2月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―

  • 2022年01月31日更新

2月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! あなたが観たいのは、どの映画!?

LINE UP
2/4(金)公開『再会の奈良
2/4(金)公開『鈴木さん
2/11(金・祝)公開『国境の夜想曲
2/11(金・祝)公開『ちょっと思い出しただけ
2/11(金・祝)公開『ロスバンド
2/18(金)公開『ホテルアイリス
2/18(金)公開『マヤの秘密
2/19(土)公開『リング・ワンダリング
2/25(金)公開『愛なのに』
2/25(金)公開『GAGALINE/ガガーリン
2/25(金)公開『ボブという名の猫2 幸せのギフト
2/25(金)公開『焼け跡クロニクル
2/26(土)公開『金の糸
2/26(土)公開『チェチェンへようこそ—ゲイの粛清—


『再会の奈良』

残留孤児だった養女の行方を探す中国のおばあちゃん

前作『ライスフラワーの香り』が2018年の「なら国際映画祭」観客賞を受賞した中国のポンフェイ監督が、同映画祭が企画する映画製作プロジェクトで作り上げた日中合作作品。全編、奈良で撮影されている。日本に住む中国残留孤児2世の初美を訪ねて、父の面倒を見てくれた“おばあちゃん”が来日する。養女として育てた残留孤児の麗華が日本に帰った後、数年前から音信不通になっていて心配だったのだ。初美は元警察官の吉澤の力を借りて麗華の居どころを探すが……。3人の会話はどこかぶっきらぼうでそっけないが、心の奥では互いに信頼していることが伝わってくる。そんな淡々とした交流が、寂れた商店街や緑の山々といった奈良のありふれた風景を背景に、しみじみと語られる。日本文化へのポンフェイ監督の深い敬意が胸に響いた。(藤井克郎)

2022年1月28日(金)より奈良県で先行上映、2月4日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/中国、日本/99分)中題:又見奈良 英題:Tracing Her Shadow 脚本・監督:ポンフェイ 出演:國村隼、ウー・イエンシュー、イン・ズー、永瀬正敏 ほか 配給:ミモザフィルムズ © 2020 “再会の奈良” Beijing Hengye Herdsman Pictures Co., Ltd, Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)


『鈴木さん』

不穏な空気とユーモアで風刺する “美しい国(ディストピア)”

映画『鈴木さん』メイン画像海外でも注目される新進監督・佐々木想が放つ、異色のディストピア映画。主演に人気芸人のいとうあさこを迎え、佃典彦、大方斐紗子、宍戸開ら個性派俳優たちが脇を固める。物語の舞台はとある“美しい国”。国家元首である「カミサマ」を現人神として崇拝し、その思想に従って生きるのが美徳とされる国だ。カミサマ本人は体調を理由に20年以上も人前に出ないが、国民たちは “美しく”加工された肖像画を崇め、同じ理想の元に結束を固めている。そんななか、少子化問題を抱えるある町で、45歳以上の未婚者は市民権を失うという条例が制定された。違反者は町を出るか、入隊して過酷な労働を強いられるかを選ばなければならない。主人公のよしこはグループホームで高齢者の世話をする、未婚の44歳。粛清の日は近い。そんなある日、謎の中年男性がホームに迷いこんでくる……。ユーモアと不穏さを混然とさせ、少子高齢化や情報に翻弄される社会、同調圧力と集団心理など、日本に蔓延するさまざまな問題に切り込む本作。音楽の使い方なども独特で、唯一無二の世界観が否応無しに頭にこびりつく。コロナ禍でますます先行き不安な時代、笑うに笑えないのも本作ならではの味わいだ。(min)

2022年2月4日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/90分/日本)監督・脚本・編集:佐々木想 出演:いとうあさこ、佃典彦、大方斐紗子、保永奈緒、宍戸開 ほか 配給:Incline © 映画「鈴木さん」製作委員会


