【第37回東京国際映画祭 クロージングセレモニー】吉田大八監督×長塚京三主演『敵』が東京グランプリ含む3冠受賞の快挙!
- 2024年11月07日更新
2024年10月28日(月)から10日間にわたり開催された「第37回東京国際映画祭」のクロージングセレモニーが、11月6日(水)にTOHO シネマズ日比谷で開催され、コンペティション部門とアジアの未来部門ほか各賞の発表と表彰式が行われた。
「東京から映画の可能性を発信し、多様な世界との交流に貢献する」というミッションを掲げ、今年は208本の映画を上映、61,500人以上の上映動員数を記録した本映画祭。審査委員長のトニー・レオン氏をはじめ、世界各国から監督、俳優、プロデューサー、映画祭プログラマーや映画を学ぶ学生など多種多様なゲストが参加し、日本映画界との交流を図った。
コンペティション部門 受賞結果
コンペティション部門は、審査委員長のトニー・レオン氏(俳優)、エニェディ・イルディコー氏(映画監督)、橋本愛氏(俳優)、キアラ・マストロヤンニ氏(俳優)、ジョニー・トー氏(映画監督、プロデューサー)という豪華な顔ぶれの国際審査委員5名によって選出。観客賞はコンペティション上映の15作品を対象に一般観客の投票を募り、もっとも多くの支持を得た一作品が表彰された。
👑東京グランプリ/東京都知事賞
『敵』(日本)
東京グランプリ/東京都知事賞に輝いたのは、筒井康隆原作を吉田大八監督が長塚京三氏主演で映画化した『敵』。日本映画がグランプリに選ばれたのは、第18回(2005年)の根岸吉太郎監督『
【受賞コメント】吉田大八監督 審査員の皆さま、ありがとうございます。10日間映画祭を支えたスタッフの皆さまもありがとうございます。私自身もこの映画祭で多くの映画を観ることができました。味方は意外と多いことに気づけて良かったです。僕も長塚さんも皆さんの敵であり、味方でいたいと思います。これからも映画をよろしくお願いします。
【審査委員講評】トニー・レオン審査委員長
本当に心打たれる素晴らしい映画です。ユーモアのセンス、
【小池百合子東京都知事 コメント(松本明子副都知事代読)】
吉田大八監督を含め、受賞者の皆様おめでとうございます。毎年数多くの新しい才能が東京か生まれ、世界に羽ばたいてくれることを大変うれしく思っております。映画は人々の心に潤いをもたらします。世界がいくつもの困難に見舞われておりますが、映画の魅力を発信することで素晴らしい未来につながること期待しています。
【写真】上:都知事に代わりコメントを代読した松本明子副都知事と吉田大八監督、長塚京三氏。 下:感無量といった表情でトロフィーを掲げる吉田監督。
👑最優秀男優賞
長塚京三氏/『敵』(日本)
【受賞コメント】ちょっとビックリして、まごまごしています。『敵』
【審査委員講評】トニー・レオン審査委員長
スクリーンに登場したその瞬間から、その深みと迫真性で私たちを魅了しました。
【写真】左:スラリとした立ち姿と眼力でオーラを放っていた長塚京三氏。 右:トニー・レオン審査委員長と長塚氏。
👑最優秀監督賞
吉田大八監督/『敵』(日本)
【受賞コメント】この小さな映画を誕生から旅立ちまで見届けてくれてスタッフや俳
【審査委員講評】ジョニー・トー氏
この映画の監督はあらゆる視覚的要素を描きながらある老人を表現
【写真】左:「いい映画になったことは確かです」自信をみせた吉田大八監督。 右:ジョニー・トー審査委員から満面の笑顔で祝福を受ける吉田監督。
▼『敵』
(108分/2023年/Teki Cometh)
監督・脚本:吉田大八
原作:筒井康隆
出演:長塚京三、瀧内公美、黒沢あすか、河合優実松尾諭、松尾貴史
