『オカンの嫁入り』
- 2010年09月05日更新
恋愛映画だけがラブ・ストーリーじゃない。
母と娘の温かくて優しい、愛の物語。
大人になるに連れて、娘にとって母親は、友達に近い存在になっていくのかもしれない。教わるより教える事が徐々に増え、自転車の後ろに乗せるようになったり……と、母と娘の立場も時々逆転する。それでも相変わらず素直になれない部分はあるものだ。
関西出身の筆者も、母親の事を『オカン』と呼んでいる。
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『ずーっと、ずーっと、当たり前が続くと思っていた……のに』
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月子(宮﨑あおい)と陽子(大竹しのぶ)は、母ひとり子ひとりで仲良く暮らしてきた。そして、家族のように接する大家のサク(絵沢萠子)と、陽子の勤務先である村上医院の村上先生(國村準)が二人を支えるように取り囲む。
ある日の深夜、陽子が酔っ払って若い金髪の男・研二(桐谷健太)を連れて帰ってくる。「おかあさん、この人と結婚することにしたから」。
あまりにも突然すぎる出来事。とまどう月子をよそに、あっけらかんとしている陽子。
月子が生まれる前に死に別れた父・薫を「最初で最後の人」と言い続け、月子を育てる為だけに生きてきた。それなのに、突然連れてきた研二と三人で暮らそうと言い出すし、元板前だった研二も図々しく台所に立つ始末。勝手すぎる陽子に対して、居場所を失った月子は家を飛び出し、母と娘の日常が崩れ出した。
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「白無垢が着たい……」と、冗談半分に言った陽子。
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ある出来事をキッカケに、明かされる陽子の秘密。そして、月子に隠された過去。
自由奔放でありながら、娘を女手ひとつで大事に育ててきた母と、なかなか素直になれないけれど、母を思う気持ちは変わらない娘。
ぶつかり合って、わかり合うために、月子は大きな決心をする。
宮﨑あおいさんと大竹しのぶさんが、初共演とは思えないくらい絶妙な母と娘を演じている。東京出身である二人の違和感のない関西弁は、呉監督の「関西人に笑われない関西弁」という徹底したこだわりだ。チョイ役で出演している友近さんは、典型的な関西のオバチャンそのままである。そして、母の為に作るお弁当、食卓を彩る料理が、人と人とをつなぐ温もりを与えてくれる。
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当たり前に感じる日々。それこそが、幸せなんだ。
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▼『オカンの嫁入り』作品・公開情報▼
監督・脚本:呉美保
出演:宮﨑あおい、大竹しのぶ、桐谷健太、國村準
音楽:田中拓人 撮影:谷川創平(J.S.C.)/照明:金子康博/美術:吉田孝 録音:弦巻裕 音響効果:帆苅幸雄 編集:高橋信之/スクリプター:今西順子/助監督:山本英之/製作主任:森洋亮/助成:文化芸術進行費補助金/協力:東映京都撮影所/製作プロダクション・配給:角川映画/
©2010「オカンの嫁入り」製作委員会
2010年/日本映画/カラー/110分/ビスタサイズ/DTSステレオ
<オカンの嫁入り公式サイト>
2010年9月4日(土)、角川シネマ新宿ほか全国ロードショー!!
文・南野こずえ
- 2010年09月05日更新
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