『国境の夜想曲』

紛争地域に据えたカメラが映し出す日常

余分な説明をつけず、ただ人物や風景を見つめるという手法で世界的に名高いイタリアのドキュメンタリー作家、ジャンフランコ・ロージ監督の新作は、危険な紛争地域にカメラを据えた。訪れたのは、イラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境地帯。3年以上かけて撮影した映像には、静寂に包まれた美しい風景もあれば、遠くでひっきりなしに銃声が聞こえる場所も収められている。小舟に乗った漁師の背後には夕闇の中に油田の炎が赤々と燃え盛り、精神病院では患者たちがテロを非難する演劇の練習に余念がない。女性兵士たちが銃を構える荒野、大量の囚人が収容された監獄など、ぶつ切りに提示された光景から浮かび上がってくるものとは――。大音量の音声も含め、戦争と背中合わせの日常に生きる不安や恐怖が図らずも伝わってくる。(藤井克郎)

2022年2月11日(金・祝)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/イタリア、フランス、ドイツ/104分)原題:NOTTURNO 監督・撮影・音響:ジャンフランコ・ロージ 配給:ビターズ・エンド © 21 UNO FILM / STEMAL ENTERTAINMENT / LES FILMS D’ICI / ARTE FRANCE CINÉMA / Notturno NATION FILMS GмвH / MIZZI STOCK ENTERTAINMENT GвR


『ちょっと思い出しただけ』

二度と戻ることのない、抱きしめたくなる日々の記憶

映画『ちょっと思い出しただけ』メイン画像ジム・ジャームッシュの映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て制作されたクリープハイプの楽曲、「ナイトオンザプラネット」のリリックをモチーフに、松居大悟監督が初のオリジナル・ラブストーリーを紡いだ。かつて恋人同士だった舞台の照明係の照生(池松壮亮)と、タクシードライバーの葉(伊藤沙莉)。今は別の人生を生きる二人が、ふとしたきっかけから共に過ごした時間を “ちょっと思い出して” いく。他愛のないじゃれ合い、愛おしさがこぼれるまなざし、不安から出る子どもじみた悪態……みずみずしく蘇る刹那の連続。二度と戻れないありふれた光景に、胸の奥が甘く痛む。永瀬正敏、國村隼、尾崎世界観、成田凌ほか、豪華キャストが次々と登場するのも見どころだが、やはり主演の二人の演技が抜群に素敵だ。(min)

2022年2月11日(金・祝)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021 年/日本/115分)監督・脚本:松居大悟 出演:池松壮亮、伊藤沙莉、河合優実、大関れいか、屋敷裕政(ニューヨーク)、尾崎世界観 ほか 配給:東京テアトル © 2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

◆オススメ記事
『自分の事ばかりで情けなくなるよ』― 不器用に生きる若者たちと「クリープハイプ」の音楽が共振する異色の青春群像劇


『ロスバンド』

ロック大会を目指す少年少女4人の友情

北欧ノルウェーから、子どもたちが音楽と旅を通して友情と勇気を育むご機嫌なロックンロール・ロードムービーがやってくる。ドラム少年のグリムは、親友でギター兼ボーカルのアクセルとロック大会出場を夢見ていた。問題はアクセルが自分では自覚のない音痴という点だが、グリムが音程補正ソフトで修正したデモ音源で予選を突破する。9歳のチェロ少女、ティルダと、名ドライバーと折り紙つきのマッティンが加わり、4人で大会が開かれるノルウェーの北の果てを目指すが……。グリムがいつアクセルの音痴を指摘するかなど道中に起きるさまざまな出来事を、子ども映画に定評のあるクリスティアン・ロー監督がユーモアを交えつつ、ロックのリズムに乗せて軽快につづる。大人にとっても郷愁をかき立てられて、じんと心に響くこと請け合いだ。(藤井克郎)

2022年2月11日(金・祝)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2018年/ノルウェー、スウェーデン/94分)原題:LOS BANDO 監督:クリスティアン・ロー 出演:ターゲ・ホグネス、ヤコブ・ディールード、ティリル・マリエ・ホイスタ・バルゲル、ヨナス・ホフ・オフテブロー ほか 配給:カルチュアルライフ FILMBIN AS © 2018 ALLE RETTGHETER FORBEHOLDT