<STORY>渡辺儀助、77歳。大学教授の職を辞して10年――妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋に暮らしている。料理は自分でつくり、晩酌を楽しみ、友人たちとは疎遠になったが、時には教え子を招いてディナーを振る舞う。預貯金があと何年持つか、すなわち自身があと何年生きられるかを計算しながら、来るべき日に向かって日常は完璧に平和に過ぎていく。遺言書も書いてある。もうやり残したことはない。だがそんなある日、パソコンの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくる。
ⓒ1998 筒井康隆/新潮社©2023 TEKINOMIKATA
👑審査委員特別賞
『アディオス・アミーゴ』(コロンビア)
【受賞コメント】イバン・D・ガオナ監督 素晴らしい賞をありがとうございました。私たちは世界一周するほど遠いコロンビアから来ました。東京国際映画祭の皆さま、光栄です。本当にありがとうございます。
【審査委員講評】橋本愛氏
内戦末期のコロンビアを舞台に、深刻さの中にもユーモラスがあふれていました。個人的には、最初の虹のシーンは映画史に残る伝説的なシーンだと思いました。
【写真】左:イバン・D・ガオナ監督。渡航に3日かけて本映画祭に参加。 右:橋本愛審査委員、プロデューサーのモニカ・フアニタ・エルナンデス・ドゥキーノ氏、イバン・D・ガオナ監督、俳優のヨハニニ・スアレス氏、ウィリントン・ゴルディジョ・ドゥアルテ氏。
(118分/2024年/Adios Amigo)
監督/脚本:イバン・D・ガオナ
出演:ウィリンㇳン・ゴルディジョ・ドゥアルテ、クリスティアン・エルナンデス、マリナ・オラルテ
<STORY>コロンビアで3年間にわたって続いた内戦「千日戦争」末期の1902年。革命軍兵士のアルフレッドは、内戦に加わって消息を絶っている兄に子どもができたことを伝えるため、サンタンデール州のチカモチャ渓谷に赴く。アルフレドは渓谷で偶然出会ったアマチュア写真家ベニートと行動をともにする。ベニートも自分の父親を殺した男を探して旅していたのだった。それぞれの目的のために旅をするふたりの前に、次々と怪しい人物たちが現れる……。
👑最優秀女優賞
アナマリア・ヴァルトロメイ氏
『トラフィック』(ルーマニア/ベルギー/オランダ)
【受賞コメント(ビデオ)】なんという驚きでしょう。
【審査委員講評】キアラ・マストロヤンニ氏
彼女の映画への力強い解釈に、
【写真】左:ビデオメッセージで受賞の感激を語るアナマリア・ヴァルトロメイ氏。 右:代理でトロフィーを受け取ったテオドラ・アナ・ミハイ監督とキアラ・マストロヤンニ審査委員。
(119分/2024年/Traffic [Reostat])
監督:テオドラ・アナ・ミハイ
脚本:クリスティアン・ムンジウ
出演:アナマリア・ヴァルトロメイ、イオヌツ・ニクラエ、ラレシュ・アンドリッチ、トーマス・リケワート、アリス・ベアトリス・ムニョス・ミハイ
<STORY>若いルーマニア人夫婦のナタリアとジネルは、より良い生活を求めて西欧に移住するが、その夢は厳しい現実の前に破れる。困窮生活のなか、ふたりは美術館の絵画を強盗する企みに加担することになる……。2012年にオランダのロッテルダムで起きた美術品窃盗事件に基づき、西欧と東欧との経済格差の問題に切り込んだ作品。
2024 © MINDSET PRODUCTIONS – LUNANIME – LES FILMS DU FLEUVE – BASTIDE FILMS – FILMGATE FILMS – FILM I VÄST – AVANPOST MEDIA – MOBRA FILMS.
