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2021年02月27日更新

3月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ！あなたが気になるのは、どの映画!?

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3/5（金）公開『野球少女』
3/12（金）公開『フィールズ・グッド・マン』
3/12（金）公開『ワン・モア・ライフ！』
3/19（金）公開『ミナリ』
3/20（土）公開『生きろ島田叡－戦中最後の沖縄県知事』
3/20（土）公開『コントラ KONTORA』
3/26（金）公開『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』
3/26（金）公開『テスラエジソンが恐れた天才』
3/26（金）公開『水を抱く女』

『野球少女』

常識にとらわれずに夢を追い続ける女性の普遍的な思い

韓国からとびきりさわやかな野球映画がやってくる。主人公は天才野球少女と言われたスイン。持ち前の速球を武器に、高校でも唯一の女子部員として活躍するが、プロ球団からの指名は来なかった。卒業を控えて同級生はみんな野球をやめる中、諦めきれない彼女は一人、プロの入団テストを受けようと練習を続ける。これが初長編となるチェ・ユンテ監督は、完璧な男社会である野球の世界を題材に、常識にとらわれずに自分の夢を実現させようとする女性の普遍的な思いを躍動感あふれる映像で織り上げた。母親をはじめ、さまざまな障壁が立ちふさがるが、乗り越えるには一人ではできないという教訓が光る。話題のドラマ『梨泰院クラス』で人気の出た主演のイ・ジュヨンの見事な投球フォームにも注目だ。（藤井克郎）

2021年3月5日（金）より全国公開　公式サイト　予告編動画
（2019年／韓国／105分）英題：Baseball Girl　監督・脚本：チェ・ユンテ　出演：イ・ジュヨン、イ・ジュニョク、ヨム・ヘラン　ほか　配給：ロングライド　© 2019 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED

『フィールズ・グッド・マン』

お気楽なカエルがヘイトシンボルに！？

ユーモラスなコミックキャラクターとその作者が、悪意に満ちたネット社会に翻弄されていく姿を追うドキュメンタリー。米アンダーグラウンド・コミック界の人気アーティスト、マット・フューリー。彼の描くお気楽なキャラクター・カエルのペペが、ある日を境に改変され“ミーム”（※）としてネット上に溢れるようになる。さらに2016年の大統領選の際には、人種差別的なイメージとともに拡散され、ペペはヘイトシンボルに認定されてしまう。マットはイメージ奪還に乗り出すが……。マットの友人でもある監督は、全編にアニメーションを散りばめて観客を引き込み、“ミーム”の中に込められた負の感情と、それが差別や攻撃に向かう恐ろしさを暴き出す。穏やかで平和主義者のマットや無邪気なペペと、対極にある過激な思想に感化された世界とのギャップに一旦は愕然とするが、やがて見えてくる薄明りに熱いものが込み上げてくる。（吉永くま）

※ミーム（インターネット・ミーム）：ネット掲示板やSNSで拡散される、ネタ的要素の強い画像や動画、文章などの情報のこと

2021年3月12日（金）より全国順次公開　公式サイト　特報動画
（2020年／アメリカ／94分）原題：FEELS GOOD MAN　監督・脚本：アーサー・ジョーンズ　出演：マット・フューリー、ジョン・マイケル・グリア、リサ・ハナウォルト、カエルのペペほか　配給：東風＋ノーム　© 2020 Feels Good Man Film LLC

『ワン・モア・ライフ！』

不幸によって気付く当たり前の幸せ

天国から舞い戻った中年男が、限られた時間の中で家族との人生をやり直そうと奮闘するイタリア発の大ヒットコメディ。シチリア・パレルモに住むパオロは、スクーターでの通勤途中、交通事故にあって命を落とす。しかし、天国での計算ミスが発覚し、92 分間だけ寿命が延長され地上に戻れることに。その残り時間、彼はこれまでの自由で気ままな生き方を戒めて、家族の絆を取り戻そうとする。調子が良く軽薄で女性にだらしない、夫としても親としてもダメな男の人生の焦点は、約1時間半の猶予が設定されたことで後悔と懺悔と家族への愛に向かう。予期しない不幸により、当たり前だった幸せや本当に大切なことに気づくという皮肉。「残された人生と向き合う」ことをピリッと効いたスパイスとユーモアで魅せてくれる。（吉永くま）

