『ザ・レイド』 ― ギャレス・エヴァンス監督,イコ・ウワイスさん,ヤヤン・ルヒアンさん インタビュー

  • 2012年10月23日更新


世界最強の格闘術 “シラット”がスクリーンで炸裂! インドネシア発・超ド級アクション映画が日本上陸

インドネシア・ジャカルタのスラム街。麻薬王が支配する30階建ての高層ビルに強制捜査(RAID/レイド)に入った20人のSWATと、彼らを迎え撃つ無数のギャングとの超絶な闘いを描いたノンストップ・アクション映画『ザ・レイド』が2012年10月27日(土)より日本公開される。全米で大ヒットを記録し、続編の制作やハリウッドリメイクも決定した本作。プロモーションのために来日した、ギャレス・エヴァンス監督と主演のイコ・ウワイスさん、冷血にして凶悪なマッド・ドッグを演じたヤヤン・ルヒアンさんの3人に、本作の魅力をうかがってきました!(写真は右から、イコ・ウワイスさんとヤヤン・ルヒアンさん)

「密室アクション劇でもあり、サバイバルホラーでもある。いろいろなジャンルの作品として成立するのも、本作の魅力」(ギャレス監督)

― イコさんとヤヤンさんは、初来日だそうですね。

イコ・ウワイスさん(以下、イコ) 日本に来ることができて、とても嬉しいよ。

ヤヤン・ルヒアンさん(以下、ヤヤン) 僕もとても嬉しい。『ザ・レイド』が日本で公開されることに、興奮しているよ。

― ギャレス監督は奥様が日本とインドネシアのハーフの方だとか。日本にはこれまでにも何度かいらしているのでしょうか。

ギャレス・エヴァンス監督(以下、ギャレス) 日本にはこれまでに6~7回来ているよ。特に東京は大好きなんだ。(急に日本語で)ニホンゴ、チョットダケワカリマス(笑)!

― 本作は、敵陣であるビルの中で物語が展開していく密室アクション劇であると同時に、先の見えない空間でどこに隠れているか分からない敵と次々に遭遇していく部分には、ホラーやサスペンスとしての要素も多分に感じます。この設定はどのように思いついたのでしょうか。

ギャレス 密室劇にした一番の理由は、ハッキリ言って予算(笑)。撮影が天候に左右されることがないし、ビルの部屋や構造はどのフロアも似ているのでセットにもお金をかけずにすむからね。その設定だけを最初に決めて、ストーリーやアクションの展開を膨らますために、密室アクションの要素がある映画を観まくったんだ。悪役を登場させるタイミングや、それぞれのアクションシーンにどれくらいの尺を持たせるかなど、ほかの作品を観て研究して、同時にホラーやサスペンスもたくさん観たよ。本作はアクションがもちろんメインだけど、その要素を削ぎ落とした時に、最終的にこの映画はどういった作品なのかというと「サバイバルホラー」だと思っている。同時にいろいろなジャンルの作品として成立するのも、本作の魅力だと思っているよ。

「ほかの俳優が演じるアクションも必ず自分たちで演じてみて、細部まで練り込んでいった」(イコさん)

― ワンフロアずつ攻略しながら、最後の大ボスに近付いていく展開はテレビゲーム的だとも思ったのですが。

ギャレス 僕自身はゲームが大好きだけど、けっして意識していたわけでないんだ。それよりも、最初から最後まで観客の緊張感を持続させることに重点を置いて考えた結果、こういう展開になったという感じかな。下層階ではまだ敵も弱いからこそ武器を使った闘いやガンアクションが中心だけど、階を上がる度に敵自身が強くなっていって、武器ではなく素手での闘いになっていくんだ。フロアごとに新しい敵が登場して闘いのハードルを上げていくことで、最後までドキドキしてもらえる作品になったと思う。

― たしかに! すべてのアクションシーンにドキドキしました。イコさん、ヤヤンさんは演じていて難しかったり危険だったりしたシーンはありますか?

