吉永くま
『ブレイク・ビーターズ』-冷戦時代末期、東ドイツの若者たちはブレイクダンスに自由と希望を見た
1980年代末、東欧諸国の社会主義体制が次々と終わりを告げ、40年以上続いた東西冷戦は終結する。東西ドイツを隔てていたベルリンの壁の崩壊は、その象徴ともいえる出来事だった。その数年前、東ドイツに流入してブームを巻き起こしたのは、アメリカ発のブレイクダンスだ。本作の主役は、ブレイクダンスに魅せられたダンスチームの若者たち。チームは政府の監視・統制下に置かれるが、彼らはそうした状況に疑問を持つようになる。自由と希望を追い求める彼らの姿は、自分の好きなことに妥協しないことの素晴らしさを教えてくれるだろう。6月25日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー。
『若葉のころ』-セピア色の初恋が、あの映画の名曲とともに色づき始める
初恋の人から「会いたい」というメールが届いたら? そんな胸がときめく状況にひとひねり加えてみせるのは、これが長編初監督作となる台湾のジョウ・グータイ。『小さな恋のメロディ』の挿入歌でもあるビージーズ「若葉のころ」の旋律とともに、30年前の母親の初恋の思い出と、今を生きる娘の恋愛を交錯させながら描き出す。これまでMVを手掛けてきた監督の美しい映像とともに、甘く切ないトーリーは、一服の清涼剤のように爽やかな印象を残すだろう。5月28日(土)、シネマート新宿・シネマート心斎橋ほか全国順次公開。
『孤独のススメ』- すべて失った男が“何も持たない男”にもらった大切なものとは?
主人公は孤独な生活を送る真面目な男フレッド。そんな彼の人生が、言葉も過去もない男テオとの奇妙な出会いによって開かれていく。とぼけた笑いとしんみりした感動を与えてくれるオランダ発の人間ドラマ。
物語は静かなトーンで始まるが、いくつかのエピソードを絡ませながら終盤に向けて徐々に感動が高まり、クライマックスでそれが最高潮に達する。この興奮、ぜひ映画館で味わってほしい! 4月9日(土)、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー。
『ロブスター』-“おひとり様”は善か悪か? ギリシャ出身の気鋭監督が描く不条理な世界
パートナーを作ることを強要され、失敗すると動物に変えられてしまう近未来。このシュールな世界を作り上げたのは、これが初の英語作品となるギリシャ出身のヨルゴス・ランティス監督だ。コリン・ファレル扮する中年太りの冴えない主人公が、ゆるりと状況に適応していくのかと思いきや、物語は意外な方向へ進んでいく。そのほかレイチェル・ワイズ、レア・セドゥ、ベン・ウィショーなど、そうそうたる面々が出演。第68回カンヌ映画祭で審査員賞を授賞した。2016年3月5日(土)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次公開。
『キャロル』-1950年代、自分の心に正直に生きた美しき女性の愛の物語
原作は、『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』で知られるパトリシア・ハイスミスが別名義で発表し、ベストセラーとなった小説。1950年代のニューヨークを舞台に、生活レベルも年齢も違う2人の女性の愛の物語が描かれる。2月28日に授賞式が行われる第88回アカデミー賞には、主演女優賞(ケイト・ブランシェット)、助演女優賞(ルーニー・マーラ)など計6部門ノミネートされている。『エデンより彼方に』のトッド・ヘインズ監督。2016年2月11日(木・祝)より全国ロードショー
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『最愛の子』-3年前に誘拐された息子が母と慕うのは、犯人の妻だった
中国では、年間20万人の子どもが行方不明になっているが、その背景には国内に広がる経済格差や、昨年廃止が決定された一人っ子政策があるという。『最愛の子』は、そうした状況下で起こった実際の事件をもとに作られた。大切な息子を誘拐された両親、犯人の妻である育ての母親。その双方の愛情の深さ、葛藤、苦しみの大きさに圧倒されるだろう。『ラヴソング』『ウォーロード/男たちの誓い』のピーター・チャン監督作品。2016年1月16日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー!
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『きみといた2日間』―どん底状態の女の子がネットで恋活!?
ネットでの恋活が市民権を得て久しいが、現在アメリカでは結婚したカップルの3分の1がネットで出会うといわれている。本作の主人公は「仕事なし」「オトコなし」「部屋もなくなりそう」という、どん底状態の女の子。そんな彼女に予想外のことが起こり、新しい恋の予感が……という寒い冬にぴったりのラブストーリー。
『セッション』で注目されたマイルズ・テラー、人気上昇中のアナリー・ティプトン、TVドラマ『ゴシップガール』のヴァネッサ役ジェシカ・ゾーら、勢いのある若手俳優達が出演している。
12月23日(水・祝)より、新宿武蔵野館他にて全国公開
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『カミーユ、恋はふたたび』-今の記憶を持ってタイムスリップしたら人生をやり直せる?
今年は『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(’89)で、1985年からデロリアンが到着した記念すべき未来の年。この作品は(2012年製作だが)、人生に失望した中年女性が逆に現代から1985年にタイムスリップし、亡くなった両親や友人、そして自分を捨てた夫に再会する物語だ。人生をやり直す機会を得た彼女は軌道修正できるのか。切ないながらも、彼女の今後の人生の幸せを予感させるファンタジーだ。時計屋の主人役のジャン=ピエール・レオーがさすがの存在感を示している。
10月31日(土)新宿シネマカリテほか全国順次公開。
『ザ・ヴァンパイア~残酷な牙を持つ少女~』-斬新な視点が光るイランを舞台にしたヴァンパイア映画
東欧のイスラム世界にも吸血鬼伝説はあるものの、十字架や聖水など、キリスト教と関連するイメージが強いヴァンパイア。だが、注目のイラン系新人監督アナ・リリ・アミリプールは、チャドルに身を包み男たちに襲いかかる美しいヴァンパイアを誕生させた。モノクロ映像と全編を流れる音楽が印象的な本作は、デヴィッド・リンチや初期のジム・ジャームッシュの作品と比較されることが多いというが、その世界観は独特かつ斬新で高い評価を受けている。9月19日(土)新宿シネマカリテ他全国順次公開。
『犬どろぼう完全計画』-話題の韓国天才子役主演。キュートなコメディ作品
ある事情から車の中で生活する少女が、家ほしさのあまり富豪から犬を盗み、謝礼金をもらうことを計画。果たしてこの完全計画はうまくいくのか? 『ソウォン/願い』の天才子役イ・レや、『母なる証明』のキム・ヘジャ、FITSLANDのボーカル イ・ホンギなど、豪華キャストにも注目したい。韓国史上初の欧米小説の映画化作品。7月18日(土)より、シネマート新宿ほか公開。