2021年3月12日（金）より全国順次公開　公式サイト　予告編動画
（2019 年／イタリア／94 分）　原題：Momenti di trascurabile felicità　英題：Ordinary Happiness　監督・脚本：ダニエーレ・ルケッティ　出演：ピエールフランチェスコ・ディリベルト（ピフ）、トニー・エドゥアルト、レナート・カルペンティエーリほか　配給：アルバトロス・フィルム　© Copyright 2019 I.B.C. Movie

『ミナリ』

米南部の荒れ地で農業を志す韓国系移民一家

舞台は1980年代のアメリカ南部アーカンソー州。荒れた土地に妻と2人の子どもとともにやってきた韓国系移民のジェイコブは、おんぼろのトレーラーハウスに住みながら、農業で身を立てることを決意するが、現実主義者の妻とはいさかいが絶えない。子どもたちの面倒を見る人手も必要で、妻の母を韓国から呼び寄せるが……。『ムーンライト』など作家性の強い作品を手がけるスタジオ「A24」の製作で、リー・アイザック・チョン監督はじめ韓国系のスタッフ、キャストが集結。2020年のサンダンス映画祭では最高賞の審査員特別賞など2冠に輝いた。韓国文化にこだわる祖母とアメリカナイズされた孫とのユーモラスな交流から一転、怒涛の展開が見ものだ。ミナリとは、韓国語で野菜のセリのこと。（藤井克郎）

2021年3月19日（金）より全国公開　公式サイト　予告編動画
（2020年／アメリカ／116分）原題：MINARI　監督・脚本：リー・アイザック・チョン　出演：スティーヴン・ユァン、ハン・イェリ、ユン・ヨジョン　ほか　配給：ギャガ　©2020 A24 DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved.

◆オススメ記事
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『生きろ島田叡－戦中最後の沖縄県知事』

沖縄戦の残酷さ、日本軍の無謀さが浮き彫りに

第二次世界大戦末期に沖縄県知事だった島田叡（あきら）の思いを中心に、激烈な沖縄戦の悲劇を描いたドキュメンタリー。『米軍が最も恐れた男その名は、カメジロー』の佐古忠彦監督が、生々しいインタビューと丁寧な取材を重ねて作り上げた。当時の知事は任命制で、内務官僚の島田は1945年1月に沖縄県知事の辞令を受ける。家族の反対を押し切って着任した島田は、できるだけ多くの県民の命を救おうと奮闘。だが軍の上層部は島田の思惑を理解してはくれなかった。戦闘終結までの約２か月を時系列にたどることで、戦争の残酷さ、日本軍の無謀さが浮き彫りになる。「生きて虜囚の辱めを受けず」とされた時代にあって、部下や少年兵に「生きろ」と諭した島田の人間性と勇気に感銘を受けた。（藤井克郎）

2021年3月20日（土）より全国順次公開　公式サイト　予告編動画
（2021年／日本／118分）　監督：佐古忠彦　語り：山根基世、津嘉山正種、佐々木蔵之介　配給：アーク・フィルムズ　©2021 映画『生きろ島田叡』製作委員会

『コントラ KONTORA』

後ろ向きに歩く男と出会う女子高校生の問いかけ

父親と2人で暮らす高校生のソラは、祖父の遺品の中から戦争中の日記を見つける。どうやらそこには宝が埋まっている地図が描かれているようだった。誰にも内緒で山の中を探索するソラだが、ある日、道端で後ろ向きに歩く男と出会う。インド出身で、日本を拠点に活動するアンシュル・チョウハン監督の長編2作目。全編モノクロのワイド画面に、閉鎖的な土地と過去の記憶に束縛された人々の鬱屈した思いが、無駄な言葉を伴わずに映像の力だけで映し出される。ひたすら黙って後ろ歩きをする男は何にとらわれているのか。映画は明確に答えを示すことはないが、決して忘れてはいけない戦争の影にどうすれば迫れるかを必死に考えてみたい。そんな監督の真摯な姿勢がひしひしと伝わってきた。（藤井克郎）

