増田俊樹監督『沈黙の隣人』凱旋上映イベント徹底リポート1
- 2010年05月20日更新
2010年2月、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2010のフォーラムシアター部門におけるオープニング招待作品として、増田俊樹監督の新作『沈黙の隣人』が上映されました。
『沈黙の隣人』は2010年内に劇場公開予定ですが、ひと足もふた足も早く、ファンのみなさまが本作を堪能できる機会が訪れました。【増田俊樹最新作『沈黙の隣人』凱旋上映!! ~バースデー特別企画~ 実話 増田俊樹「その逞しくも儚い人生」】が、2010年5月9日(日)にLoft A(東京)にて開催されたのです。翌日の5月10日は増田監督のお誕生日ということで、おめでたさが2倍のイベントとなりました。
約4時間に渡る贅沢なこのイベントは、「第1部 『沈黙の隣人』凱旋記念バトルトーク ~女優、スタッフ、裏方が暴くその横顔~」、「第2部 『沈黙の隣人』上映」、「第3部 『沈黙の隣人』出演者舞台挨拶~物販+サイン会」の3部構成となっています。
会場には、増田監督と懇意の人々が、総勢11名、駆けつけました。登場順にご紹介しましょう。ライターの安宅白来さん、ジャーナリストの昼間たかしさん、俳優・映画監督の辻岡正人さん、女優の神楽坂恵さん、シンガーソング・ライターの白井蛍さん、女優の白井優さん、ロック・バンド「バードレイクス」のヴォーカル・清野義矢さん、女優の円美穂さん、女優の渋木美沙さん、俳優・詩人の近藤善揮さん、俳優の横川康次さんです。
この記事では第1部の模様をお届けしますが、その前に、増田監督のプロフィールをご紹介しましょう。
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▼増田俊樹監督 プロフィール 1964年5月10日生まれ。愛知県出身。俳優として、映画・テレビ・CM等に出演する傍ら、映画監督・脚本家・プロデューサーとして、幅広く活躍している。脚本を担当した『マラニカ ―堕ちる女―』が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2006のオフシアター部門に入選した。代表監督作は、『トウキョウ・守護天使』、『おやすみアンモナイト 貧乏人抹殺篇/貧乏人逆襲篇』。最新監督作『沈黙の隣人』が、2010年に劇場公開待機中である。 ●所属事務所 公式プロフィール |
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「第1部 『沈黙の隣人』凱旋記念バトルトーク ~女優、スタッフ、裏方が暴くその横顔~」では、壇上にお酒も運ばれて、イベントは和やかな宴席の様相に。登壇者のみなさまが増田監督を囲んでトークを繰り広げつつ、増田監督がこれまでに関わってきた映像作品が紹介されました。
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『完全ナンパ実践講座 ネットナンパ編』(2003年) 増田監督が初めて、映像制作にプロデューサーとして関わった作品です。 増田監督 「このDVDを観てインターネットで女性をナンパしたら、必ず成功する」と安易な企画を立てたんですけど、これがまた、全然売れなくて(苦笑)。 |
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『マラニカ ―堕ちる女―』(2005年) 樋永真一郎脚本・監督作品。増田監督は共同脚本と出演を務めています。本作は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2006のオフシアター部門に入選しました。 増田監督 『泳げない女』で撮影を担当した樋永真一郎さんが、とても才能のあるかたなので、「この人の監督作で1本やろう」ということでできたのが本作です。 |
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『トウキョウ・守護天使』(2007年) 増田俊樹監督作品。主演は神楽坂恵さん。神楽坂さんは、ムーンストーン創設時から所属している女優で、増田監督の作品の常連です。 増田監督 この頃、神楽坂さんが、めきめきと頭角を現してきたので、「では、神楽坂さんの主演で1本撮ろう」ということで、本作を作りました。 |
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『窓辺のほんきーとんく』(2008年) 堀井彩監督作品。増田監督はプロデューサーと出演を務めています。辻岡正人さんと吉沢明歩さんの共演が話題になった、青春ラヴ・ストーリーです。 増田監督 辻岡さんとは、お互い俳優同士なので喧嘩もするんですけど、辻岡さんも「自ら作品をプロデュースして、出資元を見つけて」という、僕と同じやりかたをしている人なので、まるで兄弟分のようで、かわいくてしかたないんです。 |
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『おやすみアンモナイト 貧乏人抹殺篇/貧乏人逆襲篇』(2009年)
●公式サイト
増田俊樹監督作品。主演は、辻岡正人さんと疋田紗也さん。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009のフォーラムシアター部門で上映され、2010年1月30日よりユーロスペース(東京)にて公開されました。更に、2010年5月29日からシネ・ヌーヴォX(大阪)にて、同6月26日から横川シネマ(広島)にて、それぞれ公開が決定しています。
