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2024年10月31日更新

11月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ！あなたが観たいのは、どの映画!?

LINE UP
11/1（金）公開『ゴンドラ』
11/1（金）公開『DOG DAYS 君といつまでも』
11/8（金）公開『イル・ポスティーノ 4Kデジタル・リマスター版』
11/8（金）公開『ベルナデット最強のファーストレディ』
11/8（金）公開『ルート29』
11/29（金）公開『オートレーサー森且行約束のオーバル劇場版』

『ゴンドラ』

空中ですれ違うたびに取り交わすささやかな楽しみ

アゼルバイジャンで撮影した『ブラ！ブラ！ブラ！胸いっぱいの愛を』のドイツの個性派、ファイト・ヘルマー監督が次に舞台にしたのは、ジョージアで最も長い距離をつなぐゴンドラだった。山あいのゴンドラの乗務員として働き始めたイヴァは、同僚のニノと空中ですれ違うたびにささやかな楽しみを見いだすようになる。一方がニューヨーク行きの看板を掲げれば、もう一方はスキーリゾートのサンモリッツ行きに装飾。車に船にロケットに、とどんどんエスカレートしていくかと思えば、今度は楽器を持ち込んで眼下の住民を巻き込んだにぎやかな音楽会を繰り広げる。前作同様、せりふを排した自然音と音楽だけの構成で、諧謔味あふれる豊かな物語が紡がれる。偉そうな権力者を愛と笑いでやり込めるなど寓意もはらんでいて、何ともほんわかとした気分に誘われた。（藤井克郎）

2024年11月1日（金）より全国順次公開　公式サイト　予告編動画
（2023年／ドイツ、ジョージア／85分）原題：GONDOLA　監督・脚本：ファイト・ヘルマー　出演：ニニ・ソセリア、マチルド・イルマン、ズカ・パプアシヴィリほか　配給：ムヴィオラ　©VEIT HELMER-FILMPRODUKTION,BERLIN AND NATURA FILM,TBILISI

『DOG DAYS 君といつまでも』

犬たちを巡って複雑に絡み合う人間模様

韓国から犬好きにはたまらないチャーミングなハートフルコメディーがやってくる。１階に動物病院が入るビルのオーナー、ミンサンは犬嫌いで、周辺に犬の糞が転がっているのが耐えられない。院長のジニョンとは口論が絶えないが、有名な建築家のミンソが愛犬の「ワンダ」を診てもらいに動物病院に通っていることを知り、ジニョンが助けた保護犬「車長さん」を預かることにする。携わっているリゾート開発の設計をミンソに依頼したいという下心があったのだ。ほかにも恋人の留守中に愛犬「スティング」の面倒を見ているバンドマンや養子縁組の親子、デリバリーの配達員らを巻き込んで、犬たちを巡る騒動が勃発する。長く助監督を務めてきたキム・ドクミン監督の初長編で、複雑に絡み合う因縁を笑いと涙が交錯する人間ドラマにまとめ上げた。フレンチブルドッグなど芸達者なワンちゃんたちの表情も見逃せない。（藤井克郎）

2024年11月1日（金）より全国順次公開　公式サイト　予告編動画
（2024年／韓国／120分）原題：도그데이즈　監督：キム・ドクミン　出演：ユン・ヨジョン、ユ・ヘジン、キム・ユンジンほか　配給：ギャガ　©2024 CJ ENM Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED

『イル・ポスティーノ 4Kデジタル・リマスター版』

美しい島で紡がれる詩人と郵便配達人の友情

高名な詩人と内気な青年の友情を描いた傑作が、30年を経て胸に響く楽曲とともに４Kデジタル映像で蘇る。1950年代、南イタリア、ナポリの沖合の緑あふれる小島。口下手な青年マリオは、チリから亡命してきた詩人パブロ・ネルーダへ手紙を届ける郵便配達人となる。やがて2人の間に友情が育まれ、マリオは詩に魅入られていく。ある日マリオはバーで働くベアトリーチェに一目ぼれし、ネルーダに相談をするが……。かけがえのない友人との出会いと心の扉を開いてくれた詩は、マリオに皮肉な運命をもたらす。その一方、自分の近くにある美しいもの、大切なものに気づくことの幸せも与える。そうした無情も喜びもすべて、作品に宿る静謐さが包み込み、揺れ動きながら幾重にも重なったこちらの感情を癒してくれた。（吉永くま）

2024年11月8日（金）より全国順次公開　公式サイト　予告編動画
（1994年／イタリア・フランス／109分）原題：Il Postino　監督：マイケル・ラドフォード　出演：マッシモ・トロイージ、フィリップ・ノワレ、マリア・グラツィア・クチノッタほか　配給:セテラ・インターナショナル　©R.T.I. S.p.A. – Rome, Italy, Licensed by Variety Distribution S.r.l – Rome, Italy, All Rights reserved.

