【スクリーンの女神たち】『宵闇真珠』アンジェラ・ユンさんインタビュー

  • 2018年12月12日更新

映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユンスクリーンで女神のごとく輝く女優にスポットを当て、出演作品とその素顔の魅力に迫る本コラム。今回は、2018年12月15日(土)より全国順次公開となる映画『宵闇真珠』で、ヒロインの“少女”を演じたアンジェラ・ユンさんにご登場いただきました!

世界的な撮影監督として名高いクリストファー・ドイル氏が、女性監督のジェニー・シュン氏と共にメガホンを執った本作。時代に取り残されたような香港の漁村を舞台に、日光にあたるとやせ細ってしまう奇病に冒された16歳の少女と、どこからともなく現れた異邦人の出会いを、幻想的で耽美な映像美のなかに映し出します。ドイル監督が何年もかけて見出したというヒロイン役に抜てきされ、日本が誇る国際派俳優のオダギリジョーさんとも共演を果たしたアンジェラさんに、撮影の裏話やご自身のことについて伺いました!
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クリストファー・ドイル監督との仕事は、新たな世界の窓が開いたような経験

— ドイル監督とシュン監督は、少女役を演じる女優を何年もかけて探していたそうですが、どんなオーディションを経て、アンジェラさんに白羽の矢が立ったのですか?

映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユンアンジェラ・ユンさん(以下、アンジェラ):最初のオーディションではジェニーさんだけにお会いして、その後、ジェニーさんから「クリストファーさんと3人で会いましょう」とお誘いを受けたんです。てっきり、オーディションの続きだと思って約束の場所に向かうと、そこはカジュアルなレストランで。クリストファーさんが私を見るなり、ひと言、「君に決まったよ!」って。嬉しさよりも、驚きのほうが大きくて(笑)。

— お二人の監督からは、それぞれどのような演出や要望がありましたか?

アンジェラ:撮影前にお二人から言われたのは、「なるべく日焼けをしないで」ということですね。撮影中は両監督からいろいろな説明や演出を受けましたが、それぞれ指示する内容の方向性が違うんです。物語はジェニーさんの経験が基になっているので、セリフの言い回しや感情の込め方などはジェニーさんに演出されることが多かったですし、クリストファーさんは、カメラの位置やライティングなどにとてもこだわっていて、それに対しての演技の動線などを指示されることが多かったです。

— ドイル監督といえば、撮影監督として名だたる巨匠たちと多くの傑作を手掛けられてきた方です。映画ファンとしては、撮影方法や現場の様子がとても気になります。

アンジェラ:クリストファーさんは、カメラ位置やセットの組み方、ちょっとした小道具にまで、とことんこだわられていて、セリフのディテールも何度も推敲されていました。この映画の最初から最後まで、そしてスクリーンの隅々まで、彼の美学が表現されているんです。

— 特に印象的だった撮影シーンはありますか?

アンジェラ:お母さんの写真を鏡越しで見る場面です。ほとんどセリフのないシーンですが、ライティングの変更に一番時間がかかりました。現場では、どうしてこんなに時間をかけるのか不思議でしたが、出来上がった作品を観ると、少女の繊細な心の変化が光の陰影で見事に表現されていて……。映画というものは、役者の演技だけではなくさまざまな要素で構成されているのだと知りました。私にとって、今回の映画出演は新たな世界の窓が開いたような経験でした。

映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユン 映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユン
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— ロケ地となった香港の港町、大澳(タイオー)の風景も叙情的で素晴らしかったですね。実際はどういう場所なのですか?

アンジェラ:映画の風景そのままです。立ち並んだ水上家屋には実際に土地の人々が暮らしていて、セットは一切使っていないんです。オダギリジョーさん演じる異邦人が住み着く廃墟も、監督たちが散歩中にたまたま見つけたそうです。ただ、建物の中はホコリだらけで荒れた状態だったので、掃除をして、少しリフォームもして、そこにはセットも運び入れています。撮影は、ほとんどその2カ所で行われました。

— 異邦人を演じたオダギリジョーさんの印象をお聞かせください。

アンジェラ:もう、“かっこいい”の代名詞というか、総本山のような方ですよね(笑)。クールな印象を持っていましたけど、実際にご一緒してみると、結構お酒が好きみたいで、スタッフの間では「昨日、オダギリさんが夜中にビールを買っているのを見た」という目撃談がよく出ていました(笑)。

— アンジェラさんご自身が、“少女”に共感する部分はありますか?

アンジェラ:彼女は社会から隔離されたような暮らしをしていて、とても孤独でしたけど、私自身は社会との接点もあるし、相談相手もたくさんいます。それでも、孤独を感じることはありますよ。わりと考え込む性格で、時々センシティブになってしまうんです。ただ、自分自身の内面と向き合うことは、俳優には絶対的に必要な経験だと思いますし、今は俳優人生で大事な時期でもあると思っているので、この感覚を大事にしているんです。考えても答えが見出せないときは、音楽を聴いたり、ピアノを弾いたり、日記を書いたりして少しずつ孤独な世界から抜け出すようにしています。

誰かを美しいと感じるときは、必ずその人の内面と繋がっている

映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユン 映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユン

— アンジェラさんご自身のことについても教えてください。俳優という職業には、子どものころから憧れていたのですか?