イコ すべてのシーンで危険なアクションには挑戦しているけど、アクションの振り付けはすべて自分とヤヤンとで考えて、ケガをしないようにしっかりと計算したよ。ほかの俳優が演じるアクションも必ず自分たちで演じてみて、細部まで練り込んでいったんだ。難しかったのは、複数の人間で闘うシーンだね。寸分の狂いもないように合わせていかなければならなかったから、何度もリハーサルして撮影に挑んだんだ。

ヤヤン どのアクションもわざと複雑で難しくするように考えていったから、ほかのファイターたちにとっては大変だったと思うけど、僕とイコで一人ひとりの動きを見て、それぞれが得意とする武術の動きに合わせてさまざまな振り付けをしていったんだ。皆とても優秀な俳優たちで、共演者には本当に恵まれたと思っているよ。

― ジャカ役のジョー・タスリムさんは柔道家でもありますが、ご自分たちが専門とする武術以外の振り付けを取り入れるのは、大変なことではないのでしょうか。

イコ ジョーの振り付けに関しては、実は撮影前にヤヤンと決めてしまっていたんだ。でも、実際にジョーに動いてもらって、彼の良さを生かしきれていないことに気が付いた。それで、彼から柔道の型を習って、どこに生かしていくかを3人でとことん話し合ったんだ。それは凄く興味深くて、楽しい作業だったよ。

「ギャレスに誘われた時はまったく信じていなかった」(イコさん)

「役を付けられた時は“それは間違った選択だと思うよ”って言ったんだ」(ヤヤンさん)

― お二人はギャレス監督がシラットを題材にしたドキュメンタリー作品の撮影でインドネシアに訪れた際に、監督からスカウトされたそうですね。そこから初のタッグとなった映画『ザ・タイガーキッド~旅立ちの鉄拳~』(2009)の出演につながったそうですが、それまでに演技のご経験はあるのでしょうか。

イコ シラットはずっとやっていたけど、当時は普通の企業でドライバーとして働いていたんだ。演技の経験なんてまったく無かったけど、ギャレス監督に強いられて(笑)、『ザ・タイガーキッド』で初めてカメラの前で演技をしたんだ。

ヤヤン 僕も同作品で初めて演技に挑戦したよ。それまではシラットやマーシャルアーツのインストラクターなどをしていたんだ。

― いきなり俳優としての道が開けるというのは、どういうお気持ちだったのでしょうか。

イコ 正直なところ、ギャレスに誘われた時はまったく信じていなかった。ドライバーとしての契約期間も残っていたし、適当に「はい、はい」と答えただけだったけど(笑)、「契約が終わった時点で撮影に参加してくれ」と言われて。そのうちシラットの振り付けの練習が始まって。実際にカメラが回って「アクション!」と言われた瞬間に、「あ、ホントだったんだ!?」って(笑)。

ヤヤン 僕は振り付けとして参加しただけだと思っていたから、イコ以上にびっくりしたよ。監督に役を付けられた時は「それは間違った選択だと思うよ」って言ったんだ(笑)。

― イコさんはキアヌ・リーヴス監督作品にもご出演予定だそうですね。ハリウッド進出まで決まって、にわかに夢のような話じゃないかと思われたりしませんでしたか。

イコ こんな体験を自分ができるなんて想像もしていなかったよ。でも、僕のアクションに多くの方が興味を持ってくれたことは、とても大きな自信になったんだ。ましてやハリウッドのクルーと仕事をするというのは、演技をする者にとって夢のようなことだと思うので、この宝物のような経験を大切にしたいし、すべての人や出来事に感謝をしているよ。

「同じ映画でも音楽を付け替えることで2つの解釈が得られたと思う」(ギャレス監督)

― 監督にお聞きします。本作の音楽をリンキン・パークのマイク・シノダさんとダフト・パンクと共に『トロン:レガシー』(2010)の音楽に関わったジョセフ・トラパニーズが担当されていますが、こちらは欧米公開時にオリジナルのサントラと付け替えたそうですね。お二人を起用された理由と、オリジナルとは音楽を変えた意図を教えてください。

