見て欲しい映画「お前が試されてるんだぞ、この映画は」

  • 2011年06月30日更新

「映画の達人」は映画界で活躍する皆さんに愛してやまない映画について熱く語っていただくコーナーです。今年で23回目を迎えた東京学生映画祭。昨年グランプリを受賞した田崎恵美監督はカンヌ国際映画祭短編コンペティション部門で入選を果たし、学生映画の登竜門として改めて注目を集めている。今回は審査員を務められた林家しん平監督、大森立嗣監督、田口トモロヲ監督に「東京学生映画祭出品作品と学生映画と学生に見てもらいたい映画」についてお話を伺いました。三人の審査員が学生の映画製作者に問いかけるのは「今しか表現しえない学生特有の心の内と向き合っていますか?」という疑問。表現の制約のない、今しかできないものを深く掘り下げて見せて欲しいと語る三人の審査員の言葉は厳しいけれど、次世代学生特有の映画人に向ける優しい態度。まずは審査員の方々の『若き映画人にお勧めする三本』から自分の表現の世界を広げてみてはどうだろう。




 

「なんでもある時代」の感性があるはず。自分達にない刺激を受けたい。- 林家しん平監督
学生映画のイメージって、とてもゆるかったりとてもどぎつかったりしたんです。今回そういうものがなかった。自分が思っていた以上に毒があんまりない。若松孝ニ監督みたいにどろどろして、尖ったものを持っている人は少ないですよね。商業監督になるんだったら「なんか」持っていかないといけないけれど、それが見える人は少なかった。テクニックではない、観客の気持ちになれる、そして自分の言いたいことも入っているもの。学生にかなわないものって、若さじゃないですか。「こんなこと言いやがってこいつ」みたいな。それがない。「なんでもある時代」の感性があるはず。僕らの世代は、なんにもないような大人たちが作った映画を見て刺激された。同じように学生さんには自分たちにはないものから刺激を受けたい。準グランプリ受賞作『死神』は落語家である僕に、丸々落語を題材にしてもいけるのかもしれないなということを感じさせてくれましたね。


「映画はこんなもんじゃないんだろう、自分はなにか変えたいんだ」というものを持ってほしい-大森立嗣監督

全体として大事な部分が少し足りないかなと思う。若く映画が好きで映画を作るっていう人たちに「いや映画はこんなもんじゃないんだろう、自分はなにか変えたいんだ」みたいなものがないなと。僕らは(前世代の映画人)・・・若松孝ニさんとか、大島渚さんのような、人を先導していくような映画人を見てきていて、やっぱりそこで自分に足りないものを感じながら、でも映画を撮っていかなきゃいけなくて撮り続けた。今は3万とか10万とかでできちゃうからそれはそれでいいのかもしれないけれど、「なにかを変えたい」という気持ちが希薄なこの状況はちょっと寂しい。


学生はディープな心の底の混沌としたものを完成させることなく吐き出せる時期。今しかできないことがあるはず。- 田口トモロヲ監督 
(前世代でいうと)塚本晋也監督とか、人生の全てを投げ打って、崖っぷちで作る映画表現とは違って、学生の作品は皆な、クレバーでスマート、そして幼い。ゆとり世代のジェントルで本当にいい子達。その部分をプラスにして表現につなげて欲しい。学生はディープな心の底の混沌としたものを完成させることなく吐き出せる時期だと思うんです。なに撮ったって自由だし。今しかできないことがあるからそれを活用して欲しいなというのはありました。学生映画はそれ(コンプレックス)があってしかるべき。「こんなのばっかりでもう観るのも嫌だ!」と言ってみたい。グランプリ受賞作「デリバリーファッションヘルス」にはコンプレックスを見世物にするっていうのがありましたよね。もう一つ演技について、デジタルに慣れたナチュラルな芝居の流れを僕はいいとは思わない。表現に関わるときの怖さとそれを乗り越えようとする勇気、その時に出てくる恥ずかしさを客は観たい。今回はそれが希薄でしたね。


学生映画人はこれを見ろ
林家しん平監督- 『女優フランシス』(1982年 監督:グレイム・クリフォード)

女優フランシス [DVD] 観たいものは自分の足で探す。メディアとかそういうものに踊らされないで、自分で探して欲しいですね。見つかったときにすごくうれしいから。そこから映画にのめり込んでいくんじゃないかな。この作品は観た後、後味悪いんです。でも、それに惹かれる。映画をとった人にも惹かれる。忘れたくても消えない。傷つけてもらうのがいいのかな。自分の体の中で傷を治していって色んなこと考えるんですよ。僕の最新作『落語物語』は落語の裏の世界。すごく楽しそうに落語家が笑っていますけれど見ていたら隠滅滅となる作品でもある。『ただ笑わすのは嫌だ』という原点がここにあるのかと思います。

大森立嗣監督- 『ドイツ零年』(1948年 監督:ロベルト・ロッセリーニ)

ドイツ零年 [DVD] 自分が分からないもの、理解できないものを見て欲しい。「お前、どうするこの映画?対峙してみる?お前が試されてるんだぞ、この映画は。」という作品。分からない映画にどう迫っていくのか、そこを見せて欲しい。

田口トモロヲ監督-『ゲルマニウムの夜』(2005年 監督:大森立嗣)

ゲルマニウムの夜 デラックス版 [DVD] デビュー作というのは、ああいうことです。



恒例の靴チェック
靴は人。三人の監督のカラーが見事なまでに別れた靴ショット。

田口トモロヲ監督
スタイリッシュに遊び心のあるシューズ
大森立嗣監督
ほどよくマスキュリンなブーツ
林家しん平監督
ヴィヴィッドなスニーカーで
 
日本学生映画祭は7月9日に開催
開催日時:7月9日(土)/24:00~29:00(予定)
場所:新宿バルト9
ゲスト: 瀬々敬久監督/ 横浜聡子監督
上映作品:
第23回東京学生映画祭実写部門グランプリ受賞作『デリバリーファッションヘルス』
第23回東京学生映画祭実写部門準グランプリ 受賞作『短編映像作品「死神」』他
詳細は東京学生映画祭公式サイトにて


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取材・文:白玉 撮影:荒木理臣

  • 2011年06月30日更新

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