『ルナの子供』

  • 2010年01月06日更新

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第1話『彼女の物語』、第2話『美月の物語』、第3話『ヒカリの物語』 ― 3編の物語からなるオムニバス『ルナの子供』は、鈴木章浩監督が8年の歳月をかけて産み落とした作品だ。

『彼女の物語』 ― 夜の街を彷徨っていた彼女は、ひとりの男に出逢った。どことなく得体の知れないその男に惹きつけられるものを感じて、彼女は彼の部屋へついていく。男は末期癌に侵されていて、その余命は残りわずかだった。実は、「彼女」の体と過去にも、ある苦痛が宿っていた。

『美月の物語』 ― レズビアンの美月は、年下の派遣社員・マホとつきあって2週間が経つ。ある日、美月はマホの部屋で男の写真を見つけてしまった。どうやら、マホの恋人らしい。「彼と別れる」と、マホは言う。しかし、美月は、「そんな必要はない」と理解を見せる。マホを束縛しない自分の真意に、美月はまだ、自身でも気づいていなかった。

『ヒカリの物語』 ― ライターのヒカリは、幼い娘と、失業中の夫との、3人暮らし。ヒカリはなにかと都合をつけて、若い男の子・内山の部屋を、夫に内緒で訪れている。彼に50万円を貸しているヒカリ。少なくとも、借金が返済されるまでは、内山とつながっていることができる。そんな折、ヒカリの後輩にあたる女が、「リスト・カットをしている」とうちあけてきた。

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「子供の生まれない関係を描きたかった」という鈴木監督。『ルナの子供』の3人の主人公が、それぞれの相手と紡いでいる関係に、新たな命が宿る可能性はない。

『彼女の物語』の男女には、具体性や因果の気配がないのに、ふたりの心がぴったりと重なる瞬間が見える。

『美月の物語』の女たちは、「ものわかりがよいこと」と「臆病」は紙一重だと教えてくれる。

『ヒカリの物語』の登場人物たちは、「平気」と「平和」を装うことで、日常に問題はないと自らを欺こうとしている。

それぞれの主人公たちの心底で、「自分の存在価値」を見いだす変化が起こる。

『ルナの子供』は、2010年1月9日よりシネ・ヌーヴォX(大阪)にて、1月23日より名古屋シネマテークにて、それぞれロードショー予定。

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▼『ルナの子供』作品情報
日本/2009年/100分
監督:鈴木 章浩(SUZUKI Akihiro)
出演:佐伯佳奈杷 田中冬星 奥真紀子 中嶋たまみ 岩元英理 北澤彰斗 他

公式サイト

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文:香ん乃
改行

  • 2010年01月06日更新

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