【スクリーンの女神たち】『夢半ば』大須みづほさんインタビュー

  • 2022年11月12日更新


“スクリーンで女神のごとく輝く”役者と出演作品の魅力に迫るインタビュー! 今回は2022年11⽉12⽇(⼟)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開の安楽涼監督『夢半ば』でヒロインのみちこを演じた、大須みづほさんにご登場いただきました! 2022年公開映画の出演本数はなんと7本、多くの映画人や映画ファンに愛される大須さんの素顔と、安楽監督が30歳前夜に書き上げた自伝的⻑編作『夢半ば』に出演した覚悟や作品への率直な思いに迫りました。


脚本を最初に読んだときの感想は、「やられた!」

― みちこのすっぴん姿や何気ない日常の姿が、とても自然でかわいらしかったです。

大須みづほ さん(以下、大須):本当ですか? よかった……。すっぴんよりひどい姿をお見せしていますよね(笑)。

― とんでもない! みちこを魅力的と思われる方はきっととても多いと思います。日常のシーンはあまりにも自然で、脚本があったのか、どのように作り上げたのか気になります。

大須:脚本はありました。「私が言ったことそのままじゃん!」というセリフもいっぱいあって、「恥ずかしいな、知られたくなかったな」という気持ちももちろんありましたけど……。

― 安楽さんは丸裸の自分をさらけ出して映画にする方なので、安楽作品に出演する方も、身ぐるみ剥がされてしまう感がありますよね。全裸監督ならぬ、“追いはぎ監督”と呼びたいです(笑)。

大須:本当に(笑)。

― みちことして、ご自身を演じることに戸惑いはなかったですか? 最初に脚本を読んだときは、率直にどう思われましたか。

大須:私は自分をさらけだすつもりはなかったので、「やられた!」と思いました(笑)。今までは安楽さんが自分の人生をさらけ出すだけでしたが、私もいよいよ覚悟を決めなきゃと思いました。

― すぐに受け入れられましたか?

大須:正直、普通のフィクション作品に出たいなーと思いました(笑)。

……きっと「絶対にいや」と言えば、撮らないでくれたと思います。でも、「安楽さんは、撮りたいんだな」と思って、いやとは言えなかったし、この映画には自分にとっても大切なシーンがたくさん描かれていて、やっぱりこれは撮らなきゃなと思い直しました。

― 撮影中に安楽さんとぶつかったりはしましたか?

大須:ぶつかったというか、かなり試行錯誤はしました。実際に自分が言った言葉でも、時間が経って「今は同じにはできないよ」というような意見も言いましたし、安楽さん自身も「同じことを繰り返したいのではなくて、あくまで映画を撮りたい」と言っていましたし。2週間かけてほぼ順撮りで撮影を進めるなかで、「脚本に書いたことはあくまで道筋として、そのときに生まれたものを映画として描こう」という風に落ち着いていきました。

― みちこと安楽がダンスをするシーンがとても好きです。大須さんの好きなシーンや苦戦したシーンを教えてください。

大須:好きなシーンは私もたくさんあるのですが、苦戦したシーンで言うと……寝ているシーンかな。以前、別の作品で死んでしまうシーンを演じたときに、目を閉じていてもまぶたがピクピク動いているって指摘されたんです。また目が動いてしまって寝たふりに見えたらどうしようと思って、撮り終わるたびに「今の大丈夫でした?」って確認していました。

― 本当に寝しなを狙って撮られたのかと思うくらい自然でした。うとうとしながらちょっと口が開いているところなんかもリアルで。

大須:やったー。リアルさが大事な映画だと思ったので、自然に見えるかどうかすごくこだわりました。本当は、私だって口を閉じて寝たかったです……(笑)。

― (……かわいすぎる)←心の声

安楽作品に出ることで、役者としてめちゃくちゃ変われた

― 安楽さんと出会われたのはいつですか。

大須:『恋愛依存症の女』(2018年公開/木村聡志監督)での共演が初対面です。2017年の2月頃ですね。その撮影を通して安楽さんやDEGと仲良くなって、同じ年の秋に『1人のダンス』(2019年公開)に出演させてもらうことになりました。

― それ以来、西葛西三部作(『1人のダンス』『追い⾵』と本作)や片山享さんとの共同監督作『まっぱだか』など、安楽さんと一緒に映画を作りながら、一番近くで見てこられたと思いますが、大須さんから見た安楽さんの変化や成長を教えてください。

