« 『ニューヨーク、恋人たちの2日間』― 監督・脚本・主演ジュリー・デルピーの手腕が光る、小粋でハートフルなラブコメディ!
『第6 回したまちコメディ映画祭 in 台東』― レトロとモダンが交差する東京下町で、世界各国のコメディ映画を上映 ! »
『ザ・タワー 超高層ビル大火災』―手に汗握りっぱなしのパニック・スペクタクルと群像劇―
- 2013年08月16日更新
クリスマスイブの夜、巨大タワーに突如大火災が発生。逃げまどう人々に、死の恐怖が次々と襲いかかる。 炎、熱、大爆発、倒壊する建物……。地獄と化したタワーの中で、励まし合いながら道を切り開こうとする者たち、彼らを救おうとする消防士、深刻な状況下でもエゴを通すタワー経営者……人々のさまざまな思惑が交錯する。地上449メートル、取り残された5,700人に迫る大火災の顛末は…? 韓国人気俳優を集め、驚異のビジュアル・エフェクトで最高の臨場感を演出。「タワーリング・インフェルノ」を越えた、韓国のパニック・アクション巨編、ついに日本公開!
8月17日、シネマート新宿ほか全国順次公開
(C)2012 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED
クリスマスイブの夜、虚栄の象徴タワースカイに大火災が発生!
「ソウルのマンハッタン」と呼ばれる汝矣島(ヨイド)。漢江(ハンガン)を眼下に臨み、そびえたつのは韓国最大規模を誇る地上108階建ての超高層複合ビル「タワースカイ」。1,700世帯の居住フロアや展望レストランの商業施設をかかえ、2棟のタワーを渡り廊下がつなぐ、豪華な巨大ランドマークだ。クリスマスイブに、タワースカイのスタッフたちは準備に追われていた。そんな中、フードモールでボヤ騒ぎが起こり、換気設備に問題があることが発覚。フードモールマネージャーのユニ(ソン・イェジン)は、一抹の不安を覚える。同日夜、タワースカイには、華やかな夜を過ごそうと大勢の客が集い始める。タワースカイの施設管理チーフであるデホ(キム・サンギョン)も、男手一つで育てている愛娘ハナをタワースカイに呼びよせ、ひそかに思いを寄せているユニに、仕事が終わるまでの間、ハナを託していた。一方、汝矣島消防署では、妻とクリスマスイブを祝おうと、珍しく休暇を希望した隊長カン・ヨンギ(ソル・ギョング)が、隊員たちから帰宅を促されていた。やがてタワースカイでは、ド派手な演出のクライマックスを迎える。10台ものヘリコプターで雪を降らせるのだ。悪天候にもかかわらず、会長(チャ・インピョ)は計画を強行。美しい粉雪が舞い、大歓声が上がる。ところがそのとき、突風にあおられたヘリコプタ―が落下。タワーのガラスを突き破り、あっという間に炎が燃え広がる。我先にと争って逃げようとする人々はパニックに陥った……!
止まらない災害の連鎖に戦慄。 心拍数は、ホラー超え!
冒頭から圧倒的なスケールで、タワーの全貌や街の全景を映すカメラワークをみせる。序章ではいったん丁寧に人物を映し出し、ゆったりした時間が流れる。しかし火災が始まると、また空気は一変、波のように押し寄せる恐怖の連続に、手の汗が乾く間もなくなっていく。地獄のような炎、倒壊する壁、落下する床……その手数と迫力たるや、私たちの予想をはるかに超え、次から次へと激しさを増しながら襲いかかってくるようだ。尽きることのない災害の連鎖、パニックに陥った大衆のエゴに飲み込まれ、いつの間にか観ている私たち自身が逃げまどう人物と一体化し、スピードアトラクションに乗っているかのように心拍数は上がり、指先がしびれてしまう。迫力の大火災シーンは、煙と炎と爆風に包まれ、後半には水責めまで登場する過酷な現場を耐え抜いた俳優とスタッフにより撮影され、さらに150人を超えるクリエーターが1年以上の制作期間を投じてつくりあげたビジュアル・エフェクトが加わっている。圧倒的映像を、ぜひ映画館で体感して欲しい。
キム・ジフン監督の狙いは、アクションより濃厚な人間ドラマ
圧倒的な迫力の本作を撮るにあたり、キム・ジフン監督は、苦労を重ね韓国トップクラスの人気俳優を集めた。それゆえに、ディザスタ―(災害やパニックを描いた)映画でありながら、アクションよりも俳優たちの表情・感情を伝えることにこだわり、あえて2Dで撮ることに決めたという。自然体でありつつも強いインパクト与えられる俳優キム・サンギョン、ナチュラルでピュアな雰囲気をもつスクリーンの華ソン・イェジンを中心に、それぞれの人柄がにじみ出た繊細な日常ドラマの序章部分から、じんわりと観客をからめとっていく。その後、一気に大火災シーンへとなだれ込むと、彼らのさまざまな表情の変化をとらえながら、緊張の糸をゆるめることなく最後まで疾走し続ける。また「カメレオン俳優」として名高いソル・ギョングも、はじめはノッソリ・モッサリといった出で立ちで登場。ところが消防隊隊長として大火災の中で奮闘していくうちに、どんどん精悍な風貌へと変化を見せる。俳優たちそれぞれの個性・魅力を膨らませ、余すことなく伝えてくれている作品だ。また、主演キャストだけではなく、まわりの登場人物の「それぞれの物語」にもスポットを当て、ときには韓国エンターテイメント特有のコメディ要素を盛り込み、それぞれの人物の見せ場を細かく組み込んでいる。個性豊かな登場人物それぞれの、生死をかけたドラマは涙なくしては観られない。人々の多様な生き様が印象深い「濃厚な群像劇」といった味わいに仕上がっている。
▼『ザ・タワー 超高層ビル大火災』作品・公開情報
原題:THE TOWER/2012年/韓国/121分
監督:キム・ジフン
出演:ソル・ギョング、ソン・イェジン、キム・サンギョン、
キム・イングォン、ト・ジハン、アン・ソンギ ほか
配給:ツイン
●『ザ・タワー 超高層ビル大火災』公式サイト
8月17日、シネマート新宿ほか全国順次公開
(C)2012 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED
文:市川はるひ
- 2013年08月16日更新
トラックバックURL:https://mini-theater.com/2013/08/16/27893/trackback/