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『呼ばれて行く国インド』-バックパッカーの目線でインドの魅力を伝えるヴァーチャルドキュメンタリー。
- 2012年05月30日更新
バックパッカーとして多くの国を訪れている在日3世のキム・スンヨン監督が、ハンディカメラを片手に、不思議の国インドを旅する。歴史を物語る壮大な遺跡、悠々と流れるガンジス川、活気あふれる街、根強く残る貧困とスラムなど、インドの多面的な魅力と社会的現状を旅人の目線で撮影したヴァーチャルドキュメンタリー。
インドという国、そしてここに住む人々に対して、常に温かい眼差しを注ぐキム監督。親切だが怪しげなガイドにテロップでユーモラスな突っ込みを入れたり、オートリキシャの値段交渉を勝負感覚で楽しんだり、被写体のほとんどをポジティブにとらえた映像が、適度にゆるく心地よく流れていく。時に貧困などインドの負の側面をとらえるが、旅人の立場を超える追求はしない。監督がこの作品の制作理由を「インドへ行ったことがない人に本当のインドを伝えたい」とブログに綴っている通り、ガイドブックやツアーではわからない、猥雑で活気あふれるインドのありのままの姿がスクリーンに広がる。
比類なき混沌とパワーに圧倒される
作品中「日本人はインドの混沌に驚き、インド人は日本の秩序に驚く」というテロップが流れるが、おそらくこれには多くの人々が納得することだろう。ガンジス川を流れる死体の近くで無邪気に遊ぶ子供、沐浴や洗濯をする人々。街では、車、自転車、バイクで混雑する砂埃舞う道路の中央にウシが悠然と横たわる。日本人が驚く(であろう)エピソードを数え上げるときりがない。中でも、カーリーといういくつもの生首を身に付けた戦いの女神の祭りは圧巻。監督でさえその迫力にエネルギー当たりしてしまう。
前述した監督の温かさは、インド人だけでなく道中出会う日本人にも向けられる。穏やかな関西弁での取材、そして励ましの言葉に、ほっとした表情になる旅行者や居住者の表情が印象的だ。マザーテレサが設立した「死を待つ人々の家」のボランティアの女性や青年、バックパッカー向けホテルを経営する久美子さん。画面には映らない苦労はあるだろうが、充実感がみなぎる顔はどれも美しい。
自分の目でインドの魅力を確かめてみよう
まるで自分がインドを訪れているかのような疑似体験ができる75分。はかりしれないインドの魅力を教えてくれる本作は、好奇心の扉を開いてくれるきっかけとなるはずだ。この国はカオスが生み出すパワーが途轍もなく大きいので、旅人はそれを自分の力にできるか、逆に力を吸い取られてしまうかのどちらかにに分かれるらしい。もうこれは行って確かめてみるしかない。
▼『呼ばれて行く国インド』作品・公開情報
2012年/日本/75分
監督・撮影・編集:キム・スンヨン『Tibet Tibet』『雲南Colorfree』『ククル~UAやんばるLIVE~』
●監督ブログ
※6月2日(土)渋谷アップリンク、レイトショーにて公開!
文:吉永くま
- 2012年05月30日更新
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