『ベルナデット最強のファーストレディ』

大統領を脅かす華麗でユーモラスな“復讐劇”

献身的に尽くしてきた夫に反抗するために、自由に行動し騒動を巻き起こすフランス大統領夫人の姿を描く。“事実を脚色した”作品で、主演はカトリーヌ・ドヌーヴ。夫のジャック・シラクを大統領にするため陰で働いてきたベルナデットは、就任後、夫や広報アシスタントを務める娘から突き放され、居場所を奪われる。だが、「このままでは終われない」と彼女の参謀と共に奮起。メディアを通じて国民の注目を集めることで“復讐計画”を開始する。ないがしろにされた妻が参謀の助けを得て、古い価値観から自分を解放することで、モラハラ夫に逆襲する様子は痛快。だが、根底にある夫への愛がむくわれず、ふとした表情に寂しさを滲ませるベルナデットは、思わず支えたくなるような脆さも持ち合わせる。今や言葉自体が批判の対象になり、時代遅れの感もある「内助の功」。華麗でユーモラスな“復讐劇”は形を変えたそれであり、夫を出し抜く彼女の行動も愛情表現だということに、何ともいえない人間味を感じた。（吉永くま）

2024年11月8日（金）より全国順次公開　公式サイト　予告編動画
（2023年／フランス／93分）原題：Bernadette　監督：レア・ドムナック　出演：カトリーヌ・ドヌーヴ、ドゥニ・ポダリデス、ミシェル・ヴュイエルモーズほか　配給：ファインフィルムズ　©2023 Karé Productions – France 3 Cinéma – Marvelous Productions – Umedia

『ルート29』

めがね女子と野生児が織りなす不思議なロードムービー

評判を呼んだ『こちらあみ子』で長編デビューを飾った森井勇佑監督の第2作は、何ともとぼけた味わいがじわじわと染み入る不思議なロードムービーだ。鳥取で清掃員をしているのり子は、病院で入院患者の女性から「姫路にいる娘を連れてきてほしい」と頼まれる。真に受けたのり子は、清掃会社の車を奪って姫路に向かうが……。野生児そのもののハルを見つけ出し、国道29号を鳥取へと戻る、その二人旅が遭遇する奇妙な出来事がたまらない。3匹目の犬を探す赤い服の女に、さかさまにひっくり返った車に乗ったおじいさん、おじいさんを迎えに来たカヌーの人々、と数々の幻想的な出会いが田舎道の風景を伴って彩り豊かに展開する。何を考えているかわからないめがね女子の主人公を楽し気に怪演する綾瀬はるかに、前作で主役を張った野性味あふれる大沢一菜の2人が醸し出す独特の空気感に浸り切った。（藤井克郎）

『オートレーサー森且行約束のオーバル劇場版』

再起不能と言われた大事故からの克服の日々を追う

人気絶頂期にアイドルグループのSMAPを脱退し、オートレーサーに転身した後もたゆまぬ努力で悲願の日本選手権優勝を果たした森且行。だがそのわずか82日後の2021年1月、レース中に落車し、命が危ぶまれるほどの大けがを負う。再起不能と言われた彼に、再びオートバイを走らせることはできるのか。その苦難の道のりを、本人への密着取材に加え、実兄や同期レーサー、担当医らへのインタビューを交えてたどる。決して恵まれてはいなかった生い立ちから、幼いころからのオートレースへの憧れ、気の遠くなるようなリハビリの日々、とTBSテレビの情報番組でディレクターを務めてきた穂坂友紀監督による優しいまなざしで切り取る。レーサー視点のカメラワークに、250グラムものボルトが埋め込まれていた手術の痕など、さまざまな映像素材を用いながら、感動の押し付けになっていない作りに好感を抱いた。（藤井克郎）

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