『クロッシング』〜知られざる脱北の実情

  • 2010年04月15日更新

クロッシング2007年、北朝鮮・炭鉱の町に住む三人家族。
炭鉱で働くヨンスは、妻と11歳の一人息子ジュニとともに貧しいけれど幸せに暮らしていた。

しかし、妊娠中の妻が肺結核で倒れてしまう。
風邪薬も容易に手に入らない北朝鮮では、隣国の中国で手に入れるしかなかった。

ヨンスは薬を得るため、決死の覚悟で国境を超える。
中国で身を隠しながら不法労働に就いている間に、夫の帰りを待っていた妻が息を引き取る。孤児になった息子のジュニは、父を捜しに国境の川を目指す。

クロッシング本作は“北京駐在スペイン大使館進入事件”(02)がモチーフとなっており、同時に、知られざる市井の人々の「日常」と「感情」が丁寧に描き出された、数少ない貴重な作品である。

苛酷な実情も描写されているが、観客の精神的負担を配慮した映画的な演出と映像美に、「一人でも多くの人に実情を知ってほしい」という作り手の執念と良心が感じられる。

また、清廉で純朴な登場人物の人柄や一途さに心打たれ、北朝鮮の人々に対して漠然と抱いていたイメージや認識が大きく変わる。父親ヨンスは韓国の実力派イケメン俳優・チャ・インピョが演じ、子役シン・ミンチョルの「母をたずねて三千里」のマルコを思わせる、健気な演技に涙が止まらない。

クロッシング「生きるため、命を賭けて国境を超える人々」
これは未だ進行形の話で、世界的なテーマにもなっている。
本作は、“映画だからこそ描き出せる試み”が高く評価され、アカデミー賞外国語映画賞部門の韓国代表作品(09)として話題をよび、すでに公開されている韓国では100万人の動員数を記録している。

満を持して、いよいよ日本でも、4/17(土)から渋谷・ユーロスペースにて公開がはじまる。

▼「クロッシング」作品詳細
クロッシング2008年/韓国/107分
出演:チャ・インピョ、シン・ミョンチョル、ソ・ヨンファ、チョン・インギ、チュ・ダヨン
監督:キム・テギュン
脚本:イ・ユジン
提供:「クロッシング」パートナーズ  
配給:太秦
(C)2008 BIG HOUSE / VANTAGE HOLDINGS. All Rights Reserved. 
公式HP:http://www.crossing-movie.jp

▼関連記事
「クロッシング」記者会見で、脱北女性(23歳)が体験を語る
『クロッシング』公開初日に、横田滋さん・早紀江さんご夫妻が来場しました。

文/おすず
改行

  • 2010年04月15日更新

トラックバックURL:https://mini-theater.com/2010/04/15/3920/trackback/