『聖将の鍬』

  • 2010年06月16日更新

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村田のおじいちゃんが大切にしている鍬が盗まれた!?

東京は多摩の、とある地方都市 ― 若くして農業を営んでいる畑中仁と、酒屋で働く幼なじみの水島観子は、もちろん、しっかり仕事をしているけれど、退屈を持て余してもいる。そんなある日、地域の長老のひとりで、仁と同じく農業に従事する村田著衛門の鍬が何者かに盗まれるという事件が起こった。著衛門が言うところによると、その鍬は、日露戦争の英雄で「聖将」こと乃木希典将軍ゆかりの鍬とのことだ。「それは一大事!」と奮起した観子は、気乗りしない様子の仁の首根っこをひっつかんで、素人探偵さながら、「聖将の鍬」のゆくえを調査し始めるが……。

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自主映画制作団体「思春期ハイセンス」が手がけた初長編となる本作は、コメディ・タッチで軽やかな、ライト・テイストのミステリーである。

山段智昭演じる仁と、石栗みどり演じる観子が、「友情以上恋人未満」を連想させる、どたばたなパートナーシップを発揮して、「もしかしたら組織的陰謀かもしれない事件」の解明に奔走する。まるで季節はずれの台風のように、周囲を騒動へと巻きこみながら。

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メイン・キャストの山段智昭と石栗みどりは、フレッシュな若手の役者で、その瑞々しさが魅力である。ふたりが体現した仁と観子は、「腐れ縁とも言えるけれど、互いが気になってたまらない」という雰囲気がほほ笑ましくて、鍬のゆくえは当然ながら、ふたりの関係が今後、どのように発展するのか、という点にも興味をそそられる。筆者としてはぜひ、仁と観子が素人探偵を務めるコージー・ミステリ・ムービーとして、シリーズ化を希望したいくらいだ。

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制作の「思春期ハイセンス」は、2004年に発足して以来、「好きなものを好きなように撮る」というスタンスを保ち、映画のみならず、PV制作やネットTV配信等も手がけている。代表の佐田錦之介、村井瑛二、村松光、石江ケイシの4名からなるこの団体は、「作品ごとにスタッフの役割を決定する」という方針をとっている点が独特だ。

『聖将の鍬』は、「思春期ハイセンス」が初めて、キャストを外部から募集して、オーディションにて決定した作品でもある。プロとして活躍する出演者陣を得て完成した、待望の初長編作 ― 自主制作映画の魅力を知っているかたは、確乎たる新たな個性を発見するために、自主制作映画になじみのなかったかたは、商業映画にはない独自の吸引力を知るために、ぜひ、下記の上映会まで足を運んでいただきたい。

★自主映画制作団体「思春期ハイセンス」作品上映会★
●日時 2010年6月19日(土) 10:00~15:00
●場所 高田馬場BABACHOPシアター(東京)
●タイムスケジュール
・さいしょの部(11:00~12:00)
11:00~14:00 『聖将の鍬』(新作)
11:40~12:20 『悪くない天気だ』
・つぎの部(12:40~14:10)
12:40~13:00 『殺笑ステータス』
13:00~13:25 『破滅を抱いて南へ向かう』
13:25~14:10 『聖将の鍬』(新作)
※入場無料のカンパ制。『聖将の鍬』以外の上映作品は、当日、変更の可能性あり。

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▼『聖将の鍬』作品情報
日本/2009年/40分
監督:村井瑛二
脚本・照明:佐田錦之介
演出・撮影:村松光
音声:石江ケイシ
出演:山段智昭 石栗みどり
新倉益夫 後藤亜姫 辻和朗
大島明子 上田竜矢 他
制作:思春期ハイセンス
コピーライト:(c)思春期ハイセンス
「思春期ハイセンス」公式サイト

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『聖将の鍬』 思春期ハイセンス×山段智昭さん×石栗みどりさん 座談会

文:香ん乃
改行

  • 2010年06月16日更新

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