大須:私から見ると、全然変わっていないです(笑)。子どもだなと思うことも多いし、友だちが大好きで、映画が大好きで、自分の時間が第一だし。好き嫌いがはっきりしていて、忖度もまったくしないですし。
だけど、客観的に考えると、最初は一人で映画を撮っていたのが、どんどん仲間を増やしていって、いろんな大人とも対等に関われるようになっていって、映画を作り続けて、すごいなと思います。

― 大須さんご自身は、安楽さんから影響を受けて変わられた部分はありますか。

大須:それはめちゃくちゃあります。安楽さんは役者を尊重して柔軟に脚本を変えてくれますし、芝居を第一優先に時間もたっぷりとってくれるんです。すごく贅沢をさせてもらっていると思いますが、そうやって出来上がった作品を観ると、本当に嘘がなくてすごいと思うんです。

映画のお芝居ってどうするのがいいのか今も手探りですが、映画に出始めた頃に安楽さんと出会って、初期の安楽作品から出演させてもらって、おかげさまで度胸がついたというか、自由にやっていいことがわかったというか。この経験がなかったら、脚本と違うセリフを言うとか、思い切った動きをするとか、怖くてできなかったと思います。使うか使わないかは監督に委ねた上で、妥協せずに自分の意見を言おうと思えるようになりました。

― 安楽作品で一緒に映画を作ってきた仲間の影響もありますか?

大須:そうですね。安楽作品は片山享さんをはじめ、撮影(深⾕祐次)や録⾳(坂元就)もほぼ毎回同じスタッフで、彼らと仲良くなっていって作り手側の気持ちが少しずつわかるようになりましたし、それは他の現場でもすごく役に立っています。安楽作品に出ていなければ、自分が見られることばかり意識して、もっと頭でっかちな芝居をしていたかもしれません。自分を映画の一部として、客観的に見られるようになったと思います。

異色の経歴!? サツマイモの遺伝子研究から役者の道へ

― 大学では遺伝子工学を学ばれていたとか。

大須:はい。もともと自然や植物や生物が好きだったのでそういう学部に行って、所属した研究室が代々サツマイモの遺伝子を研究していたので、私もその研究に携わっていました。

― なかなか異色のご経歴ですね。高校ではバンドを組まれていたとか。パートはなんだったのですか?

大須:ベースとボーカルです。歌はそんなにうまくないですけど……。Jロックといいますか、最初はASIAN KUNG-FU GENERATIONやELLEGARDENのコピーをやっていて、そのうちオリジナル曲も作るようになって。中学の同級生たちと組んだ男女混合バンドで、ドラムの子の実家にある倉庫で練習をしていました。

― バンドでステージに立つ姿も見てみたいです! もう音楽活動はしていないのですか?

大須:岐阜の実家に帰ったときにピアノを弾くくらいですね。ピアノは、幼稚園から高校まで習っていたんです。

― わぁ、多才ですね!

大須:そんなことないです。私、運動がまったくできなくて。走るのもめっちゃ遅くて、悲しいです(笑)。

― 運動も得意そうに見えるのに意外です。役者はいつ頃から目指していたのですか?

大須:大学2、3年くらいから周りが就職を意識しだして、自分も将来のことを真剣に考えるようになりました。大学で研究をするのは楽しかったけど、仕事として日々それを繰り返すというのが自分には合っていないように思ったんです。役者という職業に対しての漠然とした憧れは、ずっとあったのだと思います。そんなときにビールのCMを観て、直感的に「これがやってみたい!」と思ったのがきっかけで、本気で考えるようになりました。

― たくさんCMがあるなかで、なぜビールだったのですか?

大須:お酒は強くないですが、ビールが好きなんです(笑)。味も好きですし、白い泡と黄金の液体の黄金比が見た目にも美しいし、飲んだあとの「ぷはーっ」という爽快感にも惹かれます。

― 私もビール党なので、よくわかります(笑)。そこから実際にどんな行動に出たのでしょうか?

