『英雄は嘘がお好き』—19世紀初頭を舞台にした華やかなロマンティック・コメディ
- 2019年10月09日更新
ある“嘘”を巡り、良家の子女と調子の良い男が巻き起こす大騒動を描く。2人を演じるのは、『イングロリアス・バスターズ』『オーケストラ!』のメラニー・ロランと『アーティスト』でアカデミー賞®主演男優賞を受賞したジャン・デュジャルダンという二大スター。美男美女の楽しい掛け合いとテンポの良い脚本に引っ張られ、気が付けば終始笑顔に。フランスの歴史ある城や美しい村がロケ地として使われている。2019年10月11日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開。
戦死したはずの英雄が帰還!?
1809年、フランスのブルゴーニュ。裕福なボーグラン家の長女エリザベットは、戦地の婚約者から便りがなく体調を崩した妹を心配し、その婚約者・ヌヴィル大尉のふりをして自身で手紙を書いて届けることに。調子に乗った彼女は、戦地でのヌヴィルの活躍話だけでなくその戦死まででっちあげるが、3年後街中で彼と遭遇。英雄が帰ってきたと大騒ぎの中、彼女は嘘がばれないかと冷や冷やする。一方、ヌヴィルは彼女の作りあげた英雄という立場を利用することで、一儲けすることを企んでいた。
登場人物たちが放つ圧倒的な魅力に引き込まれる
特筆したいのは登場人物たちの圧倒的な魅力。ヌヴィル大尉は嘘つきでしたたかなのに憎めない。日本で中年男性を形容する際にはあまり使われない言葉だが、チャーミングという言葉がぴったりだ。そしてもうひとりの嘘つき(タイプは違うが)エリザベット。しっかりしているようで抜けていたり、冷静なようで熱かったり。スクリーンの中で人に愛されるということは、スクリーンの外の人々をも魅了するということなのだ。
それにしてもヌヴィルを演じるジャン・デュジャルダンはダンディで髭がよく似合う。また、コメディ初挑戦というエリザベット役のメラニー・ロランは、「コメディエンヌになるために生まれてきたのでは?」と思うほど。ドラマの中のキャラクターと俳優陣の魅力が見事にはまっている。
どこまでも軽やかで華やかなフレンチ・コメディ
また、コスチュームものにありがちな堅苦さや重々しさはほとんどない。衣装一つとっても、その発想はかなり自由だ。大尉の衣装はジェーン・オースティンの小説で将校がいつも着ているイギリス軍の制服の赤、エリザベットのワンピースはインド更紗を取り入れ、動きやすいフレアタイプにしたとのこと。可愛らしい彼女の衣装は、動くたびに風が吹き抜けていくような爽やかな印象を残す。
反戦メッセージも少し盛り込まれているが、どこまでも軽やかで華やかさが漂うフレンチ・コメディ。この心地良い時間に身を委ねてほしい。
▼『英雄は嘘がお好き』作品・公開情報
(2017年/フランス/ 91分)
原題:Le retour du héros
英題:Return of the Hero
監督:ローラン・ティラール
出演:ジャン・デュジャルダン、メラニー・ロラン、ノエミ・メルラン、クリストフ・モンテネーズ、フェオドール・アトキン
配給:松竹
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
©JD PROD – LES FILMS SUR MESURE – STUDIOCANAL – FRANCE 3 CINEMA – GV PROD
※2019年10月11日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
文:吉永くま
- 2019年10月09日更新
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