『結び目』 小沼雄一監督×赤澤ムックさん インタビュー

  • 2010年06月25日更新

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小沼雄一監督の新作『結び目』が、2010年6月26日(土)よりシアター・イメージフォーラム(東京)にてモーニング&イブニング・ショー。

公開を記念して、小沼監督と主演の赤澤ムックさんにお話を伺ってまいりました!

おふたりからの動画メッセージもありますよ!

― 赤澤さんが演じる主人公の浅尾絢子は、禁断の恋を背景に、義父の介護という問題も抱えている専業主婦。リアリティの強さが感じられる物語ですが、小沼監督はどのような思いで本作を撮られましたか?

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小沼雄一監督(以下、小沼)
リアリティという点で言いますと、「今、現在、このときに暮らしている人たちがいるのだ」ということがベースとしてあります。その中で、過去の事件をきっかけに、登場人物たちの人間関係に波風が立つ、と考えて作った映画なので、ご覧くださるみなさまには、「自分たちに近い人間たちを描いた物語だ」という感覚を持って観ていただけたら嬉しいです。

― 本作の脚本を初めて読んだときのご感想は?

赤澤ムックさん(以下、赤澤) 脚本の段階では、当然ながら、まだ動いている画がないので、「こんなに淡々とした内容で大丈夫なのかな」と感じましたが(笑)、だからこそ、今までに観たことのない映画になるのではないか、と思いました。
リアルな世界を描いた物語は、ドラマティックな部分が表立っては目立ちませんが、そのドラマティックな部分が、お客さまに伝わって、おもしろがっていただける作品になったらすごいことだな、と感じたんです。

― 赤澤さんは、劇団「黒色綺譚カナリア派」の主宰として、自ら舞台の脚本・演出をなさっています。今回は映画というジャンルで、他者の脚本・演出のもとで主人公を演じたわけですが、ご自身が舞台演出を手がける際と意識的な違いはありましたか?

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赤澤 意識は完全に切り替わっていたので、まったく違いましたね。「いかに監督の手駒になれるか」ということを考えて演じました。作り手側のスタッフに対して、「好きにしてください」というスタンスになっていたので、たとえば、「自分だったら、このような脚本を書いて、このように演出する」といったような気持ちは一切生まれませんでしたし、出そうとも思いませんでした。
絢子の過去の恋の相手である啓介役の川本淳市さん、啓介の妻・茜役の広澤草さん、絢子の夫・雁太郎役の三浦誠己さん、そして、私と、メイン・キャストが4名いましたが、全員が全員、我を張るのではなくて、それぞれの役割を担って演じないと結ばれない作品になると思って臨んでいました。
共演者のみなさんとは、もちろん、コミュニケーションはありましたが、「このシーンは、このように演じよう」というような打ち合わせは特にしないで、それぞれが自分の役に責任を果たすという感じでした。各々がシビアに、自分の役に賭けるものを持ちながら、ある意味、一丸となって取り組んでいたと思います。共演者のみなさんの役に対する姿勢には、本当に助けられました。

― 赤澤さんと一緒にお仕事をなさったご感想を聴かせてください。

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小沼 監督としての立場から言いますと、赤澤さんが普段、作・演出という立場にいらっしゃるという点に、とても助けられた部分があります。
普通、俳優は自分の演技に集中しています。もちろん、それは大切なことですが、赤澤さんの場合は、ご自身の演技に集中しつつ、現場全体のバランスを考えてくださるので、そういう意味で、とても助かりました。
絢子を演じていただくにあたって、演出の上で具体的な話は、敢えてしないようにしました。今回は、赤澤さんを含めて、舞台や映画でのご経験が豊かなキャストさんが揃っていたので、みなさんの魅力をどのように引きだすか、ということが作り手としては重要だったんです。具体的に演出をつけてしまうと、かえって、もったいないんですよ。なので、撮影の過程を経ながら、共演者同士の演技が徐々に作られていくのを、言わば「観察」するような立場で撮りました。

― 専業主婦の絢子は、過去の恋の相手、現在の夫、そして、介護が必要な義理の父親と、三人の男性との問題を抱えたキャラクターでした。絢子を演じたご感想は?

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赤澤 主婦という立場は、女優をやるよりも大変だな、と思いました(苦笑)。
本作では、川本さんの演じた啓介という過去の恋の相手がいたわけですが、そういう存在がいないとしても、主婦はひとりで何役もこなさなければ生活がまわらないのだ、ということを実感しました。主婦は、「(独身の女性のように)仕事が終わったら、自分の顔になる」というわけでもないと思いますので、自分の時間を作るのも難しいでしょうし、そういう意味では、絢子を演じながら身につまされました。

― 本作は、ビデオカメラではなく、デジタル一眼レフカメラのニコンD90を使って撮影されていますが、このカメラを使った理由は?

