『スモーク・アンド・ミラーズ 1000の顔を持つスパイ』-スペイン全土を驚愕させた実際の巨額詐欺事件を映画化!

  • 2017年02月25日更新

スペインのアカデミー賞といわれるゴヤ賞で10冠を獲得した「マーシュランド」のアルベルト・ロドリゲス監督最新作。1994年にスペイン治安警備総局局長が巨額横領の末国外逃亡し、同国を揺るがした「ロルダン事件」を描く。この逃亡劇を手助けしたフランシスコ・パエサは元スパイ。ほかにも武器商人、銀行家などさまざまな顔を持つ。本作は、いまだ多くの謎に包まれている彼が、原作者マヌエル・セルドンに語った実話に基づいている。「未体験ゾーンの映画たち 2017」上映作品。


国内史上最大の詐欺事件で暗躍した元スパイ
かつてスペイン政府管轄の秘密組織に属し、世界を股にかけ暗躍してきた元スパイのフランシスコ(パコ)・パエサ。だが、政府の裏切りによって財産を差し押さえられ、妻とも破綻。国外生活を余儀なくされていた。やっとスペインに戻ったパエサの元に、治安警備総局局長で次期内務大臣と目されるロルダンが現れる。実はロルダンは内務省の公金を横領し、裁判所に召喚される寸前だった。ロルダンはパエサに横領した15億ペセタの金を守ることと、国外逃亡の手助けを依頼。しかし、これは後にスペイン史上最大の詐欺事件へと発展するのだった。


平凡な男の視点が非凡な男の姿を浮かび上がらせる
主要人物は3人。主人公のパエサは、紳士然として仕事もきっちりこなす。ある時点まであまり冷酷さを感じさせないが、やはり油断のならない人間だ。事件を越こしたのは、だまし絵のような風貌のルイス・ロルダン。作品の中では妻を愛し、大それたことをするとは思えない繊細さを見せる。狂言回し役割を担うのは、パエサの協力者パイロットのヘスス。指示に従うだけで航空機の操縦ができる以外大きな特徴はなく、プライベートはだらしがない。だが、この平凡な男の傍観者視点がパエサの存在感を浮かび上がらせ、さらには観客と作品との距離を近づける役割も果たしている。

過剰な演出を排除したサスペンスドラマ
凄腕の元スパイが主役とはいえ、007のようなアクションシーンはほとんど見られない。スパイというのは本来目立ってはいけない職業なのだ。これに加え、ラテン系のステレオタイプからはほど遠い、感情をあまり表に出さない男たちの描写もリアリティを増す(ただ、パエサ本人が原作者に語った話自体の真偽のほどは定かではないという)。日本では知る人の少ない「ロルダン事件」だが、抑制の効いた演出とサスペンスに満ちた展開に興味を掻き立てられる人も多いのではないだろうか。
▼『スモーク・アンド・ミラーズ 1000の顔を持つスパイ』作品・公開情報
2016年/スペイン/123分
監督:アルベルト・ロドリゲス
脚本:ラファエル・コボス、アルベルト・ロドリゲス
出演:エドゥアルド・フェルナンデス、ホセ・コロナド、カルロス・サントス、マルタ・エトゥラ
配給:「スモーク・アンド・ミラーズ 1000の顔を持つスパイ」上映委員会
©2016 ZETA AUDIOVISUAL, ATRESMEDIA CINE, ATÍPICA FILMS, S.L.,SACROMONTE FILMS, S.L., DTS DISTRIBUIDORA DE TELEVISIÓN DIGITAL, S.A.U.,y EL ESPÍA DE LAS MIL CARAS A.I.E.

ヒューマントラストシネマ渋谷にて2月25日(土)より、シネ・リーブル梅田にて2月26日(日)より公開。詳細スケジュールは下記公式HP参照。
●「未体験ゾーンの映画たち2017」公式HP

文:吉永くま

  • 2017年02月25日更新

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