『バチカンで逢いましょう』-ドイツ人のおばあちゃんが活躍する『ローマの休日』
- 2014年04月26日更新
80年代末、ミニシアター系で大ヒットした『バクダッド・カフェ』(’87)。心温まるストーリーと、主人公のふくよかな中年女性ジャスミンを覚えている人も多いだろう。そのジャスミンを演じたマリアンネ・ゼーゲブレヒトが、とてもチャーミングなおばあちゃんになって戻ってきた! 今度の舞台はローマ&バチカン。敬虔なクリスチャンだがちょっとはじけたドイツ人のオマ(おばあちゃん)の奮闘ぶりに注目。
オマ、憧れのバチカンへ
夫を亡くしたドイツ人女性マルガレーテは、娘たちとの同居も老人ホームへ行くのも拒否し、ローマ法王に会うために、一人ローマを訪れ孫娘のアパートに転がり込む。どうしても法王に懺悔しなくてはならないことがあったのだ。彼女はそこで、イタリア人老詐欺師ロレンツォに出会う。また、持ち前のバイタリティで、廃業寸前のローマのドイツ料理店のシェフとなり、店を復活させる。やがて、その評判は法王庁にまで届き、法王のために祖国のデザート、カイザーシュマーレンを作ることに……。
「~したい」気持ちを刺激する
それにしても「ローマに行きたい!」「美味しいシュニッツェルやカイザーシュマーレンを食べたい!」「イタリアで素敵な男性に出会いたい!」と、次から次へと欲求が刺激される作品だ。それほど、ローマに着いてからのオマは生き生きとしている。
ローマ法王にも謁見でき(とはいっても、ここではトラブルが)、法王庁でお菓子を作り、潰れそうだった街のレストランを繁盛させ、なぜかウエディングドレスまで着ることになり-旅に出る前は、「誰からも必要とされない無力な老人」と自信をなくしかけていたオマ。だが、ここでは多くの人が彼女を必要としてくれる。そして、それは生きる糧になっていく。
3世代の女性の絆は固い!?
物語の中盤に祖母、母、娘の3世代がローマに集結するが、血のつながった女性同士の複雑な関係は万国共通のよう。愛し合っていても、相手を思うあまり口うるさくなったり、けんかになってしまったり。実はオマには大きな秘密がある。本来ならウエットになりがちなエピソードであっても、3人の絆が葛藤を前向きな力に変えていく。その様子はなんとも清々しく微笑ましい。
周りの人をハッピーにするオマ・マジック
主演のマリアンネは来日時に「ローマの街でベスパを乗り回すシーンは、『ローマの休日』(’53)へのオマージュ」と語っていたが、『バグダッド・カフェ』を彷彿とさせる場面もあり、それを探すのも楽しいかもしれない。なんといっても、異国の地で周囲の人々を笑顔にしてしまうところは、オマもジャスミンも同じ。しかも、ここではジャンカルロ・ジャンニーニ演じるイタリアの伊達男まで魅了してしまう。さらに、長年憧れ続けたあの人までも。
ここでまた沸々と熱い思いがこみ上げる。
「オマのように素敵なおばあちゃんになりたい!」
▼『バチカンで逢いましょう』作品・公開情報
2012年/ドイツ映画/カラー/105分/日本語字幕:松浦美奈
監督:トミー・ヴィガント
脚本:ジェーン・エインスコー、ガブリエラ・スペーリ
出演:マリアンネ・ゼーゲブレヒト、アネット・フィラー、ミリアム・シュタイン、
ジャンカルロ・ジャンニーニ、ラズ・デガン、ジョヴァンニ・エスポジト
後援:ドイツ文化センター、イタリア政府観光局
提供:パイオニア映画シネマデスク+エデン
配給:エデン
© 2012 Sperl Productions GmbH, Arden Film GmbH, SevenPictures Film GmbH, Co-Produktionsgesellschaft “Oma in Roma” GmbH & Co. KG, licensed by Global Screen GmbH.
4/26(土)より新宿武蔵野館にてGWロードショー! 以下全国順次公開
- 2014年04月26日更新
トラックバックURL:https://mini-theater.com/2014/04/26/28718/trackback/