『ホテルアイリス』

少女と翻訳家の秘めた交わりを幻想的に描く

中国を拠点に活動する『黒四角』の奥原浩志監督が、小川洋子の小説の舞台を台湾の金門島に据えて映画化した。母親が経営するホテル・アイリスを手伝うマリはある日、女性客に罵声を浴びせる男を目にし、言いようのない魅力を感じる。ロシア文学の翻訳家という男は、小舟で渡った孤島に一人で暮らしていた。求めに応じてその身を委ねるうちに、マリは次第に男のとりこになっていく。原作の官能性をそのままに、マリと翻訳家の情感の交わりが、鏡を駆使した絶妙な構図で美しく描かれる。孤島へと続く砂州に淡い青空など、異国情緒あふれる幻想的な風景も、2人の秘めた物語を濃密に彩る。中でもマリを演じた台湾のモデル、ルシア(陸夏)の謎めいた妖艶さが、作品にさらなる深みをもたらしていた。(藤井克郎)

2022年2月18日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本、台湾/100分)監督・脚色・プロデューサー:奥原浩志 出演:永瀬正敏、ルシア(陸夏)、リー・カンション(李康生)ほか 配給:リアリーライクフィルムズ+長谷工作室 © 長谷工作室


『マヤの秘密』

秘密が秘密を巻き込む息詰まるサスペンス

映画『マヤの秘密』メイン画像ノオミ・ラパスが製作総指揮と主演を務めた、緊迫感あふれるサスペンス。舞台は1950年代後半のアメリカ郊外。ある日街中で男の指笛を聞いたマヤは、その男が戦時中に彼女に暴行して妹を殺したナチスの軍人だと確信する。当時の悪夢が蘇った彼女は、復讐のため男を誘拐し、夫の手を借りて自宅の地下室に監禁するが、彼は「人違いだ」と否定し続ける。扉の向こう側に広がるのは古き良き時代の平和なアメリカ。それとは対照的なマヤの家の暗い地下室では、監禁した男との凄まじい攻防が繰り広げられる。そしてその落差に、日常が崩壊することさえ厭わない、マヤのトラウマの闇の深さを知る。本当に男は悪夢の元凶なのか。秘密が秘密を巻き込んでいく息詰まる展開と、ラパスの悲しみと怒りに満ちた鬼気迫る演技に気圧される。(吉永くま)

2022年2月18日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/アメリカ/97分)原題:The Secrets We Keep  監督・脚本:ユヴァル・アドラー  製作総指揮:ノオミ・ラパス 出演:ノオミ・ラパス、ジョエル・キナマン、クリス・メッシーナ、エイミー・サイメッツ ほか 配給:STAR CHANNEL MOVIES © 2020 TSWK Financing and Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


『リング・ワンダリング』

ニホンオオカミをめぐる時空間を超えた出会い

漫画家を目指す草介は、アルバイト先の工事現場で動物の頭蓋骨のようなものを見つけて持ち帰る。描いている漫画の題材のニホンオオカミかもしれないと考えた草介は、さらに何か埋まっていないかと夜になって再び発掘場所を訪れると、下駄履きの若い女性のミドリと出会う。足をくじいて歩けないという彼女をおぶって家まで届けるが、そこはどこかレトロな写真館だった。草介が描く明治期のオオカミ狩りの漫画と、ミドリの家族と過ごした不思議な一夜、さらに現代の日常風景が絡み合い、幾重にも重層的に物語を編み上げる。『アルビノの木』で耳目を集めた金子雅和監督の長編第2作で、3つの時空間を表現した美術や衣装、撮影などの創意工夫が見事。若手監督としてはかなり野心的な試みにうならされた。(藤井克郎)

2022年2月19日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/103分) 監督・編集・企画・プロデュース:金子雅和 出演:笠松将、阿部純子、長谷川初範 ほか 配給:ムービー・アクト・プロジェクト © 2021 リング・ワンダリング製作委員会


