『容疑者、ホアキン・フェニックス』—公開記念トークイベントに、 Kダブシャイン氏×マキタスポーツ氏が登場!
- 2012年05月14日更新
2008年末。『グラディエーター』、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』で2度のオスカー候補に輝いたハリウッドスター、ホアキン・フェニックスが突然の俳優引退&ラッパー転向を発表した―。そして2年後、変わり果ててしまったホアキンに、人気俳優ケイシー・アフレックが密着しドキュメンタリー映画を撮り始める。そこには人生に苦悩しながらも、ラッパーを目指し必死で生きるホアキンの姿が映し出されていた……がっ! それらはぜーんぶジョークだった!?
世界的スターの人生をかけた大イタズラに、アメリカ中が激怒した話題作『容疑者、ホアキン・フェニックス』がついに日本上陸。公開初日である2012年4月28日(土)の上映後には渋谷のシネマライズでKダブシャインさん(ラッパー)とマキタスポーツさん(ミュージシャン/芸人)のトークショーが行なわれた。独自の視点でミュージシャンの枠を越えて活躍するふたりは、この作品をどう観るのか―!?(↑の写真、左から、Kダブシャインさん、マキタスポーツさん)
「けっこう共感できる部分もありました」(Kダブシャインさん)
「本心とウソとの境目が、本人の中でグラデーションになっていたんでしょうね」(マキタスポーツさん)
マキタスポーツさん(以下、マキタ) 皆さん、作品を観終わってどんな気分ですか?
Kダブシャインさん(以下、Kダブ) 「だまされたー!」って気持ちになったんですかね。2年前にこの映画がアメリカで公開された時は、まだ(ウソだという)ネタバレはしていなかったので、後で全米が激怒したらしいですけど。
マキタ ご覧になって、どうでしたか。
Kダブ 先に作品を観た人からは「あの映画のホアキン、むちゃくちゃだよ!」なんて言われたけど、実際に観てみたらけっこう共感できる部分も有りましたね。
マキタ どういう部分に共感したんですか?
Kダブ 僕自身は10年前くらいにヒット曲を出して、だんだんとスポットライトから離れていく過程で音楽業界や芸能界に対して「結局は表面的じゃないか。ケっ!」という思いが有って。ハリウッドに居るともっと感じるんじゃないですかね。そういう思いがホアキンの念頭には有ったと思うんです。例えば、自分が俳優を引退して、そのままダメになってもスキャンダル的に取り上げられて終わりだろうなとか。だから、あれくらい大掛かりなことをわざとやったんじゃないな。イタズラとはいえ、本心でもあると思うんですよ。
マキタ 本心とウソとの境目が、本人の中でグラデーションになっていたんでしょうね。
Kダブ 結局は自分が狂ったふりをして観客を騙しながら、業界の問題を浮き彫りにしているんじゃないかな。しかも自分のお金でやっているんだから、石原慎太郎じゃないけど、「文句あるか!」くらいの感じで。
マキタ 石原慎太郎もモキュメンタリー*中なんですかね? だとしたら凄いけど(笑)。
*モキュメンタリー:映画やテレビ番組の撮影手法の一つ。架空の歴史や事実に基づいて作られる、虚構のドキュメンタリー。
「勝手に自分と近しいものを感じてしまった」(マキタスポーツさん)
Kダブ それにしても、ラッパーというのが(ホアキンにとって)自由の象徴だったんですかね? 世界的な影響力としてはハリウッドのほうが強大だと思うのに、そのハリウッドにツバを吐きながら、プロデューサーでラッパーのP・ディディに会うためには、へつらうくらいの勢いで……(笑)。
マキタ あのシーンには、たまらない気持ちになりました(笑)。
Kダブ でも、僕はこの映画好きですね。
マキタ 僕も大好きですよ。勝手に自分と近しいものを感じてしまったというか。僕もつい最近『十年目のプロポーズ』というJ-POPを皮肉った曲を出したんですが、いわゆるヒット曲の”法則”と言われるものだけを集めて作って、果たして売れるのかというのを実験中なんです。ホアキンと違うのは、僕の場合は「今からやることは実験ですよ」って手の内を明かしたところから始めていて、そこに賛否も有りますけど。それを分かった上で、純粋に曲として良かったって言う人もいますし。
Kダブ 作風や仕上がりは違うけど、ルーツには同じようなものを感じますよね。ドキュメンタリー映画にするところまで綿密に練って、おたくの巨匠(北野武監督)にアイデアとして持って行くというのはどうですか?
マキタ そんな話、できませんよ(笑)! でも、もしお金が有ったら、こういう壮大なドッキリを仕掛けたいと思いますか?
Kダブ 僕もこれを機会にラッパーを引退して、芸人になろうかなと思って(笑)。弟子にしてくれますか?
マキタ ははは!……で、カネは持ってる?
Kダブ それはちょっと……。
マキタ OK。試しただけだよ(笑)。
Kダブ 本当は俳優のほうが良いんですけどね。
マキタ じゃあ、北野組のオーディションが有ったら、ぜひ来てください。
Kダブ 行きますよ! 「メリークリスマス!」って。
マキタ それ、もう古いですけどね(笑)。
《ミニシア恒例 靴チェック!》 左・Kダブシャインさん 右・マキタスポーツさん |
◇ Kダブシャイン プロフィール
東京都渋谷区出身のMC。日本語の歌詞と韻(ライム)にこだわったラップスタイルが特徴。現在の日本語ラップにおける韻の踏み方の確立に大きく貢献したMCと呼ばれている。その作品は日本及び日本人としての誇りを訴えかける歌が多く、日本人MCとしては「児童虐待」・「シングルマザー」・「麻薬」・「国家」・「AIDS」など様々な社会的トピックを扱う数少ないMCとして知られている。
◇ マキタスポーツ プロフィール
浅草キッドが主催していた伝説のライヴ「浅草お兄さん会」でデビュー。バンド『マキタ学級』を率いるシリアスなアーティスト性のミュージシャンでありながら、ビートたけし氏、浅草キッドも支持する実力派芸人であり、独自の批評的見地から音楽や時事問題を考察、論評するコラムニストでもある。芸人としては、音楽的造詣をもとにした音曲ネタを得意とする。自ら命名した「作詞作曲ものまね」は、従来の「声帯模写」「形態模写」とは一線を画す知的なパロディネタとして好評を博している。
▼ 『容疑者、ホアキン・フェニックス』作品・上映情報
2010年/アメリカ/108分
原題:I’M STILL HERE
監督:ケイシー・アフレック
製作:ケイシー・アフレック、ホアキン・フェニックス
出演:ホアキン・フェニックス、アントニー・ラングドン、ケイリー・ペルロフ、ラリー・マクヘイル、ケイシー・アフレック ほか
配給:トランスフォーマー
コピーライト:(C)2010 Flemmy Productions, LLC
●『容疑者、ホアキン・フェニックス』公式ホームページ
※2012年4月28~5月11日シネマライズ、5月12日よりシネマート六本木ほかにて全国順次公開(5月14日現在、シネマライズでの上映は終了しております)。
取材・編集・文:min スチール撮影:hal
- 2012年05月14日更新
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