『オン・ザ・ミルキー・ロード』〜力強い希望と迫り来る悲劇、陽気な人々とエネルギッシュな音楽がせめぎ合う、クストリッツァ渾身の新作!〜

  • 2017年09月15日更新

世界三大映画祭を制し、映画『黒猫・白猫』『アンダーグラウンド』『アリゾナ・ドリーム』などで多くの映画ファンを魅きつけてきた、エミール・クストリッツァ監督、9年ぶりの待望の新作。旧ユーゴの内戦を背景に、陽気でクレイジーな人物とはじけるような音楽で、エネルギーに満ちた作品を作ってきたクストリッツァ監督。今回は「愛」をテーマに、イタリアの宝石ことモニカ・ベルッチをヒロインに迎え、自ら主演も務めた。奇想天外な物語を、驚くべき映像にのせてお届けする。
9/15(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー! ©2016 LOVE AND WAR LLC

若くはないけれど、希望に満ちた恋人たちの奇想天外な愛の逃避行!
【あらすじ】戦争中のとある国で、最前線にミルクを届けているコスタ(エミール・クストリッツァ)は悲しい過去をもつ男。そんなコスタに想いを寄せる美しい村娘・ミレナ(スロボダ・ミチャロヴィッチ)は、英雄の兄( プレグラグ・”ミキ”・マノイロヴィッチ )が花嫁を迎えるのをきっかけに、自分もコスタとW結婚式を挙げようと目論む。しかし、コスタはミレナに気のない様子。さらに難民キャンプからやってきた花嫁(モニカ・ベルッチ)は、出会ったとたんにコスタと心の底から深く惹かれ合ってしまう。そんな折、ついに戦争が終結し、村人たちは喜びいっぱいの宴を繰り広げる。ところがその村を、英国の特殊部隊が襲う。それは、かつて花嫁を愛した英国将校の差し金だった。なんとか命をつないだコスタと花嫁は、残忍な兵士たちに追われながら、決死の逃避行を開始する……。

バルカンミュージック、ジプシーブラス……楽曲も魅力的なクストリッツァ作品
クストリッツァ監督作品といえば、陽気でクレイジーな宴と、狂騒的で特徴的な楽曲がトレードマークになっている。ロック少年として10代を過ごしたクストリッツァだが、映画制作の道に入るとサラエヴォ出身のミュージシャンたちと交流しながら、彼らから音楽的な影響を色濃く受けてきた。本作で音楽を担当したのは、クストリッツァ自ら率いるバンド「ノー・スモーキング・オーケストラ」のドラマーでもあり、監督の息子でもある、ストリボール・クストリッツアだ。彼のパワフルなバルカン・ミュージックが本作の全編を彩る。この力強い楽曲が、実話とファンタジーが混じり合った奇妙で魅力的なこの物語にぴったりはまり、作品のドラマ性を高めている。

女性のための映画になった本作、そのテーマは「愛」
架空の国を舞台に、実話とファンタジーが入り乱れるクストリッツァ監督の奇妙で独創的な世界。悲劇も喜劇も、美しさも愚かさもごちゃまぜにしてひっくり返したようなおもちゃ箱には、ダイナマイトまで仕込まれているような騒々しさだ。本作では、過去作品以上にハヤブサ、蛇、クマなどさまざまな動物が驚くべき演技を見せているのも楽しい。クストリッツァ作品を愛するファンの期待に応える、変わらぬ力強さをたたえた作品となった。ただいつもと違うのは、テーマが「愛」であること、監督自ら「本作は女性のための作品」と語っていること、そしてちょっぴり異なる後味だろう。女性のための作品というだけあり、特にモニカ・ベルッチ演じる花嫁には、女性の多面性が魅力いっぱいに投影されている。果たして運命は、ピュアな二人の愛の逃避行に、どんな結末を用意しているのか?・・・どうぞ多くのかたが劇場で、本作を存分に味わわれますように。

▼『オン・ザ・ミルキー・ロード』作品・公開情報
(2016年/カラー/5.1ch/125分/セルビア、イギリス、アメリカ合作)
原題:『On the Milky Road』
監督・脚本:エミール・クストリッツァ
音楽:ストリボール・クストリッツア
出演:エミール・クストリッツァ、モニカ・ベルッチ、プレグラグ・”ミキ”・マノイロヴィッチ、スロボダ・ミチャロヴィッチ ほか
配給:ファントム・フィルム
●『オン・ザ・ミルキー・ロード』公式HP
©2016 LOVE AND WAR LLC

※2017年9月15日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!

 

文:市川はるひ

  • 2017年09月15日更新

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