大須:周りが就活を始めたときに、私も「役者になろう」と決意しましたが、卒業研究までは大学の勉強もきちんとやろうと思って、就活はせずに大学を卒業してから上京しました。でも、家族や周りの人には恥ずかしさもあって、役者を目指すとは言っていなかったんです。

夢はメジャー作品も含め役者として幅広く活躍すること

― 上京されて、渡辺えりさん主宰の演劇塾に入られたんですよね。

大須:はい。とりあえず、どこかに入らなければと思っていろいろ応募して、受かったのが演劇塾でした。もちろんすぐに舞台に出られるわけではなく、最初はえりさんの付き人をやらせていただいて、裏方として舞台公演のお手伝いなどもしていました。入塾の次の年にようやく舞台に立つことができて、そこで主演をやらせていただいて。それは経験としてすごく大きかったですね。

― 初舞台で主演! さすがですね!

大須:それが……すごく厳しくて、前日まで出させていただけるかわからなかったんです。「こんなんじゃ、明日の舞台に大須を出すかわからない」と言われたりして、まさに崖っぷちでした。なんとか無事に出られて、その公演で初めて親や友人に自分が演技をしているところを見てもらえたんです。

― 今は自主映画を中心にたくさんの作品に出演されて、まさにひっぱりだこの役者さんです。親御さんや地元のご友人も喜ばれているんじゃないですか。

大須:みんなすごく応援してくれていますが、岐阜なので作品を観てもらえる機会はまだまだ少ないんです。

― 周囲の人の応援もふまえて、今後の野望などがあれば教えてください!

大須:自主映画にもたくさん出たいですし、ドラマや商業映画などメジャー作品にも少しずつでいいから出て、岐阜の友人や親やおばあちゃんたちにも自分の演じている姿を観てもらうのが夢です。ビールのCMにも出られたらいいな(笑)!

― これからも、たくさんの作品で大須みづほさんの新たな魅力に出会えるのが楽しみです!

 

プロフィール & 靴チェック

❤️大須みづほ(おおす・みづほ)
1992年2月7日生まれ。岐阜県出身。大学卒業後、上京して渡辺えり主宰の演劇塾に入塾。短編映画『私とわたし』(2016/佃尚能監督)でL.A shorts Awardsの主演女優賞を受賞。2017年に『恋愛依存症の女』(木村聡志監督)で安楽涼と共演したのを機に、『1人のダンス』以降の多くの安楽監督作品に出演。映画を中心に、ドラマ、舞台、CM、MVなど幅広く活躍を続け、2022年は『帰ってきた宮田バスターズ(株) 』(坂田敦哉監督)、『とおいらいめい』(大橋隆行監督)ほか、『夢半ば』含め7本の映画に出演。夢はビールのCMに出ること。趣味は料理、散歩。
💚オフィシャルサイト:https://mizuho-osu.amebaownd.com/


女神の靴チェク
ファッション性を重視しながら、サンダルの快適性とシューズの機能性を融合させた人気シューズブランド、「KEEN」のスニーカーを愛用しているという大須さん。お気に入りポイントは通気性が良いところで、季節問わず履いている一足とのこと♪

 

(取材:富田 旻 インタビュー撮影:ハルプードル)

>安楽涼監督が語る “大須みづほの魅力” と “今の自分”

作 品 概 要

⾜を⽌めた。歩きつづけるために。

▼『夢半ば』
映画『夢半ば』ポスター画像(2022年/135 分/5.1ch/アメリカンビスタ/DCP)
出演:安楽涼、⼤須みづほ、DEG、RYUICHI、⻑尾卓磨、ジジ・ぶぅ、柳⾕⼀成、MEEKAE 、⼤宮将司 、江⽥來花 、ジン クー、⽚⼭享 ほか

監督・脚本:安楽涼
プロデューサー:髭野純 監督補・共同脚本:⽚⼭享
撮影・照明:深⾕祐次 録⾳・MA:坂元就
⾳楽:菅原慎⼀ エンディング曲:RYUICHI「夢半ば」
編集:⼤川景⼦ スチール:杉⽥協⼠ 宣伝デザイン:中村友理⼦ (HOOH)
英訳:服部きえ⼦  助成:⽂化庁「ARTS for the future!」
補助対象事業 製作・制作:すねかじりSTUDIO
配給・宣伝:すねかじりSTUDIO/イハフィルムズ

『夢半ば』公式Twitter

『夢半ば』ポレポレ東中野 公開スケジュール

1112日(土)〜1125日(金) 連日20:20の回

1126日(土)〜122日(金) 連日20:30の回

 

  • 2022年11月12日更新

トラックバックURL:https://mini-theater.com/2022/11/12/55977/trackback/