『眠る村』-謎に包まれた昭和のミステリーの真相に切り込む

  • 2019年01月29日更新

映画『眠る村』メイン画像今から60年近く前に起こった“名張毒ぶどう酒事件”。5人の女性が犠牲となり、村に住む一人の男が逮捕された。後に彼の死刑が確定したが、事件を巡っては不可解な謎が今もなお残る。本作は、この事件の真相を究明するために40年以上の取材に取り組んできた、東海テレビのドキュメンタリー劇場版である。第66回菊池寛賞、2017年日本民間放送連盟賞<特別表彰部門/放送と公共性>最優秀賞受賞。2019年2月2日(土)より、東京・ポレポレ東中野ほか全国順次公開。

世間を震撼させた「名張毒ぶどう酒事件」

映画『眠る村』サブ画像1

ここで「名張毒ぶどう酒事件」のおさらいをしておこう。昭和36年、三重県と奈良県にまたがる「葛尾(くずお)」と呼ばれる集落の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡。6日後当時35歳の奥西勝が自供し逮捕される。動機は「妻と愛人との三角関係の清算」。事件当初の村人たちの証言では、奥西以外が毒を入れる時間があった可能性も考えられた。だが、自白後なぜか「奥西しか犯人はいない」ことを示唆する証言に変わった。なお、奥西は逮捕後、「自白は強要されたもの」として無実を訴えている。

彼は一審で無罪となったものの二審では死刑判決を受け、昭和47年に確定死刑囚となる。残された家族は村を追われた。一貫して無罪を主張した奥西は再審を請求し続けるも、平成27年、八王子医療刑務所で89歳の生涯を閉じた。

閉鎖的な村社会の闇と司法の不可解さ

映画『眠る村』サブ画像2前述したように事件は多くの謎に満ちている。不自然な村人たちの証言の変化、確たる物証がないこと、自白の信憑性。また、奥西と愛人の関係は村の皆が知っていたことから、その動機にも疑問が残る。さらに、弁護団が奥西犯人説の矛盾を示す証拠を出しているにも関わらず、「自白は信用できるもの」として何度も再審が却下されていることも理解しがたい。

制作チームはそんな矛盾点や不可解な点を洗い出し、真実を探るべく、スタッフの引継ぎを行いながら長年にわたり取材を敢行してきた。作品中、「冤罪」という言葉は表立って出てこないが、何らかの圧力があったことは容易に想像できる。

今でも事件のことになると口を濁す、すでに高齢になった関係者たち。一見平和に見える村だが、半世紀前の事件に関しては深い闇に覆われているようだ。

真相はいまだ藪の中

映画『眠る村』サブ画像4

「長身で整った容貌の犯人(とされた男)が妻と愛人を含め5人の女性を殺す」という残忍さ、それにミステリー要素が加わり、当時は格好のゴシップであっただろう。だが、平成も終わろうとしている今、事件を思い出す人は少なくなった。死刑囚は死亡し、再審を引き継いだ奥西の妹は90歳近い。平成29年12月には第10次再審請求が棄却された。弁護団はその3日後に異議申し立てを行い、現在審理中だという。

担当裁判官のカットが長すぎるなど、演出に対する違和感がないわけではない。だが、この事件に再び人々の関心を向けさせ、真実が闇に葬り去られないようにするためにも、今この作品が公開される意義は大きい。

>> 『眠る村』予告編<<

▼『眠る村』作品・公開情報
(2018年/日本/96分)
東海テレビドキュメンタリー劇場 第11弾
ナレーション:仲代達矢
監督:齊藤潤一、鎌田麗香
プロデューサー:阿武野勝彦
音楽:本田俊之
制作・配給:東海テレビ放送
配給協力:東風
©東海テレビ放送

『眠る村』公式サイト

※2019年2月2日(土)より東京・ポレポレ東中野ほか全国順次公開

文:吉永くま

 

  • 2019年01月29日更新

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