命の大切さを本気で考える― 『OROKA』プレ上映会リポート

  • 2010年08月30日更新

捨てられたペットたちの行く末を、本当に知っていますか?
死に至るまで15分も苦しみます。保健所での殺処分は、安楽死ではないのです。
ペット殺処分問題や児童虐待、保健所や児童福祉施設などで現実を知り、命の大切さを伝えたい一心で制作された『OROKA』。

oroka_satou0032010年8月11日(水)、川崎市産業振興会館(神奈川)にて、短編アニメーション『OROKA』のプレ上映会が開催された。YORIYASU監督、イラストレーターのA-1(エイイチ)さんが登壇し、作品への想いや制作秘話を熱く語って頂きました。
その時の様子をお届け致します!(写真左より、A-1さん、YORIYASU監督)

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― YORIYASU監督、作品にかける想いをお願いします。
oroka_satou001YORIYASU監督 “人も動物も同じ命”をテーマに、本気で命を考えるという事で『OROKA』を制作しました。命の大切さについて一緒に考えて頂く為に、15分という短編アニメーションの中に色々とメッセージを込めました。

【児童虐待・育児放棄について】
本社が内装工事の会社である為、木の廃材を使ったおもちゃを児童福祉施設へプレゼントしております。そこで子供たちと出会って3つの衝撃を受けました。
・『施設が古かったり、改修されていない』 本社のソーシャルビジネスでの売上金を活用し改修します。
・『大人を警戒している』 近寄って来ないんですね、遊んでいるうちに近づいてきてくれるのですが、ギュッと抱きついて、温もりを感じようとしているようでした。
・『顔にキズがある子たち』 TVのドキュメンタリーなどで顔にモザイクがかかっていますが、実際に施設に行って知りました。
沢山の衝撃を受け、傷や心の問題について僕たちに何ができるかというと、映像を作って色んな人に観てもらって感じて頂くという事が大切じゃないかなと思いました。

【ペットの殺処分について】
ペット業界の方に色々とお話を伺ったり、保健所、動物愛護センターなどに通い、ペットの殺処分についての現実を知りました。今までは「殺されるんだな、可哀相だな」と、そのくらいの事しかわかっていませんでした。認知度は高まっており、徐々に減ってはいますが、それでも今現在、犬と猫で年間約28万頭、数年前には年間40万頭以上が殺処分されていました。

今回“人も動物も同じ命”をテーマに、本気で命を考えるという事で『OROKA』という作品を制作しました。15分という時間の中に色々とコンセプトやメッセージを込めていますので、是非観て、考えて頂ければと思います。

■作品紹介記事はこちら■ 『OROKA』プレ上映会のお知らせ (8/9掲載)
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― 制作するにあたって、どのような事が大変でしたか?
oroka_minamino004A-1 作品のテーマは中途半端な事はしちゃいけないなという事と、限られた1ヶ月の期間の中で、120%の作品を作ろうという監督の言葉に救われました。

YORIYASU監督 僕たちは映画専門の会社ではなく、本業とは別で映画を制作させてもらっているので、1ヶ月という与えて頂いた時間内でやりました。作品に関してはメッセージが強くて重い作品ですが、作る時は明るく作らないといいモノができないというのがありました。

