『禁断メルヘン 眠れる森の美女』-2つの童話を大胆に脚色。官能美に彩られた大人のためのお伽噺。
- 2012年02月12日更新
ヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の映画祭:【未体験ゾーンの映画たち2012】(1月14日~6月15日)上映作品。同映画祭では「海外での評価が高く、話題作であるのに日本ではなかなか劇場公開されにくい、日本人にとっての【未体験ゾーンの映画】」を上映。本作では、衝撃的かつエロティシズム溢れる作品で有名なカトリーヌ・ブレイヤ監督が、童話『眠りの森の美女』と『雪の女王』を下敷きに、大人のためのメルヘンの世界を官能的に描いている。
昔、ある王国に待望の可愛らしい王女アナスタシアが誕生した。だが、悪い魔女が「姫は16歳で死ぬ」という呪いをかけてしまう。これに驚いた3人の美しい妖精は、「100年眠り16歳で目覚める」という修正の魔法をかける。6歳になったアナスタシアは、呪いの通り遊戯中にイチイの“つむ”で指を突いてしまい、100年の眠りにつく。夢の中でさまざまな冒険を重ねるアナスタシア。100年後16歳の姿で目覚めた彼女の横には美しい青年がいた。青年と恋に落ちた彼女は、身も心も捧げるが……。
100年の時を経て少女から大人へ-。6歳のアナスタシア王女と時を経て目覚める16歳の王女。どちらも可憐で、かつなまめかしい。無邪気で幼いアナスタシアからも妖しい魅力を引き出せるのは、ブレイヤ監督の手腕といえよう。
少女時代のアナスタシアは、夢の中で冒険を繰り広げる。偶然世話になった家での初恋の人ピーターとの出会い、雪の女王にさらわれた彼を探す旅、道中知り合う別の国の王像やジプシーたち、北の大地の住む賢者との触れ合い。様々な経験をする彼女は少しずつ成長していく。この幻想的な物語は、『眠りの森の美女』と『雪の女王』の土台をしっかり残しながらも、やがて童話では描かれなかった展開を見せ始める。
アナスタシアが目を覚ますと、傍らには美しい男性が立っている。当然のように恋に落ち、全てを捧げる彼女。だが、甘美な喜びの代償は決して小さいものではなかった。大人のための少しビターなストーリー。王女と一緒に夢を見ていた“大人たち”は、非現実の世界が泡と化すことを知っている。そして、現実世界でも試練を乗り越えた先には幸せがあることも。物語の結末は、観る者それぞれの心の中に委ねられている。
時空間を超えたメルヘンと現実の融合に、かすかな戸惑いを覚えるかもしれない。だが、味わったことのない不思議な余韻を残すこの作品は、まさに未体験ゾーンへ誘ってくれる “(映画祭の)狙い通り”の1本といえるだろう。
▼『禁断メルヘン 眠れる森の美女』作品・上映情報
2010年ヴェネチア国際映画祭CICAE賞受賞作品
2010年/フランス/カラー/82分
原題:(英)The Sleeping Beauty/(仏)La belle endormie
監督・脚本:カトリーヌ・ブレイヤ
原作:アンデルセン「雪の女王」、シャルル・ペロー「眠れる森の美女」
製作:ジャン=フランソワ・ルプティ
撮影:ドニ・ルノアール
出演:カルラ・ベスネイノ、ジュリア・アルタモノフ、ケリアン・マイヤン、デヴィット・ショース
配給:アット エンタテインメント
コピーライト:(c) 2010-FLACH FILM PRODUCTION – CB FILMS – Marathon – ARTE France
※2012年2月18日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷にてレイトショー公開
文:吉永くま
- 2012年02月12日更新
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