『きみといた2日間』―どん底状態の女の子がネットで恋活!?
- 2015年12月16日更新
ネットでの恋活が市民権を得て久しいが、現在アメリカでは結婚したカップルの3分の1がネットで出会うといわれている。本作の主人公は「仕事なし」「オトコなし」「部屋もなくなりそう」という、どん底状態の女の子。そんな彼女に予想外のことが起こり、新しい恋の予感が……という寒い冬にぴったりのラブストーリー。
『卒業』のマイク・ニコルズ監督の息子マックス・ニコルズ監督の長編初監督作。『セッション』で注目されたマイルズ・テラー、人気上昇中のアナリー・ティプトン、TVドラマ『ゴシップガール』のヴァネッサ役ジェシカ・ゾーら、勢いのある若手俳優達が出演している。
ブリザードが2人の運命を変える!?
舞台はニューヨーク。婚約していた彼にふられ、無職で部屋代が払えず、ルームメイトから追い出されそうなメーガンは、この状況を打破しようと「ロマンス.com」というウェブサイトに登録する。そこで出会ったアレックの部屋で一夜を過ごすが、翌朝2人はケンカをして彼女は部屋を飛び出す。だが、街にはブリザードが襲来中。アレックのアパートの扉が大雪で開かず、彼女は仕方なくもう1日彼の部屋に泊まることになる。
閉ざされた空間で展開される2人芝居
ベッドは共にしたものの、出会ったばかりでお互い相手のことを何も知らない2人。作品のはじめと終わりには彼らを取り巻く人々が出てくるが、中盤は室内で2人だけの芝居が展開される。食糧も尽きかけ外に出られない状況では、だらだらしながら自分自身の話ぐらいしかすることはない(途中でとんでもないハプニングは起こるが)。
なかでも、お互いのベッドでの流儀について批評し合う場面は印象的だ。本気の恋の相手には絶対聞けないようなことを聞いて、今後の参考にしようということなのだが、「これを踏み台にして、ワンランク上の……」という魂胆がもちろんある。こんな会話が生々しくいやらしくならないのは、テラーとティプトンの清潔感漂う雰囲気と、2人の絶妙な距離感の取り方によるものだろう。
それにしても、雪に閉ざされた部屋という閉鎖的なシチュエーション、あけすけな本音の会話は、2人の距離を縮め、恋の始まりを予感させるのに、とても自然なエレメントになっている。
人肌恋しい季節に観たい等身大の若者のラブストーリー
決して「世界観や登場人物に憧れる」タイプの作品ではない。メーガンとアレックスはとびきりファッショナブルでも高いレベルの生活をしているわけでもなく、うじうじ悩みがちなどこにでもいるような若者。だからこそ余計に、観客は彼らの会話や行動に好感を抱き、見守ってあげたくなるはずだ。
また、ラブストーリーとはいっても、描かれるのは重苦しい「運命の恋」ではなく、年末のニューヨークでひょんなことから生まれ、今後どうなるかもわからない恋。「次の恋が見つかれば心の痛手から立ち直れる」という普遍的な法則に則ったストーリーは、この冬落ち込んでいる誰かの心を軽くしてくれるかもしれない。
▼『きみといた2日間』作品・公開情報
(2014年/アメリカ/カラー/英語/86分/R-15+)
原題:Two Night Stand
監督:マックス・ニコルズ
脚本:マーク・ハマー
出演:マイルズ・テラー『セッション』、アナリー・ティプトン『ウォーム・ボディーズ』、ジェシカ・ゾー「ゴシップガール」、スコット・メスカディ(キッド・カディ)『ニード・フォー・スピード』
配給・宣伝:ファインフィルムズ
コピーライト:© 2013 APARTMENT TWO, INC. ALL RIGHTS RESERVED
※12月23日(水・祝)より、新宿武蔵野館他にて全国公開
文:吉永くま
- 2015年12月16日更新
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