2021年3月20日（土）より全国順次公開　公式サイト　予告編動画
（2020年／日本／144分／PG-12）英題：KONTORA　監督・脚本：アンシュル・チョウハン　出演：円井わん、間瀬英正、山田太一、セイラ、清水拓蔵　配給：リアリーライクフィルムズ＋Cinemaangel　Ⓒ 2020 KOWATANDA FILMS. ALL RIGHTS RESERVED

『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』

無感情のせりふで貫く戦争の諧謔と皮肉

その町は、川を挟んだ隣町と、朝の9時から夕方5時まで規則正しく戦争をしていた。兵隊の露木はある日、音楽隊への異動を言い渡される。なかなか楽隊の兵舎が見つからない中、川向こうからかすかな音を聴いた露木が河原でトランペットを吹くと、対岸からも音楽が返ってきた。『山守クリップ工場の辺り』など、国内外で高い評価を受ける池田暁監督の長編4作目で、2020年の東京フィルメックスでは審査員特別賞を受賞。全編が感情を押し殺したせりふ回しと無表情の演技で貫かれ、とぼけた味わいの中で戦争中の日常が反復される。皮肉な笑いが続く先に待っているものとは……。ストーリー自体は至極まじめなもので、諧謔とのギャップが、余計に監督が込めた反戦の思いを際立たせる。（藤井克郎）

2021年3月26日（金）より全国順次公開　公式サイト　予告編動画
（2020年／日本／105分）　監督・脚本・編集・絵：池田暁　出演：前原滉、今野浩喜、石橋蓮司　ほか　配給：ビターズ・エンド　©2020「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」フィルムプロジェクト

『テスラエジソンが恐れた天才』

現代の視点から天才発明家の人間性に肉薄

現在のクロアチアで生まれ、アメリカに渡って交流電動機などを開発した発明家、ニコラ・テスラの伝記映画。マイケル・アルメレイダ監督が主役にイーサン・ホークを迎え、個性あふれる映像世界を構築した。1884年、発明王トーマス・エジソンの会社に就職したテスラは、直流電流を主張するエジソンと対立して退社。交流システムを完成させてエジソンとの電流戦争に勝利した彼は、やがて無線の実現に乗り出す。実験局を設置する荒野の風景は書き割りで、シカゴ万国博覧会などは当時の写真を使用するなど、背景を極端に簡素化。テスラに思いを寄せるアンに現代の視点からナレーションを語らせる斬新な手法で、テスラ個人の人間ドラマに肉薄する。いつまでも移民の劣等感を引きずったホークが渋い。（藤井克郎）

2021年3月26日（金）より全国順次公開　公式サイト　予告編動画
（2020年／アメリカ／103分）原題：TESLA　監督・脚本・製作：マイケル・アルメレイダ　出演：イーサン・ホーク、イヴ・ヒューソン、カイル・マクラクラン　ほか　配給：ショウゲート　© Nikola Productions, Inc. 2020

『水を抱く女』

水の精を題材にした予測不可能な恋愛ドラマ

ベルリンの博物館でガイドを務める都市開発の歴史研究家、ウンディーネは、恋人のヨハネスに別れを切り出された日に、潜水作業員のクリストフと運命の出会いをする。激しい恋に落ちる2人だったが、連れ立って駅に向かう道の途中、女性と手をつないだヨハネスとすれ違う。『東ベルリンから来た女』のクリスティアン・ペッツォルト監督が、水の精のウンディーネ伝説を題材に、予測不可能な恋愛映画を実現させた。ヨハネスとの別れもクリストフとの出会いも強烈な描写で、その後も2人の男はウンディーネの神秘的な振る舞いに翻弄される。不意に現れる巨大ナマズやベルリンの街の立体模型など、意味ありげな記号がちりばめられているのも、不安定感に拍車をかける。新感覚の映画体験に興奮した。（藤井克郎）

2021年3月26日（金）より全国順次公開　公式サイト　予告編動画
（2020年／ドイツ・フランス／90分）原題：Undine　監督・脚本：クリスティアン・ペッツォルト　出演：パウラ・ベーア、フランツ・ロゴフスキ、マリアム・ザリー　ほか　配給：彩プロ　© SCHRAMM FILM/LES FILMS DU LOSANGE/ZDF/ARTE/ARTE France Cinéma 2020