― 制作秘話などはありますか?
oroka_satou004A-1 主人公のタカシという少年を1ヶ月間かけて書くと、キャラクターではなくて、友達以上の存在になってくるんです。だから最後にタカシが苦しみながら亡くなってしまう、というシーンがありますが、監督に「タカシを出来れば安楽死みたいな形にできないか」と相談したんですけれども、「本当に苦しんでいるペットたちの事を伝える以上はタカシを苦しませてほしい」という監督の指示もありまして、最後のシーンは本気で書きました。
YORIYASU監督 『天おじちゃん』というキャラクターがいますが、モデルはホームレスの方です。ホームレスの方は、野良犬や野良猫を自ら飼ってまして、自分たちの生活も難しい中働いて、犬や猫の餌を与えていたりします。偏見で見るだけじゃなくて、社会から取り残された理由としては、人間的にすごく優しすぎて取り残されたって言うのもあるんじゃないかなといういう事も考えられます。僕たちも完璧な人間という訳ではないので、作品を作りつつ、色々と勉強しながらというところもありますので、今回は自分自身が勉強するという作品になったと思います。アニメーションの制作自体が1ヶ月、シナリオや企画、勉強を含めると、制作は1年くらいかかっています。愛護センターや児童福祉施設は前々から本業の関係で行ってたんですけれども、ペットの殺処分について保健所に行ったり、アニメーションで使う為に仏の世界を勉強しようと思って、お寺に行ったりもしていました。

oroka_satou006― A-1さんから見た監督とは?
A-1 プライベートでは親友のようですが、制作が始まるとガラッと監督になって厳しくなるので、僕も監督が言わんとしている事を出来るだけすぐに汲み取って制作するようにしています。
― 監督から見たA-1さんとは?
YORIYASU監督 アニメーションを作る事に関して、長い間一緒にやってきましたので、僕が意図する動き方をしてくれるので、アニメーション制作には欠かせない人です。 (写真:『OROKA』の制作に関わった方々)

― 最後にメッセージをお願いします。
oroka_satou002A-1 飼っていたペットを交通事故で亡くして以来、思い出したくないから犬のドキュメンタリーとかはずっと観なかったんです。制作するにあたり、監督から「絶対に知っておいて欲しい」という事ですごく勉強させて頂きました。本当に安楽死だと思っていましたが、そうじゃなかったんです。そういった現実を、この作品を一人でも多くの方に観てもらって、殺処分が1匹でも減ればいいなと思っています。

YORIYASU監督 現在、年間約28万頭が保健所で殺処分されており、安楽死という名の窒息死になっています。死に至るまで15分から20分くらいかかっています。アニメーションの中でも苦しさを現実的に出さなきゃいけないという事を指示して制作しました。
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― 主題歌『ママ、愛しています~犬の10戒~』
oroka_minamino005エンドロールで流れる主題歌が、言葉にならない余韻と心の震えを与えてくれ、『OROKA』には必然と言えるだろう。歌うのはシンガーソングライターの伊吹唯さん。歌詞は『犬の十戒』がモチーフとなっている。
“15000人のサポーターを集めて、武道館に行く”という挑戦をしている伊吹さん。
oroka_minamino001その熱い思いと、キーボードと、沢山のCDをキャリーに積み、都内を中心に毎日のように路上ライブを行っている。初めて歌声を聴いた時、鳥肌が立った。繊細かつ、優しく包むような美声に惹かれ、思わず足を止める人々。彼女の周りには、いつも人が集まる。是非、歌声を感じて欲しい。
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『OROKA』という作品に描かれている事だけが全てではなく、何事も知る事で始まるのではないだろうか。そして、最も訴えているのは“考えるキッカケ”である。
この記事をキッカケに、筆者は一人でも多くの方に『OROKA』の存在を知って頂きたい。

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OROKA_MAIN▼『OROKA』作品情報▼

【原作・監督】 YORIYASU
<YORIYASU監督公式ブログ>
【アニメーション制作】A-1(エイイチ)
<A-1さん公式ブログ>
【エグゼクティブプロデューサー】有吉徳洋
【制作】 ソーケングループ/プロシード株式会社

【主題歌】『ママ、愛しています~犬の10戒~』:伊吹唯
<伊吹唯さん公式ブログ> <公式サイト>
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前作『RE:Map(リマップ)』は数々の映画祭にて高評を得ており、今後の活動が注目されているYORIYASU監督。近日、単独インタビューも掲載予定です!

取材・編集・文・スチール撮影・南野こずえ スチール撮影・さとうまゆみ  取材・香ん乃

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