『小さな命が呼ぶとき』
- 2010年07月23日更新
守るべき者がいるということはこんなにも人を強くしてしまうのか。一人の人間に持てる以上の力を発揮させることができるのか。
オレゴン州ポートランドに住むエリートビジネスマン、ジョン・クラウリー。彼には、全身の筋力が低下する難病“ポンぺ病”に侵された8歳の娘と6歳の息子がいる。有効な治療薬はなく、平均寿命は9年。愛する子供たちを守りたい一心で彼が行った選択は、会社を辞め、ポンぺ病研究の第一人者ストーンヒル博士とともにバイオ・テクノロジーのベンチャー企業を設立することだった。投資家や大手製薬会社との関係を築くために奔走し、行く先々で壁にぶつかったり、時には博士と対立したりしながらも、彼は自分の力で治療薬を開発するという夢に突き進んでいく。
劇中で描かれるジョンは決してヒーローではない。新薬の臨床テストをめぐる彼の行動はエゴとさえ映る。だが、あまりにも一途過ぎて一歩間違えば反感を買うおそれもあるこの役柄を、ブレンダン・フレイザーが自身のソフトな雰囲気で上手にカバーしており、強さと弱さを兼ね備えた共感できる父親像を作り出している。
オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の開発過程の内部や付随する出来事をさまざまな側面から描き、リアリティを持たせたこの作品は、実話をベースにしたもの。ストーンヒル博士を演じたハリソン・フォードも奇跡のようなこの話に魅入られ、企画段階から参加して製作総指揮も務めた。
世に送り出される難病を題材にした映画は数多いが、これは少し毛色が違う。ありがちな涙や感動の押し付けはなく、“信念を持ち続けること、あきらめないこと”の大切さを説き、一歩踏み出す勇気を与えてくれる。静かな余韻の後に、じわりと心に染みわたるものがあるはずだ。
▼『小さな命が呼ぶとき』
作品・公開情報
アメリカ/2009年/105分
原題:”EXTRAORDINARY MEASURES”
製作総指揮:ハリソン・フォード
監督:トム・ヴォーン
出演:ハリソン・フォード
ブレンダン・フレイザー
ケリー・ラッセル 他
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
●『小さな命が呼ぶとき』公式サイト(注:音が出ます)
※2010年7月24日(土)より、TOHOシネマズシャンテ(東京)他、全国ロードショー。
文:吉永くま
改行
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- 2010年07月23日更新
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