グランプリは多摩美術大学清水俊平監督に―第26回東京学生映画祭授賞式

  • 2014年06月03日更新

中村義洋監督、青山真治監督など多くの映画人を輩出してきた、学生映画の登竜門、第26回東京学生映画祭が5月23~25日 に開催された。今回はゲスト審査員に橋口亮輔監督、横浜 聡子監督、小林 啓一監督を迎え、170作品以上の作品のなかから厳正なる審査、観客投票を経て、各賞が決定しました。受賞者の喜びの声をレポートします。


<東京学生映画祭授賞式レポート>

各賞は以下の通り。

👑 グランプリ「ふざけるんじゃねえよ」
多摩美術大学 清水俊平監督

👑 準グランプリ「終わりのない歌」
多摩美術大学 甫木元空監督

👑 観客賞「あがきのうた」
映画製作パーティBMT 中村有里監督

👑 役者賞「ヴェロニカの憂鬱」
矢島愛さん

グランプリ:「ふざけるんじゃねえよ」
多摩美術大学 清水俊平監督

「在日が嫌い」と話す男、金(キム)は利き腕の力を失くした在日朝鮮人三世で韓国籍の元プロボクサーであり、彼は今日も生活保護費で女を買った。金に買われた女、櫻は夫からの激しいDVを受ける日本人女性であり、聞けば主婦売春を繰り返しているという。櫻の母性ともいえる優しさに惹かれる金と、金と逢瀬を重ねることで人を愛する感覚を取り戻していく櫻。朝鮮と日本、破滅的な男女が書き殴る、反抗のメロドラマ。

監督インタビュー(清水俊平監督)
(賞を)取りたい気持ちが強かったので、本当にホッとしています。大学の授業課題でしたが、指導教授の青山真治監督から「清水のは性の映画だけど、互いの立場が決定的に異なると分かった男女の、有機的な合体までを描ければいいね」と言って頂き、本当に感謝しています。

僕自身は在日ではないのですが、主演の金(正允さん)とは10年ぐらいの付き合いになります。既存の在日映画がどうしても過去へのノスタルジーや、パターンとしての在日像として描かれることが多く、これは現代のリアルではないと感じていました。(在日)コミュニティなんてどうだっていいッ!在日なんて嫌いッ!という新たなキャラクターを作りたかった。実際、在日のコミュニティを軽々と飛び出す人もいますし、それを受け入れる日本人もいます。両者は決定的に違ってしまうけれども、「共生」つまりはハイブリッドな世界を作っていく。表現においてもそうです。

次回作は20~30分の短い作品になると思います。企画はいくつか書いていますが、
特にジャンルは決まっていません。北九州に行ってみたいので、小倉を舞台にした物語なんていいかもしれませんね。ノーライト、30分1カットで。


準グランプリ:「終わりのない歌」
多摩美術大学 甫木元空監督

家 族 の 死 を き っ か け に フ ワ フ ワ と 浮 か び 上 が る 家 族 の 現 在 と 過 去 。浮 か び あ が っ た 今 を 生 き る の か
地 に 足 つ い た 過 去 を 生 き る の か
終 わ り の な い 歌 を 歌 い な が ら ど こ へ い く の か ?



監督インタビュー(甫木元空監督)

今の自分の状況を単純なドキュメンタリーで終わらせられないなというのがあって、セットの部分を作らせていただきました。あのセットは大きな意味で父と子の関係が続いていくようなイメージで、家族の象徴として記号化していきました。とにかく自分でしか作れない作品を作らないと意味がないなというのがありましたね。この作品の強度は僕が演出したところではなく、家族あっての映画です。そこにその人がいてくれれば、何を撮っても伝わるものがある。ずっと劇映画を撮っていたので、こういう形態は初めてでした。今後、何年かして、これを見て学ぶものも多いと思います。現段階でできることを残せたのでよかったのではないでしょうか。次回作は劇映画製作に戻ります。今脚本を書いているところです。


観客賞:「あがきのうた」
映画製作パーティBMT 中村有里監督

舞台は学生劇団。師岡と上級生の忍はあるコンクールへの出場を目指していた。少し冷たい仲間の声をはねのけ、ついに忍の戯曲が選考を通過する。それでも、一本の芝居を作っていく。私にとって二人の話、誰かにとって一人の話。

監督インタビュー(中村有里監督)
一番欲しいと思っていた賞なのでうれしいです。私の脚本で撮る全ての人物の魅力が出たらいいなと思い、役者の表情には気を付けました。例えばアキ役の子には「周りにティンカーベルの粉を飛ばすように」といって演じてもらいました。(大学を)卒業しようかなという時期に、就職活動で演劇や映画関係の会社を受けていると、周りからは「それ本気なの」と言われることがありました。自分は4年間演劇サークルにいて、楽しかったし、頑張ったと思えることもありましたが、(「本気なの?」と言った人にしてみれば)私の4年間はなかったと一緒なんだと思い、それがこの作品を作るきっかけになりました。次回作の予定はありませんが、無名の初監督の私でも良い役者さんが来てくれたので、あの演技は多くの人に見てもらいたいです。「あがきのうた」を含め色々な方法で(役者さんを)見せていければと思っています。

(取材・撮影:白玉)

  • 2014年06月03日更新

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