『君がくれたグッドライフ』― 尊厳死を決意した主人公が選んだ幸せな時間の使い方
- 2016年05月21日更新
どう死ぬかではなく、限りある人生を“どう生きるか”世界各国の映画祭で感動を呼んだヒューマンドラマ
不治の病を発症し、30代半ばで尊厳死を決意した男性と仲間たちとの最期の旅を描いたヒューマンドラマ。尊厳死を選択するまでの苦痛や葛藤といった部分ではなく、限りある人生をどう生きるかという前向きな問いに焦点を当て、きらめきに満ちた人生の瞬間を切り取っていく。主人公ハンネス役には『ヴィンセントは海へ行きたい』でドイツ映画賞主演男優賞を獲得したフロリアン・ダービト・フィッツ。本国ドイツをはじめ、世界各国の映画祭で賞賛を受けた本作は、ヨーロッパの美しい自然を映し出すロードムービーとしても魅力的な作品だ。
愛する人の選択が安らかな死だったら……
ドイツに住むハンネス(フロリアン・ダーヴィト・フィッツ)と妻のキキ(ユリア・コーシッツ)は、仲間たちとの年に一度の自転車旅行に出発する。メンバーは、弟のフィンと近ごろ関係が微妙な友人夫婦のドミとマライケ、さらに自由恋愛主義で独身のミヒャエルだ。今回の目的地を決めたのはハンネスとキキ。ベルギーに行くと聞いた仲間たちは、チョコレートと「タンタンの冒険」くらいしか魅力がないと不満を漏らすも、いつもと変わらぬ楽しい旅の幕開けだった。最初の休憩地では、恒例の“課題ゲーム”で盛り上がる6人。しかし次の日、ハンネスの兄家族の家に立ち寄った時、思いもよらない事実がハンネスの口から語られる。ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、余命3~5年と宣告されたというのだ。言葉を失くす仲間たちに、さらに衝撃の告白は続く。「ベルギーへ行くのは、法的に尊厳死が許されているから」と……。
命の期限を知ったとき、あなたはどんな<グッドライフ>を望むだろうか
人生とは何だろう。この漠然とした問いに即答できる人はそう多くないだろう。しかし、人生を“その人に与えられた時間”と言いかえたとしたら、どうだろうか?
「もし、明日が人生最後の日だったら、何をしたい?」子どものころは、友人同士でよくそんな問答をした。その会話が他愛のないものとして成立していたのは、明日も明後日も変わりなく太陽が昇ることを当然のように信じていたからだ。
尊厳死は“自らが命の期限を決める”究極の選択である。もちろん、制度自体には批判も意見もあって然るべきだ。しかし、ふとハンネスの立場に我が身を置きかえたとき、あなたは何を望み、何を思うだろう? または、キキや仲間たちのように、心から愛する人に残された時間を明確に知っていたら、その時をどう過ごし、何をしてあげたいと思うだろうか? この問いの答えの中には、きっとそれぞれが思う幸せの本質があるはずだ。自分にとって本当の<グッドライフ>とは何か。そんな生きることへの前向きな問いを描いた、切なくも温かい人生讃歌だ。
▼『君がくれたグッドライフ』作品・公開情報
(2014年/ドイツ/95分/PG-12)
原題:Hin und weg
監督:クリスティアン・チューベルト
脚本:アリアーネ・シュレーダー
日本語字幕:吉川美奈子
出演:フロリアン・ダーヴィト・フィッツ、ユリア・コーシッツ、ユルゲン・フォーゲル、ミリアム・シュタイン、フォルカー・ブルッフ、ヴィクトリア・マイヤー、ヨハネス・アルマイヤー、ハンネローレ・エルスナーほか
配給: ショウゲート
コピーライト:©2014 Majestic Filmproduktion GmbH / ZDF
※5月21日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかロードショー!
文:min
- 2016年05月21日更新
トラックバックURL:https://mini-theater.com/2016/05/21/33796/trackback/