『愛なのに』

監督と脚本の個性がぶつかり合うラブコメディー

『街の上で』の今泉力哉監督と『アルプススタンドのはしの方』の城定秀夫監督が、お互いの脚本を提供し合ってラブストーリーを制作する企画の第1弾。今泉脚本で城定監督が撮ったのは、独身男をめぐって複雑に絡み合う男女関係を描いたコメディーだ。多田が店主を務める古本屋で女子高校生が万引きを働く。岬と名乗る彼女は多田のことが好きで、気を引きたくて万引きをしたという。「結婚してほしい」と迫る岬に戸惑う多田は、かつてのバイト仲間で今も思いを寄せる一花が結婚すると聞いて動揺を隠せなかった。赤みの強いざらついた質感に、愛の核心を突いた名せりふと、監督と脚本の個性が絶妙にぶつかり合う。飄々としながらも場面に応じて喜怒哀楽を表現する多田を演じた瀬戸康史の巧みさもあり、肩の凝らない娯楽作に仕上がっていた。(藤井克郎)

2022年2月25日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/107分/R15+)監督:城定秀夫 出演:瀬戸康史、さとうほなみ、河合優実 ほか 配給:SPOTTED PRODUCTIONS © 2021『愛なのに』フィルムパートナーズ


『GAGALINE/ガガーリン』

消えゆくものへの惜別と暗闇のなかに見える希望

映画『ガガーリン』メイン画像ソ連の宇宙飛行士の名がつけられた、パリ郊外に実在する<ガガーリン>公営住宅。落成式にはガガーリン本人も訪れたという歴史ある国営住宅だ。だが、2024年のパリ五輪と老朽化のため、解体計画が浮上。その住人で宇宙飛行士に憧れる16歳の移民の少年ユーリは、家を出た母との思い出の団地を守ろうと奮闘する。しかし周囲の人々も去ってしまい、一人になった彼が始めたのは、団地を“宇宙船”に改造することだった-。ファンタジーの世界に迷い込んだような“宇宙船”はユーリの唯一の居場所であり、彼の繊細さや孤独を映し出す。そんな生きづらさのなか、恋心を抱くロマの少女とのひと時に喜びを見出す姿が眩しい。本作で描かれるのは消えゆくものへの惜別と、暗闇のなかに見えてくる希望。やがて、物語は思わず息を呑むほど神々しいクライマックスへと向かっていく。レオス・カラックス作品常連のドニ・ラヴァンが特別出演。(吉永くま)

2022年2月25日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/フランス/98分)原題:Gagarin 監督:ファニー・リアタール&ジェレミー・トルイユ 出演:アルセニ・バティリ、リナ・クードリ、ジャミル・マクレイヴン、ドニ・ラヴァンほか 配給:ツイン © 2020 Haut et Court – France 3 CINÉMA


『ボブという名の猫2 幸せのギフト』

都会で這いつくばって生きる“2人”に起こる温かな奇跡

映画『ボブという名の猫2』メイン画像茶トラの野良猫ボブがどん底生活を送る青年ジェームズの運命を変えるという、実話をもとにした映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の続編。ジェームズがベストセラー作家になる前のクリスマス。彼らが出会った後も、路上での演奏と雑誌売りで生計を立てる厳しい生活は続いていた。そんななか、彼らに最大の危機が訪れる。自分のエゴを捨てボブの幸せを第一に考えるジェームズは、究極の決断を迫られ苦悩するが、 “2人”の強い絆は人々の心を動かしていく。ジェームズの肩にちょこんと乗り、彼に寄り添うボブの可愛らしさは言わずもがな。ロンドンの片隅で這いつくばって生きる青年と猫に起こる温かな奇跡に癒され、冬の冷たい風が吹き抜ける画面の向こうにある街が、善意や優しさによって色づいていくように見えた。(吉永くま)

2022年2月25日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/イギリス/92分)原題:A Gift from Bob 監督:チャールズ・マーティン・スミス 出演:ルーク・トレッダウェイ、クリスティーナ・トンテリ=ヤング、ファルダット・シャーマ ほか 配給:コムストック・グループ © 2020 A GIFT FROM BOB PRODUCTION LTD. ALL RIGHTS RESERVED.


