2月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―

  • 2026年01月31日更新

2月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! あなたが観たいのは、どの映画!?

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2/6(金)公開『たしかにあった幻
2/6(金)公開『椰子の高さ
2/13(金)公開『ブゴニア
2/13(金)公開『道行き
2/20(金)公開『災 劇場版
2/20(金)公開『センチメンタル・バリュー
2/27(金)公開『Shiva Baby シヴァ・ベイビー
2/27(金)公開『ロビー! 4000億円を懸けた仁義なき18ホール


『たしかにあった幻』

臓器移植の現場で衝突する日本と西洋の死生観

神戸の臓器移植医療センターで働くフランス人のコリーは、日本での小児移植がなかなか進まないことに苛立っていた。私生活では旅先の屋久島で知り合った迅と同棲していたが、ある日突然、迅が姿を消す。警察のつてを頼って調べると、とうの昔に迅の家族からも捜索願が出されていた。『萌の朱雀』の河瀨直美監督が、『ファントム・スレッド』などのルクセンブルク出身、ヴィッキー・クリープスを主役に迎え、日本と西洋の死生観、倫理観の差異をテーマに圧倒的な映像で表現。臓器移植で命を永らえることに罪悪感を覚える日本人の湿っぽさに対し、コリーはあくまでも合理的に自らが信じる正しい道を押し通そうとする。その人間的な葛藤に屋久島の悠久の大自然を絡めることで、見る側にさまざまな感情を喚起する。実際の医療関係者も出演するリアルな臓器移植の現場も含めて、河瀨監督をはじめとする作り手のこの問題への深い問題意識を感じ取った(藤井克郎)

2026年2月6日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2025年/フランス、日本、ベルギー、ルクセンブルク/115分)英題:Yakushima‘s Illusion 監督・脚本・編集:河瀨直美 出演:ヴィッキー・クリープス、寛一郎、尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏 ほか 配給:ハピネットファントム・スタジオ © CINÉFRANCE STUDIOS – KUMIE INC – TARANTULA – VIKTORIA PRODUCTIONS – PIO&CO – PROD LAB – MARIGNAN FILMS – 2025


『椰子の高さ』

新婚旅行直前に婚約者と別れた女性の傷心の旅路

『唐人街探偵』シリーズなどの撮影で知られる中国出身の杜杰(ドゥ・ジエ)初監督長編で、過去と幻想が入り交じる幽霊譚を、日本を舞台に日本人キャストによる日本映画として織り上げた。新婚旅行目前で婚約者の青木と別れた菅元は、傷心のまま新婚旅行で行くはずだった四国の足摺岬を一人で訪れる。人里離れた宿は、写真家だった恋人の凛を自殺で失った青年、持田が経営していて、その夜、離れの食堂で言葉を交わすが……。菅元と青木、凛と持田それぞれの思い出が現在と交錯し、しっとりとした映像で描き出す。特に食堂でのノーカット長回しの会話場面や、大都会の東京と寂れた海辺との対照など、自ら撮影も手がけた杜監督の本職ならではの切り取り方が美しく、ありきたりの日本の風景がとても神秘的に目に映る。霊の正体など、いかようにも解釈できる余白の多さも含めて、新たな日本映画の可能性に立ち会ったような気がした。藤井克郎

2026年2月6日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2024年/日本/99分) 監督・脚本・撮影・美術・編集:杜杰(ドゥ・ジエ) 出演:大場みなみ、田中爽一郎、小島梨里杏、渋谷盛太 ほか 配給:ギークピクチュアズ ©D·UNION FILM INC. 2024