ギャレス 欧米公開に向けて音楽を変えるため、彼らに依頼したのは、北米での配給をするソニー・ピクチャーズ・クラシックスのアイデアだったんだ。西洋諸国にマーケティングする時に、インドネシア映画でかつ外国語の作品で、キャストも監督も無名なこの映画に対して沢山の人に関心を持ってもらうためのフックと考えたんだと思う。ソニー側はマイク・シノダがリンキン・パーク以外に個人名義で手掛けていた音楽にも注目していたので、まず彼が候補に挙がったんだ。

― 結果的に2パターンのサントラができ上がったと。監督ご自身は、どちらが気に入っているとかはあるのでしょうか。また、オリジナルの音楽との違いを教えてください。

ギャレス 監督としてマジメに答えるけど、良い子ぶるわけじゃなく、どちらも凄く気に入っているよ。それぞれのユニークさや良さがあって、例えばオリジナルの音楽ではじわじわと心理的に追いつめられる感じがするけど、欧米向けのトラックではアップテンポでスピード感が強調されたりだとか、自分自身、同じ映画でも音楽を付け替えることで2つの解釈が得られたと思う。それは凄く興味深かったね。どちらのヴァージョンも本当に満足しているよ。できれば、両方を観て欲しいのでDVDなどになると良いなとは思っているんだけど……。

「続編は、とにかくクレイジーなものになるよ!」(ギャレス監督)

「この映画を観る前には必ずトイレに行って(笑)!」(イコさん)

「『ザ・レイド』のすべてを楽しんでほしい」(ヤヤンさん)

― 本作の続編である『Berandal(原題)』の制作も決まっていますね。差し障りのない範囲で構いませんので、見どころを教えていただけますか。

ギャレス 舞台を密室からストリートに移して、とにかくクレイジーなものになるよ! 物語のスケールも大きく複雑になるし、さらに強大な敵と闘うんだ。登場人物の数も増えて、1作目でちょっと名前が出てきた人物が今度は実際に登場したりとかね。特に、アクションはより複雑で刺激的なものになるから、楽しみにしていてほしいな。詳細はまだ言えないけど、もしかすると日本人のキャストも登場するかも……!

― うわぁ、楽しみです! つまり、1作目より予算も大きくなったんですね(笑)。

ギャレス ははは! 少しだけね。今度はお弁当が食べられるよ(笑)!

― 最後に、これから本作を楽しむ、日本の観客へメッセージをお願いします。

イコ 僕がまず言っておきたいのは、観る前に必ずトイレに行ってほしいってこと(笑)! 一瞬たりとも見逃さないで、本作を堪能してほしいですね。

ヤヤン とにかく『ザ・レイド』のすべてを楽しんでほしいんだ! 日本の皆さんにこの作品が受け入れられることを祈っています。

ギャレス トイレは僕も言おうとしていたのに、先に言われちゃったよ(笑)。僕は子どものころから本当に日本映画が大好きで、三池崇史監督や北野武監督の映画なんかをずっと観ていたし、今の映画作りのスタイルは日本映画からとても影響を受けているんだ。本作はそんな大好きな日本への恩返しというかギフトだと思っています。楽しんでくださいね!

▼『ザ・レイド』作品・上映情報
(2011年/インドネシア/102分/R15+)
原題: SERBUAN MAUT(英題:THE RAID:Redemption)
監督・脚本:ギャレス・エヴァンス
出演:イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアン、ジョー・タスリムほか
音楽:マイク・シノダ(リンキン・パーク)、ジョセフ・トラバニーズ
配給:角川映画
コピーライト:© MMXI P.T. Merantau Films
『ザ・レイド』公式ホームページ
※10月27日(土)より渋谷シネマライズ、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー

取材・編集・文:min スチール撮影(インタビュー):hal

  • 2012年10月23日更新

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