大画面がお得な2本立て―『歩けない僕らは』主演の宇野愛海、『ガンバレとかうるせぇ』主演の堀春菜インタビュー

  • 2019年11月19日更新


ミニシアター党にとっては何とも楽しみな2本立てではないか。2019年11月23日(土)から全国順次公開される佐藤快磨監督の新作『歩けない僕らは』は、37分の短編ながら、同じ佐藤監督が手がけた2014年の作品『ガンバレとかうるせぇ』との併映で上映される。『歩けない僕らは』で主役の新人理学療法士を演じたのは、元アイドルグループ「私立恵比寿中学」メンバーの宇野愛海。その同僚として出演している堀春菜は、『ガンバレとかうるせぇ』がデビュー作だった。生きのいい2人のきらりと光る感性をスクリーンでたっぷりと味わえるまたとない機会と言えそうだ。

【取材:藤井克郎 撮影:ハルプードル】


近すぎも遠すぎもしない距離感

—『歩けない僕らは』は、宇野さん演じる新人理学療法士の遥が、リハビリの現場を通して少しずつ成長していく物語です。リハビリの施し方など、役作りは大変でしたか。

宇野愛海(以下、宇野):脚本が完成する前に実際に施設に見学に行って、1年目の理学療法士さんにお話をうかがったりしたのですが、とても責任重大なお仕事で、生半可な感じでごまかすことは絶対にしてはいけないなと思いました。理学療法士さんには、患者さんとの距離が近すぎても遠すぎてもだめだと言われて、だから患者役の落合モトキさんともなるべくしゃべらないようにしていたんです。落合さんも察してくださって、結果的にすごくいい距離を保ったまま撮影できたという気がします。

—近すぎず、遠すぎず、とはどういうことでしょう。

宇野:近づきすぎると次の患者さんに気持ちを引きずってしまったりするし、逆に遠すぎたらなかなか心を開いてもらえない。生きることとか、当たり前にできることとか、いろいろと考えさせられる映画になったかなと思います。

映画『歩けない僕らは』の宇野愛海(右)と堀春菜—堀さんは遥の同僚で、仕事から逃げてしまう役ですね。リハビリのシーンもなく……。

堀春菜(以下、堀):そうですね、ベッドを拭くくらいで(笑)。高校のときの仲のいい友達が理学療法士になりたいと専門学校に入って頑張っているんですが、実際にどういう仕事なのかは今回の映画で初めて知りました。遥ちゃんの同期の役なんですけど、遥ちゃんが不器用でもまっすぐにぶつかっていく役柄なので、きっとその同期を横で見ていたら悔しいんだろうなと感じていました。

何年たっても観られるってすてき

—今回はデビュー作の『ガンバレとかうるせぇ』も併映されますね。

堀:初めてカメラの前に立ったのが『ガンバレとかうるせぇ』で、一番思い入れのある作品です。劇場公開は生まれた瞬間を観られるみたいで少し恥ずかしさもありますが、当時上映してくださった映画祭のスタッフさんとか、高校のときの友達とか、公開するんだねと連絡をくださったのが本当にうれしくて。こうやって何年たっても観られるって、映画ってすごくすてきだなと思いました。

—『歩けない僕らは』も同じ佐藤監督です。

堀:6年たったけど、成長しているのだろうかとか、恥ずかしさやいろいろなことを感じながら現場に行きました。でも何も言われなかったです(笑)。

宇野:すごく穏やかな方で、演出もそんなに受けた記憶がないんです。わからないことがあったら、答えをくれるというより、一緒に考えてくださるという方でした。例えば落合さんが演じる患者の柘植と向き合う場面で、どんなテンションで演じればいいかというときに、前後のシーンから感情を整理していって、じゃあこういうテンションかなと一緒に探ってくださった。とても助かりました。

女優になりたいとアイドルを卒業

—宇野さんは私立恵比寿中学のメンバーでしたが、もともと女優志望だったんですか。

宇野:事務所に入ったときは、すごく芸能活動をやりたいと思っていたわけではなくて、気づいたらアイドルになっていました。そうしたら、それまでちょこちょこやっていた演技をする機会が、アイドル優先のスケジュールで減ってしまったんです。そのときに、あ、演技が一番好きなんだと気づきました。女優になりたいと言ってアイドルを卒業したので、今こうやって女優の仕事を報告できて、それで喜んでくださる方がいるのは、すごく幸せなことだなと思います。

堀:私は小さいころからステージに立ったり踊ったりするのが好きでした。高校生のときに佐藤監督に声をかけていただいて、『ガンバレとかうるせぇ』に出演することになりました。

—そのときに、これを一生の仕事にしたいと思ったわけですか。

堀:そのときはずっとやっていこうという決心はなかったですね。でも『ガンバレとかうるせぇ』がいろいろな映画祭に出品され、たくさんの人や映画と出会って、もっと知りたいなと思ったんです。特に釜山国際映画祭に行ったとき、新人監督の力強い作品がたくさんあって、こうやって世界中のことを映画で知ることができるのは面白いなと思いました。

