『カケラ』初日舞台挨拶で、安藤モモ子監督と満島ひかりさんが衝撃の撮影秘話を!
- 2010年04月08日更新
安藤モモ子監督の長編映画デビュー作『カケラ』が、2010年4月3日より、全国順次ロードショー。
公開初日、ユーロスペース2(東京)に、安藤監督とキャストのみなさまが駆けつけました!
↑の写真、左から、永岡佑さん、中村映里子さん、満島ひかりさん、かたせ梨乃さん、安藤監督です。
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満島ひかりさん | 中村映里子さん | かたせ梨乃さん | 安藤モモ子監督 |
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満島さんの足元は、ブラウン&モス・グリーンのコンビ革のショート・ブーツ。ユニセックスな装いが、この靴で更に映えますね~。
中村さんの足元は、グリーンのアンクル・ストラップ・サンダル。ゴールド・ラメのペディキュアも華やか!
艶やかな和服で登場したかたせさんの足元は、純白の足袋とマットな質感が上品な草履。気品が漂います。
安藤監督の足元は、ワイルドなブラックの革ブーツ。右足にだけベルトを巻いてアクセントをつけるこのテクニック、真似をさせていただきたくなりますね。
「ココロのスキマを埋めてくれる『ワタシのカケラ』」を求めて、満島さん演じる内向的なハルと、中村さん演じる快活なリコが、「友情以上?」の関係に右往左往する物語『カケラ』。「撮影現場は、本当につらかった」と、満島さんと中村さんは口を揃えます。ではでは、撮影秘話に耳を傾けてみましょう。
― キャスティングの経緯は?
「ハルとリコを、ひとりひとり別々にではなく、『ふたり一緒に見て噛みあわなければ』成り立たない作品です」(安藤監督)
安藤モモ子監督(以下、安藤) ハルとリコは、ひとりひとりを別々に見てもしかたなくて、ふたり一緒に見て噛みあわなければ成り立ちません。そのように噛みあう女優さんたちがなかなかいなくて、どうしよう、と思っていたところ、「女優さん本人のイメージと180度違うキャスティングをしたら成功するかもしれない」と考えました。そんなとき、ちょうど、満島さんと中村さんにお会いしたんです。
満島さんはこれまで、強い役柄をたくさん演じてこられたかたです。実際、本作の脚本を読んでくださったときも、自分はリコを演じるのだろう、と感じられたらしいのですが、「ぜひハルを演じてほしい」とお願いしました。
中村さんは、お会いした当時は、「ハルそのもの」と思えるほど、おっとりした女性でした。どうすれば中村さんがリコになるか、当時はわかりませんでしたが、だからこそ、リコを演じていただけたらおもしろいだろう、と考えたんです。
「永岡さんは、『雄』という匂いを出している俳優さんです」(安藤監督)
安藤 永岡さんが演じた了太は、とても嫌な男というキャラクターなので、「永岡さんご本人は、そんな人ではありませんよ」とフォローしようと思ったのに、永岡さんは「そのままの自分で演じてくれてよい、と安藤監督に言われました」と、(みなさまに)おっしゃっていて(笑)。
現代はおとなしい男性が多いですが、永岡さんは、「(いまどきには珍しい)『雄』の匂いを出している、やんちゃな若い青年」で、なかなかいない雰囲気の男性だな、と思いました。そういう意味で、「永岡さんのそのまま(の雰囲気)で演じてほしい」と、彼には話したんです。
「かたせさんには、本作に全魂を傾けていただきました」(安藤監督)
安藤 かたせさんのことは、私が幼い頃から存じあげていて(※安藤監督のご両親は、俳優の奥田瑛二さんとタレントの安藤和津さん)、これまでかたせさんが演じてこられた役柄と、普段ご一緒しているときのかたせさんという両面を見たときに、本作の陶子という不思議なキャラクターを彼女が演じたらどのようになるのだろう、とすごく興味が湧きました。「陶子は、とにかく、かたせさんで見たいんだ!」という気持ちになったんです。かたせさんには、本作に全魂を傾けていただいたので、とても感謝しています。
― 本作について、どう思いますか?
満島ひかり(以下、満島) 観るたびに形が変わる「球体」のような作品です。
私が演じたハルの感情も、表面だけではなく、裏から、横から、斜めから、内側から、とたくさんの心情が描かれています。映像の端々に、安藤監督独自の「カケラ」が埋められている感じがします。
本作そのものが思春期を迎えているのではないか、と思えるくらい、思春期の女の子特有の瑞々しさや、ぐらぐらとしたもどかしさ、格好悪さと格好よさの両方が、表れている映画です。
永岡佑 本作は映像ももちろんですが、音楽もとても格好よいので(※音楽を担当したのは、元スマッシング・パンプキンズのジェームス・イハさん)、目と耳と心で、安藤監督の世界観を楽しんでいただきたいです。
かたせ梨乃 安藤監督は、本作を撮るにあたって、「失うものはなにもない」という気持ちだったと思います。彼女が生きてきたすべてが、このスクリーンに叩きつけられました。そのエネルギーを、みなさまにもぜひ感じとっていただきたいです。
― 安藤監督の演出については?
