『こっぱみじん』—「なんとなくな」人生に舞い戻ってきた初恋の人。彼が心をよせるのは思いもよらない彼だった!?

  • 2014年08月11日更新

20歳の美容師、楓(我妻三輪子)は毎日なんとなく、生活をしている。なんとなくな恋、なんとなくな職場。「どうせこんなもん」に慣れ切った生活を変えたのは、6年ぶりに帰ってきた初恋の相手、幼馴染の拓也(中村無何有)だった。惰性で付き合ってきた彼にはなかったときめきを感じ、ワクワク感を取り戻していく楓。拓也の親友だった楓の兄・隆太(小林竜樹)と兄の婚約者・有希(今村美乃)を交えて家族ぐるみでの穏やかで楽しい付き合いがはじまる。片思いの相手がそばにいる幸せにほんのりと包まれているそんな時、楓が耳にしたのは拓也の隆太への思いだった。地元に密着した人間関係の中でそれぞれの片思いはどこに向かうのか。「片思いしてよかった」と思える相手がいることこそが生きる原動力になることを優しく教えてくれる一本。



「なんとなくな」人生に舞い戻ってきた初恋の人。彼が心をよせるのは思いもよらない彼だった!?

20歳の美容師、楓(我妻三輪子)は毎日なんとなく、生活をしている。煮え切らない同僚とのなんとなくな恋、シャンプーテストに受からなくても悔しさをやり過ごせてしまう、なんとなくな職場。「どうせこんなもん」に慣れ切った生活を変えたのは、6年ぶりに帰ってきた幼馴染の拓也(中村無何有)だった。自分を恋愛対象とみていないけれどクールで優しいお兄さんのままの拓也。惰性で付き合ってきた彼にはなかったときめきをあからさまに感じ、初恋の相手に生きているワクワク感を取り戻していく。拓也の親友だった楓の兄・隆太(小林竜樹)も拓也と再会し、婚約者・有希(今村美乃)とも家族ぐるみでの穏やかで楽しい付き合いがはじまっていく。妊娠をした有希が浮気相手と電話をしているのを聞いてしまった拓也は激しく有希を責めるが、その時に楓が聞いたのは拓也の隆太への思いだった。

地元密着、狭い町のバランスの取れた人間関係に波をたてる片思いたち

ロケの現場となる桐生市はのどかな地方都市。全編を通して楓は自転車を乗り回しているが、楓の生活のすべてはこの自転車での移動距離圏内にある。狭い町の狭い人間関係。今、話題のマイルドヤンキーたちのような地元に密着した人間関係がそこにある。本来であれば濃密な人間関係はこの地域の中でうまくまとまり、カップルとして落ち着くものだが、この物語の登場人物はすべて片思いだ。ここでいう片思いというのは純粋な片思いだけでなく、たとえ、カップルになったとしても、付き合っている人以外にどうしても断ち切れない思いが抑えきれなくなってしまっているという片思いもある。地元密着型の「ここで手を打とう」というカップルがいる中で「抑えきれない思い」というのは最も厄介だ。調和を乱すその思いが不倫に発展してしまったら?男性から男性への同性への恋愛感情だったら?狭い地方都市からは無言のまま排除されてしまうような人々の気持ちが繊細にリアルに描かれる。

自分本位のストーカーとは一線を画す、ストレートな相手本位の恋愛のすがすがしさ

すべての登場人物は片思い。二股恋愛の中で、同性愛と様々な状況の中で片思いが進むが、その中心にあるのは「大好きなあのひと」への思いだ。あの人が笑っていればそれでいいというごくシンプルな思いに観客は自分自身が経験した片思いを重ね合わせる。自分が都合よく妄想するだけのストーカーとは一線を画す、相手の幸せを強く願う気持ちだけでできている片思い。「片思いしてよかった」と思える相手がいることこそが生きる原動力になることを優しく教えてくれる一本。

▼「こっぱみじん」作品・公開情報
(2013年/日本/DCP/カラー/88分)
監督・プロデューサー:田尻裕司
脚本:西田直子
出演:我妻三輪子 中村無何有 小林竜樹 今村美乃
はやしだみき 高瀬アラタ 大槻修治 佐々木ユメカ 対馬大翔 久保真一郎 吉田芽吹
森山静香 山本愛莉 中野麻衣 阿部帆朗音 田中紫苑 東郷蒼汰 山本珠里
企画:須藤正子 キャスティング:石垣光代
撮影:飯岡聖英 美術:羽賀香織 録音:堀修生 編集:田巻源太
制作担当:坂本礼 助監督:山城達郎 衣装・メイク:鎌田英子 予告編音楽:SoRA
ロケ協力:群馬県桐生市 わたらせフィルムコミッション
製作:冒険王 配給・宣伝:トラヴィス
●「こっぱみじん」公式サイト

©冒険王

文:白玉

  • 2014年08月11日更新

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