増田監督 辻岡さんが主演に決定したのは、クランク・インのわずか10日前でしたが、彼はそのたった10日間で、(主人公のモデルである活動家の)松本哉さんになりきっていました。とんでもない俳優です。
『桃色のジャンヌ・ダルク』(2009年)
●公式サイト
鵜飼邦彦監督作品。新進気鋭のアーティスト・増山麗奈さんを題材にしたドキュメンタリーです。増田監督は撮影を務め、再現ドラマ部分に俳優として出演もしています。2010年3月27日よりユーロスペース(東京)にて公開されました。更に、2010年6月5日よりアップリンクX(東京)にて、同5月29日から第七藝術劇場(大阪)にて、それぞれ公開が決定しています。
増田監督 本作の再現ドラマ部分には神楽坂さんも出演していて、彼女は増山麗奈さん役を演じています。撮影現場に来た神楽坂さんは、増山さん本人か、というほど役作りをしっかりしていて、スタッフはみんな、腰を抜かしそうになりました。
さて、この日のメインはもちろん、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2010で好評を博した『沈黙の隣人』です。「あなたの隣に棲んでいるかもしれない、現実社会のどこにでも存在する日陰者」 ― そんな犯罪者たちを描いた物語です。
イベントの第2部にあたる『沈黙の隣人』の上映に移る前に、本作の出演者が登壇して、増田監督を囲みながら、ご自身の演じた役、本作の見どころ、そして、お誕生日を迎える増田監督の人となりについて語りました。
円美穂さん 増田監督が演じた主人公・万田幸吉の妻、広美を演じました。娘のいる母親役だったので、撮影中は黒髪のショート・カットにして、「お母さん」に見えるように、一生懸命、頑張りました。
女性の強さを感じる作品です。「こんな強い女性になりたい」、「こんなふうに家庭を守りたい」と、本作に出演して、とても勉強になりました。観てくださるみなさまにとって、明日への一歩につながる作品になってくれれば嬉しいです。
増田監督と初めてお会いした頃は、私のことを憶えてもらおうと必死だったのと同時に、(増田監督が)恐くて近寄れない、という感じもありました。でも、あるとき、増田監督にバス停まで送っていただいたんですけど、「それに乗らないと、私は間に合わない」というバスが発車してしまったんです。そうしたら、増田監督は信号を越えて思いきり走って、バスを停めてくれました。そのときに、「この人、すごい。優しい人だな」と思ったんです。
渋木美沙さん メインの男性キャラクターが3人いるのですが、そのひとりの恋人役を演じました。熱く演じたので、注目して観てください。
増田監督の作品はリアルで、本作も、共感する部分もあれば、考えさせられる部分もあって、とても楽しめると思います。
普段の増田監督は、冗談ばかり言ってくれて、とてもおもしろいんですけど、撮影の本番になると、スイッチが切り替わって本気になって、演技についても優しく丁寧に教えてくれます。安心して、これからもずっとついていきたい、と思っています。
白井優さん 喫茶店の看板娘を演じました。インパクトの強い、ずばずばとものを言う女の子の役です。
本作には、ずしっとくる重いシーンが多いかと思いますが、私が出演しているシーンは、気分を変えて明るい気持ちで観ていただけると思います。
増田監督のことは、初めはすごく恐いかたなのかと思ったんですけど、全然そんなことはなくて、いつも現場を明るくしてくださるので、とても安心します。
近藤善揮さん 僕の役は……、ネタバレになるので。
増田監督とは、歳も近いので。やたらと温泉に行きたがる人です。ふたりで毎週のように、銭湯へ行っています。
本作に関しましては、形而上学的にいうと、見られているのか見ているのか、どちらかの視点です。だから、常に死生観と隣りあわせであって、『沈黙の隣人』というタイトル通り、すべてが二面性を持って進んでいくのが世の中ではないのか、ということです。
第1部の締めくくりに、増田監督ご自身が、「『沈黙の隣人』で、最も伝えたかったこと」を語りました。
増田監督 この作品は、僕の友達が亡くなって、その追悼映画として作りました。
人間は、いろいろなものを失っていきます。寿命は短いので、長く生きたら死んでしまいますし、もっと早く死ぬ人もいます。
本作では、犯罪者を描いているので、逮捕されたり、権力に逆らって暴力をふるわれたり、ましてや、死んだりしたときに、大切なのは、自分の恋人や家族を守ることです。「自分が死んでも、子供や妻が生きていてくれたら」というメッセージを伝えるのに、愛情と性は避けて通れないものであると思っています。
『沈黙の隣人』が上映されたあとには、イベントの第3部として、本作の出演者による舞台挨拶とサイン会がおこなわれました。その模様は、《増田俊樹監督『沈黙の隣人』凱旋上映イベント徹底リポート2》にて、お楽しみください。
取材・編集・文:香ん乃 スチール撮影・編集:南野こずえ
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増田監督へ、歌のプレゼントもありました! | ||
白井蛍さん | 白井優さん&白井蛍さん | 清野義矢さん |
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