「ウチを『彼』と間違えていませんか?」―『BOX 袴田事件 命とは』初日舞台挨拶で、新井浩文さんがタイムリーなジョークを!
- 2010年06月02日更新
高橋伴明監督の『BOX 袴田事件 命とは』が、2010年5月29日(土)に公開初日を迎え、高橋監督、出演者の萩原聖人さん、新井浩文さん、石橋凌さんが、ユーロスペース(東京)での舞台挨拶に駆けつけました!
←の写真、左から、高橋監督、萩原さん、新井さん、石橋さんです。
登壇者のみなさまがそれぞれにジョークを飛ばすので、満員の会場はたびたび爆笑に包まれましたが、もちろん、問題提起性の高い本作に対する高橋監督とキャストのかたがたの真摯で誠実な思いも、じっくりと伺えました。
当サイト恒例《セレブの靴チェック!》をお楽しみいただいてから、登壇者のみなさまのお話に耳を傾けてください。
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萩原聖人さん | 新井浩文さん | 石橋凌さん |
高橋伴明監督 |
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萩原さんの足元は、トウがシャープな、ブラックの革靴です。
新井さんの足元は、マットなレザーがカジュアルな、モス・グレーの一足です。
石橋さんの足元は、明るい茶色の革靴ですが、グラデーションになっていて、質感もひと味違いそう!? ぜひ、画像をクリックして拡大でご覧ください。
高橋監督の足元は、ブラックのシックなスニーカー。ダンディな装いが、更に映えますね。
さて、『BOX 袴田事件 命とは』は、1966年に静岡県で実際に起こった「袴田事件」を映画化した作品。強盗・放火・殺人の容疑で死刑判決を受けた袴田巌死刑囚と、その支援者は、冤罪を訴えて、現在も再審を請求しています。
本作で、萩原さんは主人公の熊本典道元主任判事を、新井さんは袴田死刑囚を、石橋さんは袴田死刑囚を虚偽の自白へ追いつめる立松刑事を演じています。撮影現場での高橋監督や共演者のかたがたの印象は、いかがだったのでしょうか?
「熊本さんと、この事件を追体験することに集中しました」(萩原さん)
萩原聖人さん 楽しい週末に、「重い・暗い・地味」と三拍子揃った本作を観に来てくださって(会場笑)、ありがとうございます。でも、(ご来場くださった)みなさまが、本作のテーマに、とても関心を持ってくださっている、ということだと思いますので、本当に嬉しく思います。
今回の役は、(実際の元判事の)熊本さんと、この事件を追体験することに集中しました。
撮影現場での高橋監督は、いつもお元気で、「やりたい」と思っていらっしゃることが、はっきりとわかりやすいので、(演じる側として)気持ちがよいです。高橋監督を信じて演じました。
(石橋さんの演じた立松刑事は)憎たらしかったですよ(笑)。もちろん、石橋さんご自身は、本当に素晴らしいかたです。俳優という仕事は常にそうなんですけど、「(敵対する役柄に対して)いかに憎たらしく思うか」ということが大切で。カメラがまわれば、石橋さんは当然ながら、顔も声も、すべてが変わりますので、その演技に、僕も委ねることができました。
「石橋さんに対して、絶対的な信頼感を持って、安心して演じることができました」(新井さん)
新井浩文さん (満員の場内を見渡して)渋谷という場所だけあって、若いお客さまが多いですけど、大丈夫ですか? 市原くんとウチを間違えてご覧になっていませんか?(会場爆笑 注:市原隼人さん主演『ボックス!』も同時期に公開中)
高橋監督の演出は、とてもやりやすかったです、……と、ウチから言うことじゃないですけど(笑)。すみません、上目線で(笑)。
(袴田死刑囚を追いつめる立松刑事役を演じた)石橋さんは、撮影現場で空気を作ってくださって、(演技に対して)遠慮がないので、ウチとしては絶対的な信頼感を持って、安心して演じることができました。
「被害者を追いつめたのも人間だったということを、なんとかして、この作品で伝えたい、と思いました」(石橋さん)
石橋凌さん (本編上映後の舞台挨拶なので)本作をご覧になった観客のみなさまの中には、私に対して、なにか硬い物をぶつけたい、とお思いのかたが、たくさんいらっしゃると思います(会場笑)。
この映画が作られた主旨のように、現在の日本に導入された裁判員制度にとって、本作がなんらかの指針になれば、と願っています。
私が演じた立松刑事という役に関しては、「人間の輪郭を、はっきりと出したい」と高橋監督にお願いして、監督と相談しながら演じました。
本作のように事実を扱った作品や、たとえば戦争がテーマの映画は、時代や体制の風潮がどのようだったか、というところに行きつくと思うのです。(第二次世界大戦を扱った)戦争映画にしましても、開戦派と戦争反対派が当時もいた、と伝えられています。でも、そこを強引に(開戦へと)押しきったのは人間ですし、本作『BOX 袴田事件 命とは』のように、被害者を追いつめたのも人間だったということを、なんとかして、この作品で伝えたい、と思いました。
萩原さんは、撮影現場では、検察官という役の男のままでいらっしゃいました。新井くんのことは、私は客観的に、「日本で一番、手錠が似合う男」だと思っています(会場笑)。
萩原さんも新井くんも、運命的な縁(えにし)で結びついた男ふたりの立場を、そのまま撮影現場で出してくださったので、私も演じる側として、とてもやりやすかったです。
『BOX 袴田事件 命とは』は、2010年のモントリオール世界映画祭への出品が決定しています。高橋監督は、本作への思いを、このように語りました。
「スタッフとキャスト全員が、『作るべき映画だ』と思って作りました」(高橋監督)
高橋伴明監督 「冤罪」は、人が犯す罪の中でも、大変、重い罪です。
日本に裁判員制度が導入されてから、約1年が経ちました。この裁判員制度そのものがどうなのか、ということを、今、本作を通して、みなさまに考えていただきたく思って、この映画を作りました。
また、自分自身も大半に関わった「昭和」という時代を、本作を通じて、もう一度、見つめ直してみたい、という思いもありました。
私を含めて、スタッフとキャスト全員が、「作るべき映画だ」と思って、本作を作りました。
「観るべき映画」だったかどうかは、ご覧くださったお客さまに判断していただいて、もし、「観るべきだ」と思ってくださったかたがいらっしゃったら、ひとりでも多くのかたに、本作をご覧になってくださるよう、お声をかけていただけたら、ありがたいと思っています。
▼『BOX 袴田事件 命とは』
作品・公開情報
日本/2010年/117分/35mm/DTSステレオ
監督:高橋伴明
出演:萩原聖人 新井浩文 石橋 凌
葉月里緒奈 村野武範 保阪尚希
ダンカン 須賀貴匡 中村優子
雛形あきこ 大杉 漣 國村 隼 志村東吾
吉村実子 岸部一徳 塩見三省 他
制作プロダクション:ブリックス
製作:BOX製作プロジェクト
配給:スローラーナー
企画:忠叡
脚本:夏井辰徳 高橋伴明
撮影:林淳一郎(J.S.C)
音楽:林祐介
クレジット:(C)BOX製作プロジェクト2010
●『BOX 袴田事件 命とは』公式サイト
※2010年5月29日(土)より、渋谷・ユーロスペース(東京)、銀座シネパトス(東京)にてロードショー。シネ・リーブル梅田(大阪)、京都シネマ(京都)他、全国順次公開。
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●『BOX 袴田事件 命とは』 新井浩文さん インタビュー
取材・文:香ん乃 スチール撮影:さとうまゆみ
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