『焼け跡クロニクル』

自宅の全焼で失った記録を乗り越える映像詩

2018年の夏、『20世紀ノスタルジア』で知られる映画作家、原將人監督の京都の自宅が火事で全焼した。原監督自身も大やけどを負うが、最も落胆したのは大量の8ミリフィルムが焼失してしまったこと。この作品は、意気消沈する原監督や、焼け出されて不自由な生活を送る幼い双子の娘ら家族の姿を、妻のまおりが収めたプライベート動画と、焼け跡から何とか掘り出して修復を試みた8ミリからなる記憶と記録の映像詩だ。8ミリには、今ではすっかり大きくなった長男の幼かったころの姿がぼけぼけの中にうっすらと映っていて、原監督の悔しさとみじめさが漂ってくる。悲しみの先に差し込む希望の光からは、さすがは夫婦そろって映像作家の視点だなと感じ入った。(藤井克郎)

2022年2月25日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/日本/85分) 監督:原まおり、原將人 出演:原將人、原まみや、原かりん、原鼓卯、原まおり ほか 配給:マジックアワー © 2022『焼け跡クロニクル』プロジェクト


『金の糸』

ジョージアの伝説的監督が紡ぐときめきと葛藤

1928年生まれのラナ・ゴゴベリゼ監督が91歳で手がけた意欲作。ジョージアを代表する伝説の女性監督の27年ぶりの新作となる。79歳の誕生日を迎えたエレネは、娘から夫の母親のミランダが一緒に住むと聞いて愕然とする。認知症の症状が出始めて一人暮らしをさせられないというミランダは、ソ連時代にエレネと浅からぬ因縁があった。そんなとき、60年前の恋人のアルチルから突然、誕生日を祝う電話がかかってくる。タイトルの「金の糸」とは、日本の陶磁器修復の技法、金継ぎからの暗喩。いくつになっても生まれいづるときめきや葛藤を、超高齢者のゴゴベリゼ監督だからこその含蓄とユーモアを交えて鮮やかに紡ぎ出す。はしごを巧みに用いた遠近法による撮影や、古今の文学からの引用をちりばめた名せりふも、作品世界に豊かな彩りをもたらしている。(藤井克郎)

2022年2月26日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/ジョージア、フランス/91分)原題:OKROS DZAPI 英題:GOLDEN THREAD 監督・脚本:ラナ・ゴゴベリゼ 出演:ナナ・ジョルジャゼ、グランダ・ガブニア、ズラ・キプシゼ ほか 配給:ムヴィオラ © 3003 film production, 2019


『チェチェンへようこそ—ゲイの粛清—』

チェチェン共和国の凄惨なゲイ狩りの真実

映画『チェチェンへようこそ—ゲイの粛清—』ポスター画像ロシア支配下のチェチェン共和国で横行する国家主導の”ゲイ狩り”と、彼らを救おうと奔走する活動家たちを追ったドキュメンタリー。国際社会が性の多様性への理解を急速に深めているように見えるなか、政府が掲げた「血統浄化」の下で、同性愛者への拷問や殺人までもが容認されているというチェチェンの現実に、大きな衝撃を受けた。しかも、始まったのはここ数年だという。信仰と政治的支配によって閉ざされた世界で、盲目的に醸成していく理不尽な正義。「穢れ」とみなされたゲイたちは、警察や家族からも無惨に排除されていく……。彼らが生きる道は、国外脱出ただ一つ。潜入取材のカメラは、決死の逃走を試みる人々と命がけで救出する人々を映し出す。監督はアカデミー賞ノミネートの経験も持つジャーナリストで作家のディヴィッド・フランス。被害者保護のため、ケータイアプリの顔交換などに使われる技術・ディープフェイクを進化させた「フェイスダブル」を駆使し、表情の動きはそのままに顔の印象を変えた特殊効果にも注目だ。本作によって明るみに出た事実と、自由と尊厳のために闘う人々への共感と支援が、不条理な現実を変える力となることを願ってやまない。(min)

2022年2月26日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020 年/アメリカ/107分)原題:WELCOME TO CHECHNYA 監督:ディヴィッド・フランス 配給:MadeGood Films

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