小沼 撮影の早坂伸さんが、ニコンD90でショート・ムービーを撮影した経験があったので、本作でもチャレンジしみよう、という経緯でした。ニコンD90は本来、(静止画の)スチール用のカメラなので、動画を撮影にするにあたっての制約はいろいろとあるのですが、普通のビデオカメラとは違うテイストの映画になりうるので、挑戦してみたんです。
現場では、カメラが熱を持つと撮影をとめなくてはならないので、「熱くなってきたら、別のカメラに交換する」といったような苦労は多々あったのですが、ビデオカメラとはまったく違う映像になるので、とても貴重な経験でした。
実は、次回作はキャノンのデジタル一眼レフカメラで撮影をしたんです。メーカーが変わると、映像もまったく違うので、おもしろいですよ。

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― 2010年の4月に撮影された本作ですが、現場での印象的なエピソードはありましたか?

赤澤 森の中で、川本さんとふたりで撮るシーンがあったのですが、結構肌寒かったので、みんなでウィンドブレーカーなどを着こんで厚着をして、ごそごそと移動していたんです。そうしたら、山の中を散歩していた子供が、私たちを見て逃げました。怪しい一団に見えたのかもしれませんね(笑)。

― 今後のご活動につきまして、告知をお願い致します。

小沼 『結び目』のあとに、『nude』という作品を撮りまして、現在、編集中です。AV女優のみひろさんがAVを引退するのですが、彼女の自伝的小説が原作の青春映画です。2010年9月にシネマート新宿(東京)での公開が決定しています。

赤澤 私が主宰する劇団「黒色綺譚カナリア派」の第12回公演『悪役志願』が、2010年8月20日(金)~26日(木)に、座・高円寺1(東京)にて上演されます。劇団「東京ヴォードヴィルショー」の市川勇さんをお招きして公演します。
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musu_025 ▼小沼雄一(おぬま ゆういち)監督 プロフィール
1965年12月3日生まれ。茨城県出身。大学卒業後、今村昌平監督が創設した日本映画学校に入学。1995年、同校の卒業制作として監督した『チャンス・コール』が今村昌平賞を受賞。日本映画学校卒業後、助監督として経験を積んだのち、『自殺マニュアル2 中級編』で商業映画監督デビュー。主な監督作品は、『AKIBA』、『夏の思い出』、『童貞放浪記』、『都市霊伝説 心霊工場』等。『結び目』の公開が2010年6月26日に、『nude』の公開が2010年9月に、それぞれ控えている。パソコンのプログラミングが得意で、オンラインソフトの製作者という顔も持つ。
●公式サイト:O’s Page

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musu_019 ▼赤澤ムック(あかざわ むっく)さん プロフィール
12月17日生まれ。北海道出身。2003年に劇団「黒色綺譚カナリア派」を創立。同団の作・演出を手がける一方で役者としても活動しており、客演も多数。近年、映像作品へも活躍の場を広げており、主な映画出演作は、『スパイ道2 <スパイ求ム~憧れのスパイ・不二子~>』、『かさぶた姫』、『曲がれ!スプーン』。主演作『結び目』の公開が2010年6月26日に控えている。
●公式ブログ:黒色綺譚カナリア派 赤澤ムック戯れ随筆
所属事務所公式プロフィール
「黒色綺譚カナリア派」公式サイト

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★『結び目』公開初日舞台挨拶、開催決定!★
●日時:2010年6月26日(土) 11:00の回の上映前
●場所:シアター・イメージフォーラム(東京)
●登壇者:赤澤ムックさん 川本淳市さん 広澤草さん 三浦誠己さん 小沼雄一監督
※当サイトでは初日舞台挨拶を取材予定ですので、リポート記事をどうぞお楽しみに!
また、公開期間中にトーク・イベント等が予定されています。詳しくは、『結び目』公式サイトをご参照ください。
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★『結び目』小沼雄一監督と赤澤ムックさんより動画メッセージ★

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★プレゼント:小沼雄一監督と赤澤ムックさんの直筆サイン入り『結び目』ポスター★

musu_082 小沼監督と赤澤さんの直筆サイン入り『結び目』ポスターを、
抽選で1名さまにプレゼント
致します。

※このプレゼント企画は終了致しました。

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▼『結び目』作品・公開情報
2009年/日本/91分
監督:小沼雄一
出演:赤澤ムック 川本淳市 広澤 草 三浦誠己
辰巳啄郎(友情出演) 上田耕一 他
プロデューサー:小田泰之
脚本:港 岳彦
撮影:早坂 伸(J.S.C)
音楽:宇波 拓
製作・配給:アムモ
コピーライト:(C)2009 アムモ
『結び目』公式サイト
※2010年6月26日(土)より、シアター・イメージフォーラム(東京)にてモーニング&イブニング・ショー。

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取材・編集・文:香ん乃 スチール撮影:細見里香 動画撮影:道川昭如
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