👑最優秀芸術貢献賞
『わが友アンドレ』(中国)
【受賞コメント】ドン・ズージェン監督 この場を借りてこの作品に関わったスタッフの皆さんに心から感謝を申し上げたいです。この映画は私の(監督)デビュー作ですが、周りの友人たちとともに作り上げました。劇中に大雪の場面があったと思いますが、私の心の中の悩みや暗い気持ちを覆ってしまうような気がしていました。しかし、雪はいつか溶けて太陽があらわれる。希望に満ちているんです。これからも努力していい映画を作っていきたいと思います。
【審査委員講評】エニェディ・イルディゴー氏
現実を強烈な内なる風景へと変える、大胆なビジョンを見せてくれました。
【写真】左:監督デビュー作で見事に受賞したドン・ズージェン氏は1993年北京生まれ。俳優としてはすでにベテランとして活躍している。 右:エニェディ・イルディゴー審査委員とドン監督。
▼『わが友アンドレ』
(111分/2024年/My Friend An Delie [我的朋友安德烈])
監督/脚本:ドン・ズージェン
脚本:ジャン・ウェイジョン出演:リウ・ハオラン出演:ドン・ズージェン、チー・シンカイ、ハン・ハオリン、イン・タオ、ドン・バオシー
<STORY>父の葬儀のため中国東北部の故郷の街に向かったリーは、中学卒業以来会っていなかった友人アンドレが同じ飛行機に乗っているのに気づく。だが、アンドレはリーのことを知らないと言い張る。この奇妙な再会をきっかけに、リーの少年時代の記憶がよみがえる……。リー役を演じるのは人気俳優リウ・ハオラン。
©Huace Pictures & Nineteen Pictures
👑観客賞
『小さな私』(中国)
【受賞コメント】ヤン・リーナー監督 この映画の持つ物語が最終的に皆さんの心に刺さることがあればいいなと思います。皆さんの映画に対する愛に感謝します。この作品は障害を持つ青年の成長を描いた作品ですが、主人公は普通の人間です。映画の製作に関わったすべてのクリエイターに感謝したいです。
【写真】左:フィクションとドキュメンタリー双方で活躍するヤン・リーナーの監督。 右:安藤裕康チェアマンとヤン監督。
アジアの未来部門ほか 受賞結果
👑アジアの未来 作品賞
『昼のアポロン 夜のアテネ』(トルコ)
🎬アジアの未来部門作品一覧
アジアの未来部門は長編映画3作目までのアジアの新鋭監督作品を対象とし、ニア・ディナタ氏(監督/プロデューサー/脚本家)、山下宏洋氏(イメージフォーラム・フェスティバル ディレクター)、横浜聡子氏(映画監督)の3名の審査委員によって入選作10本の中から決定された。
【受賞コメント】エミネ・ユルドゥルム監督
東京国際映画祭でこのような賞をいただけて、とても光栄です。
【写真】左:トルコ期待の女性監督として注目されるエミネ・ユルドゥルム監督。見事、デビュー作での受賞となった。 右:アジアの未来部門 審査委員の皆さま。
(118分/トルコ/2024年/Apollon by Day Athena by Night [Gündüz Apollon Gece Athena]
)
監督/脚本:エミネ・ユルドゥルム
出演:エズギ・チェリキ、バルシュ・ギョネネン、セレン・ウチェル、ギゼム・ビルゲン、デニズ・テュルカリ、ラーレ・マンスル、ネイラ・カヤバシュ、メリヒ・デュゼンリ
<STORY>自分を捨てた母を捜し求めて古代遺跡が残る地中海沿いの都市シデを訪れたダフネは、革命家、娼婦、巫女といった不思議な人々に出会い、彼らの協力を得て母を見つけようと奮闘する……。
©Rosa Film, Ursula Film
👑黒澤明賞
三宅唱氏(映画監督)
フー・ティエンユー氏(映画監督)
👑エシカル・フィルム賞
『ダホメ』
(ベナン/セネガル/フランス)
監督:マティ・ディオップ
👑特別功労賞
タル・ベーラ氏 (映画監督)
総評&閉会の辞
総評:トニー・レオン審査委員長
東京国際映画祭と審査委員の同志に感謝を伝えます。素晴らしい審査員たちにも感謝します。今回、審査委員長という立場に大変緊張しました。当初は、いい映画に出会えなかったらどうしよう、逆にいい映画ばかりだったらどうしようとハラハラしていました。でも、審査委員全員一致でこの素晴らしい作品を見つけることができました。近い将来、またこの東京国際映画祭に来ることが出来る日を楽しみにしています。
安藤裕康チェアマンによる
スタッフへの謝辞と閉会宣言
ボランティアスタッフを含め、500名以上のスタッフにより運営された本映画祭は無事にフィナーレを迎えた。最後に安藤チェアマンが集まることのできるスタッフを壇上に呼び、感謝の言葉を贈った。続いて、安藤氏の閉会宣言により、第37回東京国際映画
映像で楽しむクロージングセレモニー
東京国際映画祭の公式YouTubeチャンネルでは、クロージングセレモニーのほかにも開催期間中のさまざまなイベントや企画のアーカイブ動画を配信中だ。
▼「第37回東京国際映画祭」開催概要
期間:2024年10月28日(月)~11月6日(水)
主催:公益財団法人ユニジャパン(第37回東京国際映画祭実行委員会)
共催:経済産業省、国際交流基金(アジア文化交流強化事業)、東京都(コンペティション部門、ユース部門、ウィメンズ・エンパワーメント部門)
開催会場:シネスイッチ銀座、丸ノ内TOEI(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、LEXUS MEETS…、東京宝塚劇場(千代田区)ほか
©2024 TIFF
(取材:富田旻)
- 2024年11月07日更新
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