あの黒沢清監督が絶賛!―『にくめ、ハレルヤ!』トークイベント!
- 2010年07月09日更新
2010年7月3日(土)、渋谷UPLINK Xにて『にくめ、ハレルヤ!』の板倉善之監督と、ゲストの黒沢清監督のトークイベントが開催されました!
今作は、大阪市の映像文化事業・第2回CO2(シネアスト・オーガニゼーション・エキシビジョン大阪)の企画制作部門において制作され、審査員の1人であった黒沢清監督より、高い評価を得ました。対談を様子をお伝えします!
(写真、左より板倉監督、黒沢監督)
■『にくめ、ハレルヤ!』作品紹介記事はこちら■(7/4掲載)
板倉監督(以下板倉):『にくめ、ハレルヤ!』の感想をお願いします。
黒沢監督(以下黒沢):途中、何回かビックリするようなカットがありますよね、それはカメラマンの力量もあるのでしょうが、撮影場所を含めて物凄く計算されていて、今本当に少なくなりつつある、ヨーロッパの気高い感じがしました。これを自主制作で作ったのには驚きがありました。撮影場所が大阪、神戸と分かるのですが、印象としては無国籍。
(登場人物が)関西弁を喋っていて、どう考えても関西で撮影されているんだろうとわかるのですが、主人公のたたずまいがそう思わせるのか、何処でもない場所、時代や場所を超越した抽象的な世界にまで踏み込んでいる。
こんな事ができるのは、ヨーロッパの巨匠達だよなぁっていう感じがするくらい凄い映画 だなと正直思いました。
板倉:無国籍な感じと言われて嬉しいです。地震を扱うという事で大阪、神戸で撮影したのですが、それが何処か別の場所に見えると仰って頂いて、それはすごく意識した点でした。他にも意識した事として、移動のシーンがないんですよ。
黒沢: ストーリー上の、場所から場所への移動のシーンが無い、という事ですね。
板倉: この映画は脚本が練れていないよね、という指摘を受けたりもしました。
黒沢:映画を観て、脚本がダメだ、という人がたまにいるんですが、何がつまらなかったという事をどう表現しようかなと思って、つい脚本が良くないという言い方をしちゃうと思うんですけど、脚本がいいか悪いかってそれは何の事なの? と思う。出来た映画が面白いかつまらないかはあるんですけど、脚本が良くて映画がつまらない、とか、脚本が良くて映画が面白い、って事はあり得るの? って思いますね。
板倉:人物の背景が薄いと指摘された事もあります。この作品は、行動ばかりを連ねているのですが、映画として言葉で示すよりも、具体的な映像で示せという気がしたんですよね。
黒沢:時々ありますね、延々と過去が説明されている映画。その後の展開に何か決定的な影響を及ぼすという事ならやってもいいんですけど……僕は、どうしても過去に起こった事を説明しなければいけない時は、色んなケースがあるのですが、セリフでやった方がいいですね。俳優の演技も含め、セリフとして語りの聴かせどころとして。
黒沢:阪神淡路大震災から15年になりますね、この作品は震災から10年経た時に制作されたという事ですが、どういう狙いで制作しましたか?
板倉:震災当時、僕は大阪に住んでいました。僕と神戸の距離と、東京から神戸の距離は感覚としてはそんなに違わないと思いました。でも、神戸で震災を経験した人が語るモノと、大阪でTVを見て僕が経験したモノの違いはなんだろうなと。それを題材にしようと思いました。震災を再現してドラマを作っていくという事もあり得たかと思うんですけど、今のこの街(神戸)を撮ろう、と。カメラワークでも意識したんですけど、ない物を探して行くような……。
黒沢:主人公は音を拾っていく、音をサンプルする人という設定の狙いは?
板倉:音で人と出会いたいというシーンを作りたかった。主人公とサキが出会うのも『サキ』という名前だけが音として映像の中に登場するんですね、そういう事をやりたかった。震災の時に僕の印象的な事として、「人」の存在を表していたのが『音』だったんですね。震災で一番初めに動き出したメディアがラジオで「○○さんが△△さん生きてます」という人の名前だけが情報として流れていた、その体験が1つのキッカケです。
黒沢:標準語というスタンダードを使わず、言葉で大阪ローカルだとわかってしまうという……無国籍を狙いつつ、あの凄いカメラと演出の中で関西弁が出てくるというのはあまり観た事がない、独特ですね。それはとても面白かったです。
板倉:あぁ、そうですね……。そこまで関西弁を意識していたって事ではなかったですね。
黒沢:どんな映画がお好きなんですか?
板倉:好みで観るのは、犯罪が絡むようなフィルムノアールと呼ばれている映画が好きですね。映画を撮り始めた頃はアクション映画に憧れていて、でもハードルが高くてなかなか……。いつか撮りたいなと思っています。
黒沢:この作品でも派手ではないんですけど、突発的な暴力シーンを相当意識しているなと思いました。
無国籍を感じさせる映像の中に、忘却された記憶の彷徨いや、言葉では表現出来ないモノが次々と映し出されている。
何かに取り憑かれたように、何かを必死に探し続ける。
それはまるで、強い衝撃が与えた潜在意識への覚醒のようだ。
今後の板倉監督に、さらなる期待をしたい。
▼『にくめ、ハレルヤ!』作品・公開情報▼
2006 / 76分 / DVCAM / 16:9 / ステレオ
監督・脚本・編集:板倉善之
製作 : 思考ノ喇叭社
配給・宣伝 : カプリコンフィルム
宣伝協力 : ブラウニー
キャスト : 苧坂淳、藤本七海、長綾美、デカルコ・マリィ、渡辺大介、平松実季、西村仁志、谷口勝彦、森川法夫、木村文洋、絵沢萠子(特別出演)
『にくめ、ハレルヤ!』公式サイト、『にくめ、ハレルヤ!』公式ブログ
2010年6月26日(土)より、渋谷UPLINK Xにて公開。
『にくめ、ハレルヤ!』トーク&ライブ決定!(詳細は公式ブログにて)
・7月16日(金) 21:00〜卜部敦史監督×板倉善之監督
・7月17日(土) 21:00〜 DOWSER ライブ
・7月18日(日) 21:00〜 伊月肇監督×浜田弘典監督×板倉善之監督
・7月21日(水) 21:00〜 矢崎仁司監督×板倉善之監督
・7月23日(金) 21:00〜 松井良彦監督×板倉善之監督
・7月24日(土) 21:00〜 木村文洋監督×小谷忠典監督×板倉善之監督
取材・編集・文・スチール撮影 南野こずえ
改行
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