『ブゴニア』

痛さと笑いが詰まったごった煮サスペンス

『哀れなるものたち』のヨルゴス・ランティモス監督が、『ミッドサマー』のアリ・アスター監督や『パラサイト 半地下の家族』の製作陣などのプロデュースで、あらゆる娯楽要素と映像表現が詰まったごった煮的なサスペンスを編み上げた。製薬会社のトップを務めるミシェルは、車で帰宅した自宅前で覆面の男2人に連れ去られる。主犯格のテディはミシェルを宇宙人だと決めつけ、拷問を加えて真実を吐かせようとするが……。宇宙船との交信を絶つためにミシェルを丸刈りにするなど、痛々しい場面の連続の一方、テディに巻き込まれてよく理解せずに犯行に加担するドンをはじめコミカルな描写も多く、顔を背けたり笑い転げたりとせわしない。チープなのかゴージャスなのか、何とも言いようのない空気感を漂わせつつ、最後はほんのちょっぴり教訓的な味つけがなされているのも、なるほどランティモス監督ならではの風刺が利いている。(藤井克郎)

2026年2月13日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2025年/アイルランド、イギリス、カナダ、韓国、アメリカ/118分/PG12)原題:Bugonia 監督:ヨルゴス・ランティモス 出演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、エイダン・デルビス ほか 配給:ギャガ、ユニバーサル映画 ©2025 FOCUS FEATURES LLC.


『道行き』

時の流れと記憶を慈しむように紡ぐモノクロの映像詩

実験的な意欲作『おばけ』でPFFアワードのグランプリを受賞した中尾広道監督が、PFFプロデュース作品として完成させた初の商業映画。奈良県御所市の古い町並みを背景に、穏やかな時の流れをモノクロのしっとりとした画面で紡いだ。この町の古民家に引っ越してきた駒井は、元所有者の梅本に町の歴史について話を聞きながら、ゆっくりとリフォームを進めていた。鉄道の電車区や古い時計店、文楽の舞台など、ドキュメンタリー風の情景を織り込みながら、映画は決して止まってはくれない時の流れを、古きを慈しむように記録にとどめようとする。梅本の少年時代と現代とを途切れさせずに描き出すショットが何ともいとおしく、中尾監督の過去への敬意とともに、映画という芸術表現が有する記憶装置としての矜持をひしひしと感じる。ラストの余韻に浸りながら、過去をどう未来へつなげていくのか、という課題を問いかけられているような気がした。(藤井克郎)

2026年2月13日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2025年/日本/80分)英題:Michiyuki -Voice of Time 監督・脚本・編集:中尾広道 出演:渡辺大知、桐竹勘十郎、細馬宏通 ほか 配給:マジックアワー ©2025 ぴあ、ホリプロ、日活、電通、博報堂、一般社団法人PFF


『災 劇場版』

最愛の人を何らかの災いで失うことの理不尽さ

『宮松と山下』の監督集団「5月」によるWOWOWの連続ドラマを再構築。不条理に命を奪われた人たちの不思議な連関性を不気味な描写でつづった。横浜で母親と2人で暮らす高校生の祐里にとって、塾の数学講師だけが唯一の理解者だった。だがある日、祐里は変わり果てた姿で発見される。彼女の髪の毛には1カ所、不自然に切られた跡があった。ほかに福岡、石川、宮城、千葉と、場所もシチュエーションもばらばらのエピソードが絡みながら展開されるが、いずれの場面にも香川照之演じる男が映り込む。果たしてこの男は同一人物なのか、という興味も含めて、謎めいた物語群が謎のままに進行。ある犠牲者の夫のせりふにあるように、彼らの死は自然災害の被害者と同じで、自殺だろうが事故だろうが殺人だろうが、最愛の人を失ったことには変わりがない。そんな突然の喪失という理不尽さを、斬新な表現で描出した「5月」の関友太郎、平瀬謙太朗両監督の感性に震えた。(藤井克郎)

2026年2月20日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2026年/日本/128分) 監督・脚本・編集:関友太郎、平瀬謙太朗 出演:香川照之、中村アン ほか 配給:ビターズ・エンド ©WOWOW


