2年に1回くらいは童貞役をやって初心に返りたい—『鬼灯さん家のアネキ』 主演・前野朋哉さんインタビュー
- 2014年09月06日更新
五十嵐藍氏による同名コミックを実写映画化した、今泉力哉監督の新作『鬼灯さん家のアネキ』が2014年9月6日より東京・新宿武蔵野館ほか全国順次公開となる。
血の繋がらない姉のエッチないたずらに振り回される男子高校生と周囲の人々が織りなすドタバタ劇は、人を愛する切なさと苦しみを今泉監督流のユーモアと優しさで包み込んだハートフルなコメディ作品だ。
主人公の吾朗を演じるのは、自身も監督として活動しながら、今や日本映画に欠かせない存在となった前野朋哉さん。そんな前野さんに、本作の魅力と撮影の裏話をたっぷりと語っていただいた。撮影場所となった新宿武蔵野館の会議室では、昭和の香りが残るインテリアの前でユニークにポーズを決めてくれた前野さん。とびっきり魅力的なその素顔にもご注目を!
【取材:min インタビュー撮影:ハルプードル】
童貞役だし(笑)、あまり違和感なく吾朗役に入っていけました
— 本作にご出演が決まった時の感想を教えてください。
前野朋哉さん(以下、前野):台本をいただく前に原作漫画を読んだのですが、漫画の吾朗は背が高くてけっこうイケメンなんですよ。この役が僕にきたってことに、まず興味を持ちました(笑)。実際、上がってきた台本にはイケメンっていう設定は一切なかったですけど。
— あはは。たしかに、吾朗もハルも原作のキャラクターと見た目のイメージはちょっと違いますよね。今泉作品らしい味のあるキャラクターに生まれ変わったなという印象がありましたけど、実際に演じられてみていかがでしたか?
前野:撮影に入る前に、一度リハーサルを行ったんですが、今泉監督はそれぞれのキャラクターというよりも、僕や谷桃子さん、佐藤かよさんとかのバランスを見ていたんじゃないかなと思います。吾朗役に関しては、以前に今泉監督の『終わってる』(2011)という作品で演じたのが童貞役だったので、今回も童貞役だし(笑)、あまり違和感なく入っていけました。
— 童貞で詰め襟って、イメージありますよね。まさにハマり役だと思います……良い意味で(笑)!
前野:たしかに、多いんです。詰め襟は、さすがにもう似合っているのかどうか分からないですけど、こうなったら着られるところまで着たいですよね(笑)。
皆が谷さんの存在に相当助けられていたと思います
— 今回、谷さんや佐藤さんとは初共演になると思いますが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
前野:撮影現場はすごく楽しかったです。今泉監督をはじめ、スタッフも知っている方が多かったのであまり緊張せずにいられたし、谷さんも佐藤さんもめちゃくちゃ明るくて、現場のムードメーカーでした。特に、谷さんとは部屋の中の撮影が多くて、ずっと狭い空間にいたんですが、僕もスタッフも皆が谷さんの存在に相当助けられていたと思います。時々、変なところでスイッチが入って笑い転げていたり、とにかく見ていて楽しい人というか。佐藤さんは、とにかくきれいでした。
— 前野さんのご趣味はグラビア鑑賞ということですが、今回は谷さん、川村ゆきえさんと、グラビア界が生んだ至宝ともいうべき顔ぶれとご一緒ですよね!
前野:そうなんですよ! 最近はあまりグラビアを見ていないですけど、中高大と学生の時はめちゃめちゃ見ていました。……これ、言っていいのか分からないけど、実は、今回の映画で実姉役だった川村さんは、まさにドンピシャ世代なんですよ(笑)! 大学時代に、川村さんが表紙を飾った雑誌を初めて見た時の衝撃は、いまだに忘れられないなぁ。大学近くのコンビニで、あれはたしか夏だったっけ……(遠い目)。
— 前野さん、戻ってきてください(笑)。今作では、谷さんが目の前でかなり肌を露出されていたわけですが……。ど、どんな思いでご一緒されていたんですか……(どきどき)。
前野:いやいやいや! さすがに撮影現場なので変な興奮はしなかったですよ(笑)! 監督もスタッフも肌の露出具合にはすごくこだわっていて。見せ過ぎても、見せなさ過ぎてもダメだし、動きもかなり綿密に決めていたので、その辺はさすがだなぁと感心して見ていました。……って、かっこよく言い過ぎたかもしれない(笑)。いやでも、意外と冷静でした。
楽しいという入り口でやってきたけど
それだけというわけにはいかなくなってきた
— 監督としてもご活躍をされていますが、そもそもは、映画監督志望でいらしたんですよね?
前野:そうですね。もともとは映画監督になりたくて、大阪芸術大学で映像の勉強をしていたんです。俳優になることは全然考えていなかったですけど、自分の作品を撮る時にキャストが集まらなくて自分で出演したり、大学の先輩である石井裕也監督や映画仲間の作品を手伝いながら、ちょこちょこ出させてもらったりはしていました。人の現場に行くのが楽しかったし、遊びの感覚でやっていた感じです。それを、続けてきた延長に今があります。
― 今泉監督とも、大学生時代にお知り合いになったんですか?