宇野:私は今、学校で映画を学んでいるんですが、映画好きの知り合いが増えて映画の見方が変わりました。以前は現場に入っていると演技のことしか考えられなかったけど、制作もやるようになって視野が広がった気がします。

映画館だからこそ伝わる緊張感

—自分で監督をすることもあるのではないですか。

宇野:気が向いたら、ですね(笑)。やりたい気持ちはありますが、行動に移すとなると、また話が変わってきます。

堀:私も映画は本当に好きで、なるべく映画館で観たいなと思っています。最近だと『存在のない子供たち』(ナディーン・ラバキー監督)がよかった。子どもが出ている映画が好きなんです。家族や生まれた国に影響を受けた子どもがどういうふうに自分の人生を歩んでいくのか。そんな子どもの顔を観るのが好きで、そういう映画を作ってみたいなという思いはあります。

—2人とも将来は映画監督かもしれませんね。最後に今回の劇場公開についてお勧めのポイントを教えてください。

堀:映画は映画館で観るように作っていると思うんです。だから音とか絵とか、映画館で観た方が届くものがあると思う。『歩けない僕らは』は宇野さんと落合さんが本当にいい表情をしているから、大画面で観た方がずっとお得ですよ(笑)。

宇野:本物のリハビリ施設で、本物の患者さんがいる中で撮影したのですが、その緊張感は大きいスクリーンだからこそ伝わってくると思います。ぜひ劇場で観ていただきたいですね。

 

プロフィール&ミニシア名物「靴チェック」!

【宇野愛海(うの・なるみ)】
栃木県出身。1998年生まれ。12歳で女優活動を始める。2009年、アイドルグループ「私立恵比寿中学」結成に加わるが、翌2010年に“転校”。岩井俊二プロデュースのテレビドラマ『なぞの転校生』(2014/テレビ東京)、映画『罪の余白』(2015/大塚祐吉監督)などを経て、『デスフォレスト 恐怖の森3』(2015/鳥居康剛監督)で初主演。

宇野さんの靴はドクターマーチンのシューズ。「冬はマーチン」と決めているそうで、「その他の季節は沖縄の島ぞうりかゆるいサンダルしかはいていません」。


【堀春菜(ほり・はるな)】
神奈川県出身。1997年生まれ。映画『ガンバレとかうるせぇ』(2014/佐藤快磨監督)の主演でデビュー。ほかに映画『空(カラ)の味』(2016/塚田万理奈監督)、『セブンティーン、北杜 夏』(2017/冨樫森監督)などに主演。2019年7~8月に台湾で行われた舞台『EATI 2019 in Taipei』に参加するなど、国内外問わず活躍の場を広げている。

堀春菜の靴堀さんは2足しか持っておらず、そのうちの1足がこれ。「あの日、下駄をはいていたんですが、ふっと鏡を見たときに、この服に下駄は変じゃない? って急に恥ずかしくなって、ヒカリエに行ってこの靴と出合いました」

 

 

作品・公開情報

『歩けない僕らは』

(2018年/日本/37分)
監督・脚本・編集:佐藤快磨
プロデューサー:登山里紗
撮影:加藤大志 照明:高橋拓
録音:吉方淳二 音楽:田中拓人
衣装:馬場恭子 ヘアメイク:橋本申二
出演:宇野愛海、落合モトキ、板橋駿谷、堀春菜、細川岳、門田宗大、山中聡、佐々木すみ江 ほか
©映画『歩けない僕らは』

『ガンバレとかうるせぇ』

(2014年/日本/70分)
監督・脚本・編集:佐藤快磨
プロデューサー:渡邊翔太
撮影:加藤大志 録音:内田達也
出演:堀春菜、細川岳、布袋涼太、柳沼侃、江國亮介、山城ショウゴ、石上真紀子、ミョンジュ ほか

 

 

【ストーリー】回復期リハビリテーション病院に勤める新人理学療法士の遥(宇野愛海)は、脳卒中で左半身不随になった柘植(落合モトキ)の担当になる。まだ若い柘植の投げやりな態度に、何とか生きる希望を持たせたいと張り切る遥だったが……。
併映の『ガンバレとかうるせぇ』は、高校のサッカー部でマネージャーをしている3年生の菜津(堀春菜)が、顧問の先生や部員たちから必要とされていないことに気づきつつ、それでも辞めずにチームを支えようともがく姿を描く。

配給:SPEAK OF THE DEVIL PICTURES

※2019年11月23日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開

 

◎ゲストライター
藤井克郎(ふじい・かつろう) 1985年、フジ新聞社に入社。夕刊フジの後、産経新聞で映画を担当する。社会部次長、札幌支局長などを経て、2013年から文化部編集委員を務め、19年に退職。共著に「戦後史開封」(扶桑社)、「新ライバル物語」(柏書房)など。
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