タモリが“4ヶ国語マージャン”披露『喜劇役者たち 九八(クーパー)とゲイブル』
- 2010年05月25日更新
5月23日神保町シアターにて、タモリ出演の『喜劇役者たち 九八とゲイブル』(78)上映後、瀬川昌治監督らによるトークショーが行われた。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったという、タモリの芸とその魅力などが語られた。
日曜の夜の回であるにもかかわらず、会場は満席。瀬川昌治監督と編集・演出家の高平哲郎さんをゲストに迎え、娯楽映画研究家の佐藤利明さん(上の写真)の司会によってトークショーが進められた。
「改めて当時のタモリさんのすばらしさを実感しました。赤塚不二夫さんのアイデアで生まれたシーンもあり、高平(哲郎)さんにも助けてもらって、面白い映画ができたと思います」と瀬川監督。
本作は、“4ヶ国語マージャン”“寺山修司のモノまね”“北京放送・モスクワ放送”など、
タモリがブレイクするきっかけとなった芸が多数披露されている。
○映画を撮ったきっかけについて
瀬川監督(写真右):「井上ひさしさんの原作を読んだら、すごく面白くて。最初はフランキー(堺)とタモリさんの組み合わせで考えていたんですが、いろんな事情で愛川欽也さんになって。愛川さんも当時勢いがありましてね。
浅草の芸人の世界が好きで、『正常と非正常との境にいる』という井上さんの芸人観が面白かったんで、その辺を出したかったんです」。
佐藤さん(写真左):「タモリさんは浅草芸人ではないし、そういう芸人さんの経歴とも違う方でしたが、ちゃんと成立しているところが面白かったです。
演技者タモリではなく、怪優ですよね。得体の知れなさみたいなものが出てますよね」。
瀬川監督:「そうですね。テレビから出てきた芸人さんっていうのは、それまでの喜劇俳優とはちょっと違ったんですけど、タモリさんなんかは個性もちゃんとあって、ギャグも持ってる方だったので面白いと思いましたね」。
○デビュー当時のタモリについて
当時、赤塚不二夫やタモリと『面白グループ』を結成していた高平さん(写真右)が、デビュー当時のタモリについて、次のように語った。
「『空飛ぶモンティ・パイソン』(日本版)というテレビ番組が始まって、それが最初のレギュラーだったんですが、そこで初めて“4ヶ国語マージャン”をやったんです。
またそこで、レイバンのサングラスをかけるようになったり、髪をセンター分けにしたり、
いろんなことが決まっていったんです。77年に最初のアルバム『タモリ』が出たんですよ。
“4ヶ国語マージャン”も収録されています。基本的は、韓国人と中国人とベトナム人とアメリカ人バージョンなんですが、たまに昭和天皇が入ったりするんですね。(会場爆笑)
でも、レコードでそれはまずいだろうということで、寺山修司が入るわけです。
78年はちょうど、いろんな局でタモリを使いたがっていた頃ですね」。
佐藤さん:「タモリさんの寺山修司さんのモノまねは新しかったですよね。ただのモノまねじゃなくて、中身や状況なんかもマネていたところが(笑)」。
○喜劇とストリップを撮る理由
佐藤さん:「喜劇映画監督として、浅草芸人の物語をどう描くかということも重要ですよね。本作では、芸人が狂気というか常軌を逸していくシーンで、体制に対する反骨精神みたいなものが描かれてますよね」。
瀬川監督:「そうですね。芸人と狂気をテーマにしていて、愛川さん演じる九八(クーパー)については、狂気が芸人を作っていくみたいなところを描いています。当時はポルノ弾圧みたいなところもあって、そういうのも僕はいろんなところで風刺してたんで」。
佐藤さん:「瀬川監督の映画って、ストリップのシーン多いですよね? (ストリッパー役の)あき竹城さん、すごかったですね。体張ってるし、主役がいなくても(そのシーンが)もつんですよね」。
瀬川監督:「そうですね。ちょっとあるシーンを面白くしたいなっていう時に、当時は(そういうバイプレイヤーが)たくさんいたんですよね。あき竹城とかね、すごいボインだし(笑)。喜劇俳優っていうのは、すばらしい演技者なんですよね」。
最後に、「喜劇とは、監督にとって何ですか?」という問いにたいして、瀬川監督は、「自分にとって、喜劇はずっと勉強なんです」と答え、トークショーを締めくくった。
▼『喜劇役者たち 九八とゲイブル』(78)
数々の喜劇人を輩出した浅草のストリップ小屋を舞台に、タモリと愛川欽也がコンビの悲喜こもごもを演じる。原作は舞台となったフランス座出身の井上ひさし。
○上映予定
5/27(木)12:00~
5/28(金)4:30~
会場:神保町シアター(公式サイト)
「喜劇映画パラダイス」で上映される、瀬川監督の他作品。
▼『正義だ!味方だ!全員集合』(75)
ドリフ映画最終作。初々しい志村けんや、キャンディーズも登場。
出演:ザ・ドリフターズ、榊原るみ、ミヤコ蝶々
○上映予定
5/27(木)4:30~
5/28(金)2:15~
▼『喜劇 男の泣きどころ』(73)
笠智衆がポルノ映画の監督を、太地喜和子がストリッパーを演じる。
出演:フランキー堺、太地喜和子、藤岡琢也、春川ますみ、石橋蓮司、左とん平、笠智衆
○上映予定
5/29(土)3:30~
5/31(月)6:45~
6/2(水)12:00~
6/3(木)2:15~
会場:神保町シアター(公式サイト)
取材・文/おすず
改行
- 2010年05月25日更新
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