『センチメンタル・バリュー』

家族の歴史が刻み込まれた家が見つめる葛藤

ノルウェーを拠点に活動する『わたしは最悪。』のヨアキム・トリアー監督による家と家族の物語で、2025年のカンヌ国際映画祭では最高賞に次ぐグランプリを獲得した。オスロの実家で独り暮らしだった母が亡くなり、残されたノーラとアグネスの姉妹は、長く音信不通だった父、グスタヴと久しぶりに顔を合わせる。映画監督のグスタヴは15年ぶりの新作を舞台俳優のノーラの主演で撮りたいと考えるが、娘は拒否。代役として父が選んだのは、ハリウッドで活躍するアメリカ人のレイチェルだった。映画は、この家に刻み込まれた4世代にわたる家族の歴史を絡めつつ、父と娘の表現者同士の葛藤をしみじみとした描写でつづってゆく。家族に受け継がれる不安定な精神性と、レイチェルという新しい血の進入を、常に家からの目線で描いているのが斬新で、時間の飛躍でふくよかな映像世界を構築したトリアー監督の深い表現力にはっとさせられた。(藤井克郎)

2026年2月20日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2025年/ノルウェー/133分)英題:SENTIMENTAL VALUE 監督・脚本:ヨアキム・トリアー 出演:レナーテ・レインスヴェ、ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテル・リッレオース、エル・ファニング ほか 配給:NOROSHI、ギャガ © 2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINÉMA / FILM I VÄST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE


『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』

同性の元カノとパパ活の今カレと葬式で鉢合わせ

映画『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』メイン画像

新鋭エマ・セリグマン監督の長編デビュー作。大学卒業間近のダニエルは、誰が亡くなったのか知らないままユダヤ教徒の親戚のお葬式(シヴァ)に参列。親類縁者から、ロースクールに合格した幼馴染で元カノのマヤと比べられたり、パッとしない卒業後の進路や容姿について詮索されたりと居心地が悪い思いをする。そこに、パパ活相手のマックスが、美しい実業家の妻キムと赤ん坊をとともに現れ、ダニエルは追い込まれ……。舞台はオープニング以外ほぼ故人の家、時間も葬式の日の数時間に限定される中、ダニエルの心中は、様々な焦りや苛立ち、嫉妬など、ネガティブな感情で崩壊寸前。気まずさが画面を覆い尽くすが、あまりの救いようがなさが滑稽に転じていく。鬱陶しい家族や知人の中でも、特に目を引くのは独特の存在感を持つある人物。空気を読まないその言動で人々をさらに追い詰める様子は、ブラックコメディどころかサイコホラーのようでもある。(吉永くま)

2月27日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/アメリカ、カナダ/78 分)原題:Shiva Baby 監督・脚本:エマ・セリグマン 出演:レイチェル・セノット、モリー・ゴードン、ダニー・デフェラーリ ほか 配給:SUNDAE © 2020 SHIVA BABY LLC. All Rights Reserved.


『ロビー! 4000億円を懸けた仁義なき18ホール』

古今東西変わらない社会を皮肉る韓国コメディ

映画『ロビー! 4000億円を懸けた仁義なき18ホール』メイン画像

韓国のスター、ハ・ジョンウ主演&監督作。小規模テック企業代表のチャンウクは、倒産の危機から逃れるため、苦手なロビー活動の実施を決意。巨額の国家プロジェクトに参入するため、入札のキーパーソンとなるチェ室長を相手に、人生初の接待ゴルフを計画する。室長の推しのプロゴルファー・セビンを招くことにも成功したが、当日、室長の上司で妻の長官たちが居合わせ、現場は大混乱に陥る……。会社を立て直すため、生き残るために、プライドを捨て、ウソをつき、権力者に媚を売らなければならないロビー活動という名の接待。太鼓持ち、意地悪なライバル、鼻もちならない大臣、セクハラ親父など、既視感のある人物たちをコミカルに描きながら、古今東西変わらない社会を揶揄しており、何とも皮肉が効いていて小気味よい。(吉永くま)

2月27日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2025年/韓国/106分)原題:로비、英題:LOBBY 監督・脚本:ハ・ジョンウ 出演:ハ・ジョンウ、キム・ウィソン、カン・ヘリム ほか 配給:日活/KDDI ©2025 MICHIGAN Venture Capital, WYSWYG Studio, WALKHOUSECOMPANY & FILMMOMENTUM,All Rights Reserved

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