前野:はい。大学時代に、京都国際学生映画祭やCO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)などに自分の作品を出していたんですけど、そこでよく一緒になっていたのが今泉監督の奥さんであるかおりさんで、かおりさんが紹介してくれたのが最初のきっかけでした。そこから、映画に出演させてもらったり、飲みに行ったりするようになった感じです。
― 今や、俳優として日本映画やドラマに引っ張りだこの前野さんですが、どこかの時点で本格的にお芝居の方もやっていこうという意識が芽生えたのですか?
前野:うーん。そこは今、悩んでいる部分でもあって……これまでは楽しいという入り口でやってきましたけど、さすがにそれだけというわけにはいかなくなってきた感じはあります。俳優をやらせていただけるのはありがたいことですし、何かしら意識を変革していかなければと思ってはいます。監督業とのバランスをどう取って、自分を表現していくかとか。
— 個人的には監督としての作品もたくさん拝見したいです。最近の前野さんの作品では、NHKの番組『青山ワンセグ開発』の中で制作されたコメディドラマ『ねんりき!北石器山高校超能力研究部』 (以下、『ねんりき!』)にすっかりハマりまして。原作のチョイスといい、橋本愛さんの怪演といい、たまらなかったですね。
前野:ありがとうございます。『ねんりき!』は大橋裕之さんの漫画(『シティライツ』)が原作なんですけど、大橋さんの作品はもともとすごく好きなんですよ。橋本愛さんの役に関しては、本人が作ってきた部分が大きくて、むしろ僕やスタッフの方が「橋本さんにここまでやらせていいのかな?」って戸惑ったくらい(笑)。
― 原作漫画に出てくる「ゲボ野郎」ってセリフ、『ねんりき!』にも、今回の映画にも出てきますよね。
前野:ああ、そうですよね! 今泉監督も大橋さんの漫画が好きで、実は『終わってる』の前に大橋さん原作の短編を撮りたいから、実現したら出てよって言われていたんです。結局は撮影に至らなかったんですが。僕自身は、普段おとなしい人が唐突にありえない暴言を吐く感じとかがおもしろくて使ったセリフですね。
― 今泉監督の作品に前野さんが演じるキャラクターがハマるのも、お二人の笑いの感覚が、どこか似ているからじゃないかなって勝手に思っているんですが。
前野:自分がハマっているかどうかは考えたことはなかったですけど。感覚的には似ているところがあるのかもしれませんね。掘り下げて話したことはないですけど、多分好きな作品とかも似ていると思うし、今泉監督が現場で話すことも理解できるんですよね。
作品の魅力イコール今泉監督自身の魅力なんだと思います
前野:今泉さんって、弱音もちゃんと吐くし隠し事がないイメージなんですよ。作品に出てくるキャラクターも、全部が今泉監督というか。今泉ワールドが作品として全面に出ている印象があって、作品の魅力イコール監督自身の魅力なんだと思います。あとは、もしかしたら女性に対するコンプレックスからなのか(笑)、きれいな女性がいっぱい出てくる。ある意味、映画をうまく使っている。うらやましいっすよね(笑)。
— ははは。ぜひ、前野さんにも、これからも良いスタンスで俳優業も監督業も両方やっていってほしいです。
前野:そうできるようにしたいです。俳優としても、2年に1回くらいは童貞役をやって常に初心に返れるようにしたいですね(笑)。
— ぜひとも! 童貞役の前野さん、これからも楽しみにしています(笑)! 最後に、これから本作をご覧になる方にメッセージをお願いします!
前野:前半は笑えるシーンもたくさんあって楽しく観ていただけると思いますし、登場人物ぞれぞれの思いが交差していく後半がこの作品の肝でもあると思うので、ぜひ最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。あとは、僕の詰め襟姿がイケているのかどうか、ジャッジしてください(笑)。まぁ、イケてなかったって言われてもまた着ますけどね(笑)。
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▼『鬼灯さん家のアネキ』作品・公開情報
(2014年/日本/118分/PG12)
原作:五十嵐藍 『鬼灯さん家のアネキ』(角川書店)
監督・編集:今泉力哉
脚本:片岡翔、今泉力哉
音楽:曽我淳一(トルネード竜巻)
主題歌:浜崎貴司「家族」(スピードスターレコーズ)
出演:谷桃子、前野朋哉、佐藤かよ、川村ゆきえ、古崎瞳、水澤紳吾、モト冬樹ほか
配給:KADOKAWA、SPOTTED PRODUCTIONS
©2014「鬼灯さん家のアネキ」製作委員会
【ストーリー】
母を亡くした童貞男子高校生・鬼灯吾朗(前野朋哉)は、母の再婚相手の娘で血の繋がらない姉・ハル(谷桃子)と二人暮らし。セクシーでキュートなハルは、毎日エッチないたずらと過剰なスキンシップで吾朗を困らせている。でも、本当は吾朗もそんなハルのことが大好き。ハチャメチャながらも幸せな日常を送る二人だが、そんな二人の関係を、吾朗の同級生である水野(佐藤かよ)は怪訝に思い……。
※2014年9月6日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
- 2014年09月06日更新
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