『エクスペリメント』

  • 2010年12月03日更新

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わずか6日で中止となった“心理実験”。いったい何が起こったのか。

ある「人間行動実験」のため、求人広告が出された。

14日間の参加で日給1000ドルの高額報酬。それは安全な環境で行われ危険はない。実験内容は単純で、模擬刑務所で“看守役”と“囚人役”に分けられ、それぞれの役割で24時間演じるだけ─。

こう見ると簡単そうである。しかも報酬は破格。話がおいしすぎると警戒するかもしれないが、飛びつく人も多いのではないだろうか。トラヴィス(エイドリアン・ブロディ)もそのうちの一人。応募多数の中、厳重な審査の上、24人の男たちが選ばれた。

実験上のルールも単純。囚人は番号で呼ばれること。食事は残さず食べること。ルール違反の囚人が出たら30分以内に懲罰を与えること。そして、暴力行為が行われたら中止。やめる者が出たら終了。報酬はもらえない。

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地位も肩書きも関係なく、スタート時点はみな同じ。目的は14日間を乗り切って報酬をもらうことだけ。トラヴィスをはじめ、囚人役のメンバーは軽く考えていたが、「看守」という肩書きを持った男たちの意識は次第に変わっていく。支配する者とされる者の間に生まれる歪み。そして小さな諍いを発端に、それぞれの本性がむき出しになっていく。

集団心理とは恐ろしい。一人がエスカレートするとそれが基準となっていくのだ。それが正義ではないと分かっていても、動き出した流れは止めることができない。割り振られただけの役柄だけによって、欲にまみれた人間の醜さがいとも簡単に露わになる。そして、それが全員に派生していき、極限状態で爆発する─。

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人間は1つの条件だけでこんなに簡単に変わるのか。看守役のバリス(フォレスト・ウィテカー)の顔つきの変化を見て恐ろしくなる。日常生活では温厚な彼は、看守の権力を利用することで変貌していく。理性の奥に隠されていた面なのかもしれない。

本作は、1971年にアメリカのスタンフォード大学で実際に行われた実験をベースにしている。この実験で証明しようとしたことは、普通の人が肩書きや地位を与えられたとき、本来の人格に関わりなくその役割に合わせて変わっていくということ。2001年のドイツ映画『es[エス]』を観た方は、そのときの衝撃も呼び起こされるであろう。

『プリズン・ブレイク』を手掛けたポール・シェアリング監督のもと、オスカー俳優のエイドリアン・ブロディとフォレスト・ウィテカーが鬼気迫る熱演で応える。彼らのリアルな演技が拍車をかけ、よりショッキングな映像になっていることは否定できない。しかし、実験が6日で中止になったのはなぜか。極限下での人間の心理行動をぜひ直視していただきたい。

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▼『エクスペリメント』
作品・公開情報

アメリカ/2010年/97分
原題:”THE EXPERIMENT”
脚本・監督:ポール・シェアリング
出演:エイドリアン・ブロディ
フォレスト・ウィテカー 他
提供:日活/ハピネット
配給:日活
コピーライト:(c) 2010 Experiment Film Holdings LLC. All Rights Reserved.
『エクスペリメント』公式サイト
※2010年12月4日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー。
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《見比べてみよう!》
es[エス] [DVD] エクスペリメント [DVD]

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文:那須ちづこ
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  • 2010年12月03日更新

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