【インタビュー】キュートでアンニュイな吸血鬼役で魅了するカナダの新星―『ヒューマニスト・ヴァンパイア・シーキング・コンセンティング・スーサイダル・パーソン』 主演サラ・モンプチさん

  • 2024年07月10日更新
映画『ヒューマニスト・ヴァンパイア・シーキング・コンセンティング・スーサイダル・パーソン』ポスター画像

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人を殺せない吸血⿁のサシャと、生きることを諦めようとする人間の青年ポール。生きづらさを抱えた二人の出会いと心の共鳴を、思春期の繊細な感情描写とユーモアいっぱいに描く異色のダーク・ファンタジー『ヒューマニスト・ヴァンパイア・シーキング・コンセンティング・スーサイダル・パーソン』 が、2024年7月12日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開される。

主人公サシャを演じたのは、日本でも昨年夏に公開された『ファルコン・レイク』(2022/シャルロット・ル・ボン監督)で一躍脚光を浴びたカナダの新星、サラ・モンプチ。感受性豊かなヴァンパイアをアンニュイな魅力たっぷりに演じた彼女に、作品への想いを聞いた。

(インタビュー:富田旻)

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テーマ、テンポ、ダークなユーモア、独創性……脚本を読んですぐ、「映画の宝石がここに眠っている」とわかった映画『ヒューマニスト・ヴァンパイア・シーキング・コンセンティング・スーサイダル・パーソン』

― 本作のどんなところに魅力を感じましたか。

サラ・モンプチさん(以下、サラ):初めて脚本を読んで、すぐに魅了されました。一目で「映画の宝石がここに眠っている」とわかりました。ジャンル映画は、ケベックではあまり作られていない分野なので、脚本自体がすでに、私にはとても新鮮なものに思えました。そのテーマ、テンポ、ダークなユーモア、そして何よりも、独創性に新しさを感じました。

また、ヴァンパイアという 「地球外生命体 」ともいえる架空の存在を演じるというのは、俳優にとって刺激的な機会でもありましたね。人間ではないので、演じるのがとても面白いキャラクターだと思います。

― サシャは吸血鬼でありながら、生きるために不可欠な血の確保も親に頼り続けています。生きづらさを抱え、自立できずに葛藤している姿は、日本でも多くの若者の共感を呼びそうです。サラさんご自身は、サシャに共感したり、逆に理解できないと感じた部分はありますか?

サラ:サシャは、自分の居場所がないと感じている存在だと思います。彼女は、周囲の世界を航海しながら、自分の根底にある価値観を守りたいと願う人です。この、自分に正直でありたいと思う気持ちは、とても理解できました。

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心が通じ合う魔法のようなものが撮影現場の空気に漂っていた

ブレンダ・リーの『Emotions』のレコードをかける長回しのシーンでは、表情や身ぶり(ダンス)だけで感情の変化をみずみずしく繊細に表現していらして、釘付けになりました。撮影現場でのエピソードや、どのようにシーンを作りあげたのかを教えてください。

サラ:このシーンは、音楽のリズムに私たちの表情や動きを合わせるために何度もリハーサルを重ねました。そして撮影したとき、魔法のようなものがその場の空気に漂っていたんです。映画の撮影現場ではめったに起こらないような、心が通じ合う瞬間が。カメラの前でも後ろでも、「感情」が現在進行形で生まれて続けていると感じました。

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二人の間に流れていた不思議なエネルギーを監督が評価してくれた

― ポール役のフェリックス・アントワーヌ・ベナールさんの印象を教えてください。撮影中はどんなコミュニケーションを取られていましたか?

サラ:フェリックス・アントワーヌに初めて会ったのは、この映画の2回目のオーディションです。オーディション自体には、失敗してしまったと思っていました。部屋を出たとき、実際ふたりとも落ちたと確信していました。私たちの間にはとても不思議なエネルギーが流れていて、私たちはお互いに動揺していました。でも、それこそ、アリアーヌ監督が私たちを気に入った点だったのです。監督は私たちが演じたキャラクターの間に流れる、不思議なエネルギーを高く評価してくれました。もちろん、リハーサルや撮影が進むにつれて、私たちはキャラクター間の不思議なエネルギーを維持しながらも、カメラの外では良い友人になりました。
映画『ヒューマニスト・ヴァンパイア・シーキング・コンセンティング・スーサイダル・パーソン』

日本に行ったら映画館で小津安二郎の作品を観てみたい!

日本に来たことはありますか? 

サラ:日本に行ったことはないですが、ぜひ行ってみたいんです。とても興味深い文化を持つ国だと思います。

日本で行ってみたい場所や、経験してみたいことがあれば教えてください。

サラ:映画館で、有名な小津安二郎の作品を観てみたいですね!

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サラ・モンプチ(SARA MONTPETIT)
2001年生まれ、カナダ・ケベック州出身。作家ルイ・エモンの「白き処女地」を映画化した『Maria Chapdelaine(原題)」(2021/セバスティアン・ピロット監督)で、ヒロインのマリア・シャプドレーヌ役でデビューし、第24回アイリス賞 Revelation of the Year(新人賞)を受賞。日本でも公開された『ファルコン・レイク』(2022/シャルロット・ル・ボン監督)のほか『Chien Blanc(原題)』(2022/アナイス・バルボ=ラヴァレット監督)などに出演。

予告編・作品概要

殺人を拒む吸血鬼×死を望む青年
息苦しい世界に生きる2人が共鳴する
異色のダーク・ファンタジー

【STORY】サシャは、ピアノを弾くことが好きなヴァンパイア。彼女は吸血⿁一族のなかでただ一人、ある致命的な問題を抱えていた。——感受性が豊か過ぎて、人を殺すことができないのだ。自ら人を手にかけることはせず、生きるために必要な血の確保を親に頼り続けようとするサシャ。両親は彼女の様子を見て、いとこの“血気盛ん”なドゥニーズと共同生活を送らせることを決める。血液の供給が断たれたサシャは、自分で獲物を狩るようドゥニーズに促されるが、どうしても殺すことができない。心が限界を迎えたとき、自殺願望を持つ孤独な青年ポールと出会う。どこにも居場所がないと感じている彼は、サシャへ自分の命を捧げようと申し出るが——。

▼『ヒューマニスト・ヴァンパイア・シーキング・コンセンティング・スーサイダル・パーソン』
映画『ヒューマニスト・ヴァンパイア・シーキング・コンセンティング・スーサイダル・パーソン』映画『ヒューマニスト・ヴァンパイア・シーキング・コンセンティング・スーサイダル・パーソン』(2023年/カナダ/91 分)
原題:VAMPIRE HUMANISTE CHERCHE SUICIDAIRE CONSENTANT
監督:アリアーヌ・ルイ・セーズ
脚本:アリアーヌ・ルイ・セーズ、クリスティーヌ・ドヨン
出演:サラ・モンプチ、フェリックス・アントワーヌ・ベナール、スティーブ・ラプランテ
日本語字幕:大塚美左恵
配給:ライツキューブ
© Belles canines inc. – 2023 Tous droits réservés.
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※2024年7月12日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開

  • 2024年07月10日更新

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