「『満島さんの火を消したい』と、安藤監督から最初に言われました」(満島さん)
満島 撮影現場で、私はいつも、安藤監督に無視されていました(苦笑)。「ハルは、そこにいてくれればよいから」というくらいの演出でした。
「私は満島さんの火を消したいんです」と、安藤監督から最初に言われました。(その結果、撮影現場では、連日)私の強さや、はつらつとした部分、燃えあがっている部分を、安藤監督に踏み潰されながらも、私は這いあがろうとする、という感じでした。
私が安藤監督に質問をしても、「じゃ、やってみたら?」という答えしか返ってこないし、安藤監督が(「OK」という言葉ではなく)「まあ、いいや」と言ってシーンの撮影が終了することもあって、私自身は煮えきらなくてやりきれない感覚が常にあって、悶々として、いらいらしていました。
撮影にはいるときは、「自分の素敵な部分を、たくさん引きだしてもらいたい」と思って、意気揚々と現場に臨んだのに、「自分の素敵ではない部分ばかり」が引きだされているんです。完成した本作を見ても、ハルというキャラクターを好きになれたことが、実はまだないんです。
私は化粧も禁止されていて、また、腋毛、ひげの産毛、眉など、全身のあらゆる毛を生やしておくように、安藤監督に言われました。撮影現場に行くたびに、安藤監督から、「腋毛、どう? あ、伸びてきたね」と、毛のチェックがはいるんです(苦笑)。今、こうして話しているとおもしろいんですけど、撮影当時は、本当につらかったです。でも、その結果、本作を観てくださるみなさまがいらいらするような、「思春期のハル」が描かれた、と思っています。
「主演のふたりが精神的に傷つくポイントを見つけて、そこをつつきまくりました」(安藤監督)
中村映里子 私に対して安藤監督は、満島さんに接するのとまったく逆の対応をしました。
安藤監督と私のふたりで台本を片手に、夜の道路を、「うすっ!」と大声を出しながら走ったり、「リコになるための立ちかた」なども一から指導していただいたりしました。リコは人と心と心で向きあっている女の子なので、安藤監督も私に対して心でぶつかってきてくださったんです。
撮影中は、私がNGを出して撮り直しになることもあったので、肉体的・精神的に、とてもつらかったです。私が泣いて撮影をとめて、現場の部屋に閉じこもったこともありました。
満島 安藤監督に無視され続けて悶々としている私は、中村さんに対して、「あなたは何回も撮ってもらえるけどさ!」という思いがたまっているわけです(苦笑)。なので、中村さんが泣いて閉じこもっている部屋のドアを「ばんっ!」と蹴りながら、安藤監督に向かって、「もう、やっていられない! ふざけるな!! 私はずっと待ってるんだよ!!」と、感情を解放して怒鳴ったこともありました。
そうしたら、安藤監督は、「満島さん、やりたくないんでしょ。じゃあ、もう撮るのはやめよう。今日で終わり」だなんて言うんです。それに対して私は、「安藤監督は、その程度の気持ちで映画を撮ってるんですか!? じゃあ、やめたらいいじゃないですか!!」って言い返して、もう、大喧嘩(苦笑)。
でも、仲裁にはいってくれたプロデューサーに、「満島さん、(今、あなたが感じている)そのいらいらが、ハルちゃんなんですよ」と言われたんです。そこで、私もぴたりと収まって、「じゃ、頑張ります」と言いました(笑)。
安藤 時間と予算の関係で、毎日リハーサルをする、というわけにはいかなかったので、(満島さんと中村さんが)精神的に傷つくポイントを見つけて、そこをつつきまくったんです。私は、「愛があれば、なにをやってもよい」と思っています。(主演ふたりのことも、本作も)超愛しているので、そのようにしましたが、(満島さんと中村さんを見て)、本当、すみませんでした。
「今となっては、笑って話せるけれど」 ― 満島さんも中村さんも、そして、安藤監督も、精神力を試される撮影現場だったようです。安藤監督が、「心を鬼にして愛した結果」創りあげた、ハルとリコの物語、ぜひ、スクリーンでご堪能ください。
▼『カケラ』作品・公開情報
日本/2009年/107分
監督・脚本:安藤モモ子
出演:満島ひかり 中村映里子 津川雅彦 かたせ梨乃 他
原作:桜沢エリカ(『LOVE VIBES(ラブ・ヴァイブス)』)
製作:ゼロ・ピクチュアズ
配給:ピクチャーズデプト
配給協力:ピックス
(C)2009ゼロ・ピクチュアズ
●『カケラ』公式サイト(注:音が出ます)
※2010年4月3日より、ユーロスペース2(東京)他にて、全国順次ロードショー。
取材・文:香ん乃 スチール撮影:細見里香
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