アンジェラ:そうですね。幼いころからドラマや映画を観ては真似をしてみたり、演じることに漠然とした憧れは抱いていました。でも、両親は「女の子だから将来は安定した暮らしをしてほしい」と望んでいましたし、大学では映画論や映画史の授業を取ったりもしましたけど、現実的な選択として、就職率の高い会計学を専攻したんです。

— あくまで普通に就職しようとしていたんですね。

アンジェラ:そうなんです。でも、学生時代から自立心は強くて、家庭教師のアルバイトをしながら、早い時期に一人暮らしを始めたんです。そのことで、両親も私を見直してくれたのだと思います。同時期に、CMの仕事などを少しずつ始めたのですが、自分の力を信用してくれるようになって、まったく反対されずに俳優の道へシフトしていくことができたんです。

映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユン 映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユン 映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユン

— ご両親は、アンジェラさんを一人前の大人として認めて応援してくれたんですね。お仕事を始めてからは、ハイブランドのモデルを次々務めるなど、順調にキャリアを重ねていらっしゃいますが、次世代を担うアジアン・ビューティーとして注目されるアンジェラさんが思う美しいと人とは、どんな人物でしょうか?

アンジェラ:美の判断基準は人によって違います。でも、誰かを美しいと感じるときは、必ずその人の内面と繋がっていると思うんです。良い人生経験を重ねた人は表情も輝いて見えます。それと、本をよく読む人は美しいと思いますね。感受性が豊かだし、物事を深く考えるので知的ですし、良い意味で世間のことにも敏感です。着飾ることで磨かれる美しさもあるけれど、その美しさの基準だって人によってまちまちですよね。その人にしかない美しさというのは、やはり本人の心を映し出したものだと思うんです。

— 内面から輝きを放つ人……。まさに、アンジェラさんのことですね!

熱海、新宿御苑、下北沢、新海誠監督が好き!

— 東京に来るのは何度目ですか?

映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユンアンジェラ:もう、数えきれないほど来ています(笑)。カメラマンの川島小鳥さんや、東京にはお仕事で知り合ったお友だちがいっぱいいるんです。

— そうなんですか! ちなみに、東京でお気に入りの街は?

アンジェラ:東京ではないですが、熱海が大好きです。静かでとても落ち着きます。

— 熱海だなんて、まさかのシブいお答え(笑)。

アンジェラ:ふふふ(笑)。東京では新宿御苑が好きです。新海誠監督の作品のファンで、映画に出てくる場所を巡っているんです。

— 新宿御苑! 『言の葉の庭』ですね。てっきり、ファッションに関係するおしゃれな場所にいくのかと想像していました。

アンジェラ:もちろん、ファッションも大好きで、東京でお買い物もしますよ。お気に入りは下北沢です!

— シモキタですか! もうアンジェラさんにとって東京は庭みたいなものなんですね(笑)。ぜひまた東京で取材させていただきたいものです。本日は貴重なお話をありがとうございました。

映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユン


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映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユン靴チェックニットスカートの一部と同色のパンプスは、かかとのないチャンキーヒール。絶妙なカラーコーデがとてもお似合いでした! トップモデルとして華やかに活躍しながらも、その素顔は礼儀正しく、とてもしっかり者のアンジェラさん。インタビュー中も、終始にこやかで真摯にお話してくれました。外見も内面も女神のように輝くアンジェラさんに会えば、きっと誰もが恋をしてしまうはず!


【アンジェラ・ユン/プロフィール】
映画『宵闇真珠』インタビュー_アンジェラ・ユン1993年10月25日生まれ。香港出身。香港浸会大学を卒業し、学士号を取得。2015年にモデルデビューし、シャネルやシュウ ウエムラなど、一流ブランドの広告塔やアンバサダーに選ばれ、一躍トップモデルに駆け上がる。さらに、ファッション・シーンだけでなく、香港では「文青女神」(サブカルオシャレ好きにとっての女神という意味)と呼ばれて注目を集める。日本でも峯田和伸が率いるロック・バンド、銀杏BOYZのシングルのジャケットを飾るなど活躍の場を広げ、写真家の川島小鳥から「いま、一番撮りたい女性」と評されるなど、今後ますますの活躍が期待されるアジアの次世代ミューズ。

<取材・編集・文:min スチール:ハルプードル ヘアメイク:前田紗良  スタイリスト:加藤 將(vacans)>

 

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▼『宵闇真珠』作品・公開情報
映画『宵闇真珠』メイン画像(2017年/香港・マレーシア・日本/広東語・北京語・英語・日本語/97分)
原題:白色女孩 英題:THE WHITE GIRL
監督・脚本:クリストファー・ドイル、ジェニー・シュン
撮影監督:クリストファー・ドイル
音楽:ラング・ダート、オダギリジョー
日本語字幕:神部明世
出演:オダギリジョー、アンジェラ・ユン、マイケル・ニン、トニー・ウー、ジェフ・ヨウ、サム・リャン ほか
配給:キノフィルムズ
© Pica Pica Media
『宵闇真珠』公式サイト

※2018年12月15日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

  • 2018年12月12日更新

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