「愛情を見て欲しい」と紹介しています。-「ゆるせない、逢いたい」柳楽優弥さん、吉倉あおいさんインタビュー

  • 2013年12月11日更新

上映中の「ゆるせない、逢いたい」は知り合い同士の間で起きるレイプ‐デートレイプをテーマにした作品。デートレイプという激しいテーマを取扱いながら、初恋ゆえの不器用な二人のやり取りと、事件後の二人を取り巻く人々の姿を繊細に温かく描いている。今回は隆太郎役の柳楽優弥さんと、はつ実役の吉倉あおいさんにデートレイプというテーマの重さとこの物語を取り巻く人々についてお話を伺ってきました。



事件のシーンは、はつ実(吉倉さん)には隆太郎が来るということを告げらない状況で「(吉倉さんが)来たら、行って事件を起こして」って。(柳楽)
―釜山国際映画祭での反応についてお聞かせください
柳楽優弥(以下柳楽)評判はとても良かったと聞きました。上映終了後のQ&Aでも積極的に質問が出ていて、評判の良さを感じることができました。監督もとても喜んでいたようです。

― 作品のテーマがデートレイプということですが、このテーマをどのようにとらえられましたか
柳楽:難しいですね。よく聞かれるのですが、はっきりした言葉が出てこないというか、わからないことが多かったです。主人公は表現の仕方が不器用です。隆太郎はもちろん悪いことをしていますが、役を演じる立場としては味方でいたいなとも思います。

―デートレイプというテーマがありながら、その一方でデリケートな恋愛感情を築こうとする青年隆太郎の姿が印象的です。隆太郎という人物をどのようにとらえられましたか?
柳楽:現場に入る前に考えるというより、現場で考えるほうが大事だと思いました。事件のシーンは、はつ実(吉倉さん)には隆太郎が来るということを告げらない状況で撮影をしたりしていました。「(吉倉さんが)来たら、行って事件を起こして」って監督からは指示がありました。論理的にプロセスを考えて演じるというより、その場で生まれるものを大事にしている感じがしましたね。

 

(事件後に)対面するというのは私の中ではありえないことでしたが、撮影を進めていくうちに色々な感情から湧き出て(吉倉)
―はつ実の人間関係の中で母親との関係性というのが濃密に描かれます。)さんとの関係性について話われたしたことはありますか?
吉倉あおい(以下吉倉):柳楽さんと同じですが、関係性やキャラクターのイメージといった役作りという面では監督も役者同士も話し合うということはなくて、朝加さんともお芝居について語るということもなかったです。監督とは意見を言い合うという形でしたね。女性としての思いはきちんと伝えたかったので、その思いを監督に伝えるというのはありました。

― 具体的に女性としての思いとはどのような思いでしょうか?
吉倉:脚本を読んだときに最初に浮かんだのは「(事件後に)会うの?」という疑問でした。壁があるわけでも、距離があるわけでもない状態でしっかりと対面して会うのだということを聞いて、私だったら「(会うこと)はない」と思いました。それでも、実際そういう解決方法があると聞いて(デートレイプの被害という)事実に向き合った時に自分がどういう行動をするのかを考えていました。対面というのは私の中ではありえないことでしたが、役を生きていく中で隆太郎(柳楽さん)や、お母さん、友人のまりちゃん(新木優子さん)に対して感じたものがつながって対面のシーンの感情が生まれていきました。柳楽さんもおっしゃっていたのですが、(監督が役者に)任せてくれたというのはあると思います。


僕からみると、対面のシーンでは(はつ実)そのものに見えました。(柳楽)
―複雑な感情から生まれる対話の雰囲気は実際にあったようなドキュメンタリーのようでした。
吉倉:事件を起こしたその日から対面の日までは(柳楽さんとは)一度も顔を合わせていませんでした。正直、対面のシーンは腰が抜けるくらい歩いていくのが大変でした。
柳楽:僕からみると、対面のシーンでは(はつ実)そのものに見えました。自分が隆太郎としていられると思えてそれが救いでした。

―対話という耳慣れない言葉が出てきます。デートレイプの被害者と加害者が会話をするという場のことですが、演じられて対話の場というものは必要だと思われましたか
吉倉:今回この映画で描かれた対話とその結果というのは良い方向に向かったのかなと思いますが、実際に(デートレイプが)起きてしまったら、その状況は様々だと思うので、一概にお勧めするということではないかなとは思います。(対話という)解決方法がひかりというかのぞみになってほしいという思いはあります。


観てもらいたいのは愛情(吉倉)
―隆太郎とはつ実を取り巻く人々の支えを強く感じます。
柳楽:救いの話でもありますね。
吉倉:私は試写会で女性だけが集まった試写会や大学生対象の試写会で舞台挨拶をさせていただいて、色々な立場の方から意見を伺いました。性別や世代によって反応は違いますが、その中で、隆太郎に感情移入する方が多かったですね。この脚本を読むまでは(隆太郎の行動は)絶対許せないと思っていましたが、脚本を読んだり、演じる中で隆太郎のしたことは許せないと思いがある一方、もっと違う感情が生まれてきて、それが葛藤につながって、どうしようできなくなってしまいました。この映画を一言で説明してくださいと言われると、いつも詰まって迷ってしまうことが多いのですが、観てもらいたいのは愛情なので、「愛情を見て欲しい」と紹介しています。それぞれのキャラクターが誰かに愛情をもって、愛情を注いで、裏切られたり、でも受け止めたり、そういう思いがぶつかっていく。日常では特に感じづらいことでもあると思うので、この映画を通して、若い世代をはじめ、多くの方に観ていただければと思います。



ミニシア恒例の靴チェック
お二人とも黒のレザーシューズ。吉倉さんの美しすぎる御御足にはシンプルな黒いシューズがぴったり。

柳楽さん 吉倉さん

文・編集:白玉 撮影:仲野薫

  • 2013年12月11日更新

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