『孤独のススメ』- すべて失った男が“何も持たない男”にもらった大切なものとは?
- 2016年04月09日更新
主人公は孤独な生活を送る真面目な男フレッド。そんな彼の人生が、言葉も過去もない男テオとの奇妙な出会いによって開かれていく。とぼけた笑いとしんみりした感動を与えてくれるオランダ発の人間ドラマ。
物語は静かなトーンで始まるが、いくつかのエピソードを絡ませながら終盤に向けて徐々に感動が高まり、クライマックスでそれが最高潮に達する。この興奮、ぜひ映画館で味わってほしい!
ルールに縛られた人生に、謎の男が風穴を開ける
オランダの田舎町に暮らすフレッドは、妻に先立たれ、単調な毎日を送っている。日曜日に教会に行く以外は人付き合いもほとんどない生活だ。そんな彼のもとに、ある日突然言葉も十分に話せず、どこから来たかもわからない中年男テオが現れる。なぜか猫のように居ついてしまったテオと、一緒に暮らすことになったフレッド。何とも奇妙な共同生活だったが、ルールに縛られ味気なかったフレッドの生活が少しづつざわめき始め、それまで経験しなかった新たな世界が開かれていく。
人生はいつでも変えられる!
髪の毛をきっちり分け、毎日時間通りに同じことを繰り返すフレッドの毎日は、窮屈な“しがらみ”でがんじがらめだ。敬虔なクリスチャンである彼は、食事前のお祈りをいつも同じ時間に行い、夕食はいつも同じメニュー。だが、“しがらみ”などまるで持たない(ように見える)テオと一緒にいるうちに、自分がいかに不自由な生活を送っているかに気づくようになる。
フレッドの変化を象徴するのは、安息日に教会へ向かう人の流れに逆らって、2人が反対方向に向かう場面。しっかり前を見据え凛とした彼の表情は、人生はいくつになっても変えられることを物語る。
心が揺さぶられる圧巻のシーン
また彼は、たとえ周囲の人が理解してくれなくても、大切にすべきものは何なのかということと、自分の心に素直になるべきだということにも気づく。そして、「人生のやり直し」を賭けて、彼はある人物のところに赴くが、果たしてその結果は……。
それにしても気にかかるのは、子供のように無垢なテオの存在だ(この表現はあまり適切でないかもしれない)。彼に関わる謎もストーリーを引っ張っていく。
最大の見せ場は、フレッドの思い出の場所マッターホルンの映像と、ある人物が歌う、歌詞が印象的な「This is my life」が交錯するシーンだろう。この高揚感は言葉では言い表せない。クールダウンするには、少し時間がかかりそうだ。
▼『孤独のススメ』作品・公開情報
2013年/オランダ映画/86分/カラー
監督・脚本:ディーデリク・エビンゲ
出演:トン・カス、ルネ・ファント・ホフ、ポーギー・フランセン・アリアーヌ・シュルター
配給:アルバトロス・フィルム
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2016年4月9日(土)、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
- 2016年04月09日更新
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